〇語学はやり直せますか =フリ-ランス語学教師 良き師を見つけ 楽しく
中学生のころから「語学好き」だった。中学三年 生の時、テレビのロシア語講座に夢中になった。 「なるべく、帰国子女が少ない語学をやりたかっ た。冷戦下のソ連はめったに行けない国だった。 バイリンガルが少ない言葉をやれば『勝てる』と 思った」と振り返る。
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東京都出身。上智大外国語学部ロシアご学科卒 業後、東大大学院を修了。東工大に9年、明治大 に4年勤務し、ロシア語や英語を指導してきた。NHKテレビ「ロシア語 会話」の講師を2001年から2年間勤め、早稲田大学で、言語学を教 えたことも。現在、週五回放送されているNHKラジオ「まいにちロシア 語」の講師を務めている。20年近く、語学を教えてきたプロであるとい う自負がある。そのプロがいま、訴えるのが「楽しくなければ語学では ない」ということだ。「語学はやり直せます。だから語学はク-ル(=涼 しい、冷静、カッコいい) でなければなりません」今年2月、角川書店 から新書を出した。タイトルもずばり、「語学はやり直せる!」。同書店 の編集担当者によると「発売直後に重版が決まるなど゛、売れ行きは 好調。語学の基本書としては異例です」という。昨年3月、大学を辞め た。「辞めさせられたわけじゃないですよ」。苦笑いしながらも、現在の 大学での外国語教育に疑問を感じたことを打ち明ける。それは、大学 かあまりに現世利益を追求していることだ。TOEIC、TOEFLなどの英 語検定試験で何点取るか。学生に、高い得点を取らせる指導が可能か。 そこに語学教師としての価値が求められることが疑問だった。「語学とは 数値化できるものなのか。点数の先に何があるのか」学生が変わったの ではない。変゛わったのは大学だ。「国立大学法人も私立大も同じ。学生 を呼び込むために、『ウチに来ればこんなにお得』と現世利益を強調して いる」と指摘する。「語学は損得じゃない。背景にさまざまな文化があると いうことを知る。文化の多様性を知り、各自の人生を豊かにしていくことこ そが、言葉を学ぶ意味」という大前提は譲れないと考えた。
語学はやり直せる! (角川oneテーマ21 (B-106)) 価格:¥ 720(税込) 発売日:2008-02 |
数値化志向、現世利益追求は、中学からの英語学習の反動だと分 析する。学校で長い時間を英語教育にさく。その時間の見返りがほ しい。投資した時間に見合う、数学や利益を求めるわけだ。
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一方で、多くの「英語は苦手」という人々が毎年、生み出されている。 「学べ、学べ」と迫られた挙げ句、一生、英語に苦手意識を持ってしま う中学生、高校生たち。その苦手意識はやがて、増幅していく。「挫 折し、外国語を憎んでしまう人がいる。一方で、英語が通じない人間 を毛嫌いする人も出てくる。排他的でこわいことです。社会的なム-ド として、外国語をめぐってプチ・ナショナリズムが醸成されている」と現 場からの実感を語る。だからこそ、「語学はやり直せる」と訴え続ける。 やり直すためには何が必要か。「ク-ルに、楽しく、学ぶこと。そして、 ハ-ドルを高くしないこと。外国語が日本語と同じレベルに達すること は無理なのです。さらに、その外国語の何がわかっていないかを知る。 何がわからないかを導いてくれる教師を見つけること」と断言する。「教 材など、語学を学ぶ環境はどんどん、よくなっている。肩ひじ張らず、 気楽に語学を楽しめばよい」携帯電話は持たない。「これ以上、仕事 を増やしたくないのです」。ク-ルに語り、去っていった。
文・写真 編集委員 高畠伸一
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