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はあ~ぁん、かぐやヒメ~ェ!

2013-10-13 16:41:00 | 日常

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先日「百田尚樹講演会」に行ってきました。

「永遠の0」、「ボックス」など次々にヒット作を出している売れっ子作家であり、

現在僕のお気に入りの一人でもある。

 

2010年に映画化された青春ボクシングもの「ボックス」は市川隼人主演で結構話題になりました。

 

また昨年刊行された「海賊とよばれた男」は昨年度の本屋大賞を受賞し赤丸急上昇の

状態なのである。

ひとつのカテゴリーに拘らぬ博識ぶりですが、どの作品もストーリー性、文章能力、

登場人物のキャラ立て等、

先にテレビの「半沢直樹」で脚光を浴びた池井戸潤や「ガリレオシリーズ」東野圭吾に

勝るとも劣らぬくらいの才能の凄さを感じる。

 

既に後の二人は直木賞を受賞しており百田にも取ってもらいたい、

いや十分もらうべき作家だと勝手に応援していたが、

賞取りレースには主に出版業界内の柵があり彼自身すでに不要と思ったのだろうか。

 

昨年「夢を売る男」で出版界の内幕を暴露、皮肉る作品である意味業界に喧嘩を売り、

また本屋大賞受賞時のコメントで「直木賞なんかより遥かに素晴らしい最高の賞だ」と

述べていることから伺うことも出来る。

 

直木賞は芥川賞と並び称される文学界の権威ある賞なのは間違いないだろう。

今では選考委員にもなっている浅田次郎も受賞する前と後では生活が一変したと書いている。

しかし何故ある特定の大手出版社からノミネートされた作品が多いのか、

事前選考の基準が不透明であるなど例えれば歌手のレコード大賞と同じような部分は否定出来ないだろう。

 

また池井戸、東野のように受賞後も良質な作品を提供し続ける作家が極端に減るのも事実である。

活字離れが心配される昨今であるがいかに昔の名前で出ていますてな作家が多いかなのだ。

 

よく売れれば何をしても良いのかみたいなセリフを聞くことがあるが本の世界、

文字だけで表現する能力は小説のジャンルでは間違いなく誤魔化しは利かないものだ。

 

これは趣味嗜好、場合によっては理解力の有無かも知れないが芥川賞作品は面白くないね。

一括りで芥川賞は「純文学」、直木賞は「大衆文学」と表されることが多いのにも不満である。

 

どうも権威づけというような上から目線の押し付けを感じるのと、

選ばれた作家の方も何故か広辞苑や古典でしかお目にかからぬような難解な語句を多用し、

それが理解できたものにだけ「お主もやるようのう」みたいな特別感を与える雰囲気がある。

僕の主観、持論だけど能力のある者が自分より劣る者に伝えるのは義務であり、

出来ないのは本当は能力がなかったからではないのかとさえ思うのだ。

作家のみならず塾や学校の先生、または職場の上司みたいな立場であればという意味だけどね。

 

語彙や知識の多さは勿論それはそれで素晴らしいことではあるけれど、

国語学者じゃあるまいに作家として考えた場合には通読してその作品(作者)が何を伝えたかったのか、

問いたかったのかと思うとかなりその中身は薄いものが多い気がするね。

授与するタイミングを逸した感のある村上春樹も読んで感動した者がどれだけいるのだろうか?

 

例によって脱線してしまったけど贔屓の引き倒しである百田尚樹との出会いはもう35年以上も前になる。

朝日放送系の視聴者参加型番組のはしりでもあった「ラブアタック」だ。

開始当初は関西ローカルだったけど段々と人気が出て全国放送に切り替わったので

60歳を中心とする50代以上の者には思い出していただけるかも。

 

 

司会は漫画トリオの横山ノック、上岡龍太郎(パンチ)にエバ(ゴールデンハーフ)で、後にエバは和田アキ子に変わり参院選出馬のノックが抜け上岡メインの司会になりました。

 

