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男はつらいよ(年末禍福編)

2019-01-03 18:00:00 | インポート

※今回に限り冒頭に書かせてもらおう。

 毎度のこと記載の話はフィクションながら、

 表現や内容を不快に思われる可能性も排除はできず、

 読み進めていただくことはガズ友以外には推奨はできない。

 よってその他の訪問者には悪しからず了承願いたい。

 

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「ストーップ!」

 

モニター画面で回るルーレットに向かって

他の客が声掛けするのに合わせて止まる数字と睨めっこ。

 

「いや~あかんなあ、またハズレやわ。」

ぶつぶつ文句を言いながらも向かいに座るEの機嫌は上々だ。

 bingocard_image.jpg

縦横5列で斜めも有りのビンゴゲーム。

配布されたカードに書いてある数字が並べばビンゴ。

 

クリスマスセールとかで先に当たりが出た客に

ボトル1本サービスするという趣向だ。

 

カウンター5人、4人掛けソファー4席の小さなスナック。

入った時点でほぼ8分方満席。

 

いつものカウンターでなくソファー席を空けてくれたのも

彼女を満足させた理由の一つだ。

 

珍しく女性同伴で、それもパッと見、良くも悪くも押し出し感が強く、

まず水商売的な意味で素人とは思えぬEと入ったからなのが

ソファー席案内の本当の理由だろう。

どこかの店のママを同伴して来たと思われたとしても不思議ではない。

 

満席の店内では忘年会かクリスマス気分で盛り上がっている。 

ところがこちらは周囲の喧騒とは逆に一人落ち込むような

筆舌つくしがたい辛い精神状態だったのである。

 

前の割烹でしこたま酔ってしまったまではまだ良かった。

もうボトルの焼酎も空になり最後はEに気づかわれて

ウーロン茶を注文されるくらい。

 

問題は店の大将にタクシーの手配と勘定を頼んだ直後の事だった。

 

店を出る前にトイレに行き小用を済ませておくか。

足元をふらつかせながらも元の掘りごたつの席に戻ると

何だか具合がおかしい。

どうも落ち着かないのは酔いのせいでもない。

 

嫌な尻のむず痒さがあった。

 

もう酔いは急激に醒めてきていた。

慌てて再びトイレに戻って今度は着座すると・・・。

 

パンツに若干の染みが。

記憶を辿れば小用を足した際に思いきり放屁したのを思い出した。

少なくとも便意は小しかなかったし、

腹具合も然程悪かったことも無かったのも事実だ。

 

だがそんな言い訳を自分にしたところで何の問題回避にもならない。

タクシーはもうすぐ来るだろう。

 

急いで脱いだパンツの局部を手洗いの水とトイレットペーパーで

洗浄するしか咄嗟に方法は思いつかない。

 

その範囲がほんの少しだったのは不幸中の幸いか。

だが濡れたパンツを履き直すのも気乗りはしない。

万が一Eにバレたりすれば一生ネタに笑い者にされることも必至だ。

それだけは絶対避けなければならない。

残された時間内の選択肢は限られていた。

 6fa5fec1.jpg

 

朝まで帰らなくても大丈夫よと女性の方から言われるのは

一般男性にとっては社交辞令が半分以上だとしても

まんざらでもない台詞だろう。

だが今晩だけは違う意味で間違いを犯すことは断じて許されなかった。

 

時刻はまだ21時。

ビンゴゲームで外れたもののスナック客で紅一点のE。

酔客全員どころか店のママやホステス達からもモテモテ状態。

客とは違う彼女達スナック側からもおそらくは

味方に思えるような仕草や客あしらいに加えて、

そういう場を盛り上げるツボを従業員以上に心得ている、

いわば只でよく働くホステス嬢が一人増えたみたいなものじゃない。 

 

1曲歌えば店にいる誰よりも遥かに上手いとなれば

更に店内のボルテージが上がるのも当然だ。

段々とある意味さながら店を貸し切っての

ワンマンライヴショー状態の様相を呈してきた。

 

もう完全に醒めた私だったが考えるのは

どう切り上げるかしか頭になかった。

この時点でかなり冷静に考えられるようになっていた。

 

あの割烹で問題の個所も何度も水で洗浄し固く絞った後で

汚れや水分を丹念にトイレットペーパーで拭き取り、

更にペーパーを長めに千切った物を

何重にも折り畳み内部に敷設することで

緊急処置したのも功を奏したようだ。

 

結果的に考えれば簡易の生理用品みたいな使い方になったと

思っていただければ判るかと思う。

ゴワゴワした装着感が多少気色悪いが贅沢を言える立場ではない。

 

スナックのトイレで再確認しても見た目の半乾き以外、

臭気もなくもう代用生理用品も不要だった。

 

しかし安心するのは禁物。

Eと別れて帰宅するまでは気を抜くわけにはいかない。

 

22時を廻って卸したボトルも半分以下になっている。

恐る恐るもう帰ろうかと促すと

「OK!じゃあ次は私の知ってるお店に行こう、

今日は散々お世話になったし今度は私が奢るからさ。」

 

いやそういう問題じゃなくってさ・・・。

心の中の呟きがEに届くことは無かった。

 

スナックを出るとすぐにEは私の左の腕に寄り添うように

両腕を絡めながらシッポリと・・・。

すまない、つい調子に乗って見栄を張ってしまったようだ。

現実にはシッカリと拿捕されたまま次の店へと連行されたのである。

 

結局3件目の居酒屋でようやく拉致から解放されたのは

午前1時半を過ぎた頃だった。

 

こうして短くも長い夜は終わりを告げたのである。

 

翌日の仕事に若干影響があった感は否めないが、

最悪の状態を何とか脱したのは良かったと喜ぶべきだろう。

 

とにかくハードボイルドはカッコの良いものではなく

単純にただ辛いものなのだと改めて再認識した一夜だった。

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(おし~まいっ)