北大教授らグル-プ 細胞内の変化感知→神経回路解明へ
筋肉収縮やホルモン分泌など多くの生理現象に関係する細胞内のカルシウムイオンの濃度変化を、鋭敏にとらえることができる青、緑、赤の蛍光タンパク質(GECO=ゲッコ-と命名)を、北大電子科学研究所の永井健治教授(42)らのグル-プが開発した。細胞内の動きを多面的に測定することが可能となり、神経回路の動作メカニズム解明にも役立つことが期待される。米国科学誌「サイエンス」電子版に発表する。蛍光タンパク質はノ-ベル化学賞を受賞した下村修博士の研究で知られ、細胞内の物質に標識として組み込むと光でその動きが分かる。中でも、色調の明るさの変化でカルシウムイオン濃度の濃淡を示す蛍光タンパク質は「カルシウムイオンセンサ-」と呼ばれる。従来のセンサ-は蛍光色が青緑から緑に限定され、変化の幅も小さかったため、わずかな濃度変化をとらえられなかった。永井教授らは、蛍光タンパク質の構造を遺伝子工学的に一部変えることなどで、従来は高くても元の明るさから10倍程度だった変化の幅が、26倍という緑のセンサ-の開発にも成功した。これらの技術をもとに、緑から青に変わる、変化の幅が110倍という世界最高のセンサ-も作り出した。光遺伝子と呼ばれる別の分野の技術を組あわせることにより、これまで解析することが難しかった、行動や思考、記憶など複雑な神経回路のメンニズムの解明も期待される。永井教授は「今回の技術は、細胞内の糖や脂肪などカルシウムイオン以外の変化を同時に観察する技術を開発するための基盤にもなる」と話している。
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