血糖値の指標 理解して=加藤 雅彦
糖尿病の本態は生化学検査の進歩とともに明らかになってきました。3000年以上前のエジプトのパピルスには「のどか゛渇き、水を欲しがり、筋肉が溶けていく」病気として、糖尿病に関する記載があります。しかし、これは病状を書いたものでしかありません。化学の発達により尿酸、血糖の測定か゛可能になり、50年ほど前に血中インスリン濃度が測定できるようになったことで、現在の「インスリン作用の低下による慢性の高血糖」という糖尿病の姿がはっきりしたのです。糖尿病の診断もまた、検査とともに進歩してきました。HbA1c(ヘモグロビン・エ-・ワン・シ-)の測定は糖尿病診療に大きな進歩をもたらしました。それまで点でしか分からなかった血糖値の情報か゛、「採血前1~2ヵ月間の平均血糖値」という線の情報で分かるようになったのです。HbA1cを血糖コントロ-ルの指標として多くの臨床研究が行われ、糖尿病性血管合併症と血糖コントロ-ルの関連が明らかになりました。糖尿病の患者さんは検査の意味を理解していなければ、医師と会話が成り立ちません。空腹時血糖値、食後血糖値、HbA1cの正常値やコントロ-ル目標値は覚えましょう。「今日のHbA1cは〇%ですよ」と伝えたときの患者さんの反応でその方の糖尿病への関心度、知識力が分かります。「0・3%下がった」「予想より高かった」などの反応がある方は上級者です。「前回何%でしたか?」と聞かれる方はいまイチですね。何年も通院している患者さんに「HbA1cって何ですか?」と聞かれると何とも言えず寂しい気持ちになってしまいます。(北海道医療センタ-糖尿病・脂質代謝内科医長)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます