低コストで通年処理、効果も半永久的 北濃研、北大など新システム開発6月に別海で実用化
北海道農業研究センタ-(札幌)や北大などで 構成された道内の産学官研究チ-ムが、人工 湿地で酪農排水をろ過し、河川に流しても問題 ない水準まで浄化する国内初のシステムを開発 した。高濃度の酪農排水を低コストで通年処理 でき、効果が半永久的なのが利点で、6月に根 室管内別海町の酪農家で実用化される。牛舎か ら出る洗浄水や廃棄乳などの酪農排水は、生物化学的酸素要求量 (BOD)が高濃度で、直接川に流すと環境汚染のもとになる。堆肥 化するふん尿とは別に処理されている場合が多いが、普及している 浄化機器は初期投資に数千万円が必要な上、運用経費も月十万円 以上かかり、酪農家を悩ませている。同センタ-や北大、酪農資材販 売の「たすく」(根室管内中標津町)、道立根釧農試(同)が、2005 年秋から別海町や留萌管内遠別町で研究に着手。道内に多い乳牛 百頭規模の場合、建設費約七百万円、維持費が電気代など月に二 万円以下で済む新システムを開発した。人工湿地は軽石を敷き詰め た深さ約1㍍、五百平方㍍前後で、段々畑のように四段造り、排水を 下段に流しながらろ過する。とらえた有機物や大腸菌、アンモニアな どは地中微生物の力で分解。処理前と比べBODが95%、リンと窒 素は各80%浄化でき、河川に放出できる水準にする。
湿地には酪農排水の中でも成長できるヨシを植え、 地下茎や芽の成長によって水の通り道をつくり、目 詰まりを防ぐ役割を担わせる。リンは三、四段目の 間に設置した炭酸カルシウムの吸着ますで回収し て肥料にする。軽石の上に敷いた特殊な断熱材と、 均等に排水を流してすぐに浸透させるための自動ポ ンプ装置を配置することで、冬場の凍結を克服したという。総工費約千五 百万円をかけ、約四千平方㍍の新システムを建設中の中山農場(別海 町、乳牛三百頭規模)は「電気代などが安く済み、自然の力で浄化でき る利点にひかれた」。開発を主導した同センタ-の加藤邦彦主任研究員 (43)は「道内の酪農家に普及し、環境向上に寄与できれば」と話してい る。
行政など普及推進を
中野和典・東北大大学院工学研究科准教授(環境生態工学)の話 低 コストで二酸化炭素を排出せず、高濃度の汚水を処理できる、非常に画 期的なシステムだ。技術的にも世界の最先端レベルにある。行政などか゛ 支援し普及をす進めるべきだ。