ヒトが高度で複雑な生命活動を営める謎の解明を目指し、全遺伝 子情報(ゲノム)の解読作業が国際協力で始まった1990年代後半、 遺伝子数は最大十五万個と予想されていた。しかし、解読が進むに つれて数が減り、昨年10月の完全解読発表時には、ハエやマウス と大差ない約二万二千個と判明。遺伝子数では説明が付かないこと が分かった。米国のジェ-ムズ・ワトソンと共同でDNAの二重らせ ん構造を発見した英生物学者フランシス・クリックは58年、遺伝情 報はDNAからRNA、たんぱく質へと伝えられるとの「セントラルドグ マ(中心教義)」を発表。ゲノム解読はこの教義に支えられてきたが、 RNAの半分がたんぱく質合成以外の重要な役割を果たしていると 判明し、生物学は歴史的な転換点を迎えた。小さなRNAが遺伝子 制御や細胞分化に重要な役割を果たしていることは、米科学誌サイ エンスが2002年の十大研究成果のトップに掲げ、近年急速に研究 が進んでいる。日本でも経済産業省の「機能性RNAプロジェクト」か゛ 本年度から約六億四千万円かけて始まっており、医療応用などの 成果が期待されている。
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