地球環境と密接なごみ。リサイクルの前に発生元減らして (北大公共政策大学院教授 吉田文和講演) ごみは燃やせばなくなるかというと、なくなりません。日本の一般家 庭からでるごみは、80%程度が償却処理されます。焼却すると、灰 になって容積は十分の一程度まで小さくなりますが、その灰の埋め 立て場が必要になります。ダイオキシン問題が発覚してからは、埋 め立てもできず、焼却炉はダイオキシンが出ないように、多額のお金、 税金をかけて対策を進めてきました。札幌の白石区にある清掃工場 が良い例です。札幌市が建て替えを検討中に、ダイオキシン問題の 緊急対策として示された基準を満たすため、ダイオキシンを取り除く 設備を付けた結果、当初四百七十億円だった費用が、百億円多い 五百七十億円に膨れあがったわけです。ごみを焼却すると温室効果 ガス、主に二酸化炭素が発生します。全国の焼却炉から排出された 2005年の二酸化炭素の量は、京都議定書の基準年となっている 90年と比較しても、三割近くも増えています。ごみが地球環境と密 接に関係しているのです。だから、リサイクルをしようというわけです が、リサイクルはごみを減らせるのでしょうか。日本は「循環型社会 形成推進基本法」という法律を基に、家電リサイクルなど各種のリサ イクル制度をつくりました。制度面では、環境先進国といわれている ドイツより進んでいますが、ごみの発生元を減らさなければ、いくらリ サイクルが進んでも、エネルギ-を使うばかりで、根本的な対策には つながりません。 では、ごみの分別はリサイクルにどう影響を及ぼしてるのでしょうか。
例えば容器包装リサイクル法は九十七年から実施され、消費者が 分別した瓶、カン、ペットボトルなどを自治体がそれを回収します。 札幌では南区、東区にある二ヵ所で、資源ごみを機械で選別し、最 後は人の手で分別しています。分別をやればやるほど、分別を実 施する自治体は財政負担を強いられるわけです。自動車リサイクル は、当初一年間当たり五百万台というもくろみが、実際稼動してみ ると海外に流出しているなどから三百万台しか集まらない。中国な ど国境を越えたリサイクルが行われているのです。ちなみに不法投 棄は、使用済みの廃家電や自動車が放棄されることが多かったの ですが、最近は、スクラップ鉄の市場価格が上昇しています。ある 中国人研究者が路上に捨ててある車を見て笑いながら「中国では こんなことはありえない。誰かが真っ先に駆けつけてスクラップとし て回収し、なくなっちゃうよ」と言っていました。札幌市は「スリムシ ティさっぽろ計画」の素案を発表して、市のホ-ムペ-ジで掲載し ています。その中で、ごみの減量についての資料を紹介しますと、 札幌の一般ごみの中身は、重量比でいうと、新聞紙などの紙ごみ が30%を占めます。ごみの中でも、紙やプラスチックなど資源とな るものを回収できれば、ごみ減量につながります。そのためには、 一般のごみと資源となるごみを一緒に出させないようにする手を打 っていかなくてはいけません。そのインセンティブ(動機付け)として 有料化の問題も提案されているのです。ごみを減らすことで、今の 北区篠路にある清掃工場の建て替えを中止したり、埋め立て地を 延命させたりすることが目的です。財政が逼迫する札幌市はごみ 処理の予算を減らし、その分を福祉関係の予算を増額するなど、 選択肢の幅を増やそうとしているのです。 よしだ・ふみかず=1950年、兵庫県尼崎市生まれ。東京都立大 経済学部卒業後、78年に京都大大学院経済学研究科終了。同年、 北大経済学部専任講師、助教授を経て92年同学部教授。2005年 北大公共政策大学院開設時から現職。ごみ減量を目指す札幌市廃 棄物減量等推進審議会会長を努め、今年3月、家庭ごみ有料化を 盛り込んだ答申書を市に提出した。
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