北大研究チ-ム 細胞レベルで世界初 発症の仕組み一部解明
染色体異常で発症する先天性疾患「ダウン症」の多様な症状は、タンパク質分解を促す補助酵素の過剰な働きが一因であることを、北大の研究チ-ムが突き止めた。これまで不明だった、ダウン症の発症メカニズムを一部ながら、細胞レベルで解明する世界で初めての研究成果という。将来的に症状を緩和する医薬品の製造、治療法の開発につながると期待される。
研究したのは、北大遺伝子病制御研究所の野口昌幸教授(がん生物学)ら。発生学に関する米国の専門誌「デベロップメンタルセル」12月15日号に論文が掲載された。野口教授は、ダウン症の細胞2種類を遺伝子レベルで詳細に調べ、21番目の染色体にある遺伝子から作られる、補助酵素「TTC3」が通常の1・2~1・5倍と多く分泌されているのを確認。この酵素が、脳細胞や心臓を作る細胞に作用し、正常な発達を妨げる様子を観察した。こうしたことから、ダウン症の細胞の場合、「TTC3」が多く存在することが、発達障害などさまざまな症状につながっていると推定された、という。野口教授は「最多の遺伝子疾患であるダウン症の仕組みを解明する一歩」と話しており、今後、ネズミを使って、メカニズムを検証する。先天性疾患に詳しい、信州大医学部の福嶋義光教授(遺伝医学)は「細胞レベルでダウン症を説明する重要な結果。こうした基礎研究を積み重ねれば、治療法の開発が可能になる」と指摘している。
※ダウン症 ヒトの細胞内にある23組の染色体のうち、21番目が通常より、1本多い3本あることが原因で引き起こされる。低身長、知的発達障害や心臓奇形などさまざまな症状がある。800人に1人の確率で生まれ、高齢出産ほどそのリスクは高くなる。
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