主に関西を中心とする大学、専門学校生の男たちがかぐや姫と称された一人の女性に

愛の告白を出来るチャンスを得るために早食い競争を始めとする色々なゲームで競う番組でした。

勝ち残った男一人がかぐや姫に告白するが、その是非は当然姫側に決定権があり、

「YES」「NO」のボタンを押す訳だけど挑戦者は殆どフラれて「奈落の底」に落ちていくのでした。

今でもそうだろうけどこの頃素人がテレビに出るなんてのはかなり非日常的な事で

またウケ狙いの企画側との思惑も一致したのか学生連中は皆イチビリ(調子者)ばかり

だったのもそうなる結果になるのも当然か。

 

面白かった学生は何度も番組に登場し、そしてその都度敗れ去ってしまうのだけど

「みじめアタッカー」と呼ばれて妙に我が家の茶の間では親近感を持つようになっていったのです。

そのみじめアタッカーの代表的な学生の名前が「ひゃくたなおき」でした。

当時は同志社法学部在籍の大学生で牛乳瓶の底みたいな度のきつい眼鏡をかけ、

ぼさぼさの髪の毛に角帽、ボロボロの学生服でバンカラな苦学生の風体だったのを思い出します。

使うことはまずないのに手にはこれまた古びた六法全書があり法学部をさり気なくアピールしてたなあ。

 

その後彼は同志社を中退し放送作家になり奇遇にも朝日放送の名物番組「探偵ナイトスクープ」の

チーフライターとなるのですが、それには全く気がついてませんでした。

また後から判ったことながら現在の彼の奥さんは「元かぐや姫」で番組では奈落の底でも

現実はなかなかやるものだと思いましたね。

 

小説家としてデビューした時の数年前に彼の名を見かけて記憶の彼方にあった

みじめアタッカーを思い出すのに時間はかかりませんでした。

同姓同名も可能性はゼロではなかったが、ネットで写真を見て確信。

いやそりゃあちらは全然僕を知らない訳だけど懐かしくて嬉しかったですよ。

 

デビュー作「永遠の0」を読んでこんな素晴らしい話を書ける作家が出てきたのに驚きました。

余程にネタを貯め込んでいたのか才能が溢れてくるのか

その後次々とに出してくる本の面白さはもう僕の語彙では表現不能なくらいです。

 

実際の生百田は学生時代のテレビキャラと違って捲し立てるような早口で意外でした。

本人いわく(この日の講演時間)1時間半でも通常の講師の1.5倍の量は話しているはずと

自慢してましたわ。

この部分だけは本みたいに判りやすくはなかったような・・・(笑)!

 

50歳になった時に自分の人生を振り返り大手出版社に原稿を持ち込み、

読まずに突き返されたり伝手をあたって零細出版社で出す話が決まってから、

別の大手からの話が舞い込んできたくだりや、

それが某有名作家からの口利きだったにも関わらず一旦決めたことと断った話や、

出版業界の力関係の話なんてのは結構面白かったですよ。

 

今の職業はと聞かれれば迷わず「小説家」ですと答えるくらいに構成作家は

ナイトスクープ以外辞めたらしいです。

この番組だけは生みの親の一人として最後まで面倒見るしかないけど作家としては

もっとあちこちに取材したり足を運んで調べなければならないので二束のわらじを履くほど器用でもない。

 

昔は人生50年と言われていたけど今は50、60は洟垂れ小僧らしいです。

客席の平均年齢も多分僕よりは高いようでかなり受けてました。

 

最後に彼の本をご存じなければ一度読むのをお勧めします。

色々なジャンルの作品を書いているのでどれが代表作とは言いにくいですが、

先の「永遠の0」は年末に岡田准一主演で映画公開されますので話題の先行には良いかと。

平成以降の出版物で1番売れている(公称300万部らしい)とちょっぴり自慢しとりました。

 

長い物はちょっとと思われる向きやお試し的にはショートストーリーの「輝く夜」、「幸福な生活」かな。

あまり話題にはなってないけど個人的に1番好きなのは「錨を上げよ」。

上下2巻の大作ですが主人公の男の名は作田(さくた)、殆ど百田の私小説的な物語でして、

作中後半に作家としての矜持が書かれているのに納得でした。

 

これからも彼の作品に期待したいです。