秘書検定 52*『美化語』 (3)付きやすい or 付きにくい

2014-11-22 | 秘書検定
 美化語 を作るには、言葉の前に 「お」 や 「ご(御)」 を付けますが、

今日は、一般的に 「お」 や 「ご(御)」 が付きやすいものと、逆に付きにくいものに分類してみましょう。


1 必ず付けるもの (地名 = 固有名詞) 言葉の向こうに、日本の歴史を垣間見る思いがします。

御茶ノ水 (おちゃのみず) 徳川秀忠の時代、近くのお寺の泉の水で を淹れて将軍に献上した。

御徒町  (おかちまち)  に乗らずに徒歩で戦った下級武士(徒士 = かち) が住んでいた町。

お台場  江戸時代、品川沖に砲台 を建設する際、幕府に敬意を払って 「台場」 を 「御台場」 とした。

御殿場  (ごてんば) 徳川家康の遺体を日光東照宮に移す際に、仮の御殿を建てて安置所とした。


2 必ず付けるもの (省くと意味が分からなくなるもの) 室町時代に始まった女房言葉の名残りです。

おでん   おかず  おこわ  おから  おやつ  おしぼり  お年玉  お辞儀  お古 など


3 必ず付けるもの (省くと意味が変わってしまうもの)

おにぎり    おふくろ →    お眼鏡 →    おかっぱ → 河童 など


4 付けたり省いたりするもの  話し手と聞き手の年齢や性別、立場などによって変わります。

お天気   お化粧   ご本   お酒   お弁当   お正月   お雑煮 など


5 付きにくいもの (外来語)

おビール     おトイレ    おニュー    おデート    おソース


6 慣用句・ことわざ 

「お馬のお耳に念仏 ??」 とは言いませんが、「御多分に漏れず」 では 「御」 が付きます。

ちなみに 「御多分」 とは、「多数の者の意見や行動」 という意味であり、
  「多聞」 (多くを聞き知る) や 「他聞」 (他人に聞かれる) という漢字を使うのは誤りです。


7 言い方の変わるもの

飯(めし) → ご飯(ごはん)    腹(はら) → 御中(おなか)

「お腹」 は当て字ですが、「御中」 や 「お中」 では意味が通じにくいため使われているようです。


 冒頭に、『 一般的に 「お」 や 「ご(御)」 が付きやすいもの・・・ 』 と書きましたが、

一般的な会話ではなく、たとえば のアナウンサーがニュースを読み上げる場合などは、

聞き手である視聴者の年齢も性別も、さらに 美化語 に対する認識や受け止め方も多様であるため、

NHK では数年前に、「放送で使われる敬語」 というテーマで、全国調査を行なったそうです。

たしかに、季節の話題なのか、事件や事故なのか、はたまたアナウンサーが男性か女性かによっても、

幅広い年齢層の視聴者には、受け入れやすかったり、逆に違和感を覚えたりするものでしょうから、

不特定多数の視聴者に伝える側としては、広く意見を聴きながら言葉を使う必要があるのでしょうね。

参考までに、1975年に NHK がまとめた 「美化語の選別基準」 を記載します。

1 外来語に「お」は付きにくい
2 「お」で始まる語には付きにくい
3 長い語には付きにくい
4 悪感情の語には付きにくい
5 色、自然に関する語などには付きにくい
6 食事、心の動き、感情、体の働きに関する語などには付きやすい
7 女性の日常生活であまり使わない語には付きにくい

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 さて、第104回 秘書検定 を受験なさった皆様には、筆記試験の結果が判明する頃でしょうか。

合格されましたら、ご自身の中でイメージしながら繰り返し練習を行ない、面接試験に臨んでくださいね。

当ブログの各カテゴリーが参考になれば、嬉しい限りです


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秘書検定 51*『美化語』 (2)由来と変遷

2014-11-10 | 秘書検定
 前回 美化語 について、『 もともと 「お」 や 「ご(御)」 が付いている、あるいは自然と付けてしまう 』 と申しましたが、

それでは、「 もともと 」 とはいつ頃からなのか、「 自然と付けてしまう 」 のはどのような背景があるのか、

今日は、そのあたりを探ってみることにします。


 時は室町時代、宮中に仕える女官たちの間では、「 女房言葉 」 が使われていました。

「女房」 といっても 「妻」 ではなく 「使用人」 のことで、部屋(房)があてがわれていたのが 「女房」 のはじまり。

ちなみに 清少納言 や 紫式部(平安時代)も、「位」は与えられていたものの、女房という身分だったようです。

「女房言葉」 は、語頭に 「お」、または語尾に 「もじ(文字)」 を付けるのが特徴で、前回ご紹介した、

おにぎり  や おでん  以外にも、惣菜を数々そろえた「おかず」、小豆を萩の花に見立てた「おはぎ」、

そして、杓子(しゃくし)に 「もじ」 を付けて 「しゃもじ」 と呼ぶなど、今に残る言葉が数多くあります。

美化語 が、食べ物や家の中の品に多く使われたのは、女性たちの日常生活に密着していたためでしょう。

 江戸時代になりますと、将軍家に仕える侍女が使うようになり、さらには武家の女性や町人にまで広まりますが、

「刺身」 を 「お造り」 と言い表すあたり、縁起の悪い言葉を忌み嫌った、武家社会の名残りでしょうか。

 このように、美化語 の中には女房言葉に由来するものが数多くあり、その優美で上品な言葉遣いは、

時を越えて女性たちに語り継がれ、さらには丁寧な表現として、男性にも使われるようになりました。


 学習院大学人文科学論集(著者・鈴木智映子氏) によりますと、昭和31年頃にピークを迎えた 「お」 の使用は、

昭和30~40年代に減少した後、大幅な減少は見られず、平成に入って再び減少傾向にあるとのことです。

以前は 「 お帳面に、きれいな お字 を書く 」 という言い方もされていたそうですが、

「 お帳面 」 は 「 ノート 」、「 お茶の間 」 は 「 リビング 」、「 おさらい 」 は 「 復習 」、

「 お三時 」 や 「 おやつ 」 は 「 ティータイム 」 へと、時代は移り変わって行きました。

そういえば、童謡「 どんぐりころころ 」(大正時代の作品) に、

お池 にはまって さあ大変 」 「 やっぱり お山 が恋しいと

という歌詞がありますが、最近では、子供に対してもあまり聞かれなくなった 「お」 の使い方ですね。

言葉は生きていて、常に変化していますが、特に 美化語 は、その時代を反映しているように思われます。


 冒頭に、『 「自然と付けてしまう」のは、どのような背景があるのか 』と書きましたが、

「よく聞く」 「そのように教わった」 という場合、人は 「 自然と付けてしまう 」 ものですし、

たとえば、お客様と従業員(立場)、男性と女性(性別)、大人と子供(年齢差)、そして親疎など、

話し手と聞き手との関係によっても、自然と付けたり、逆に、自然と省いたりするものです。

美化語 を取り入れることで、その言葉だけでなく、全体を敬語で整えようとする意識が働きます。

過不足なく使いこなして、敬語に磨きをかけたいものです。


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秘書検定 50*『美化語』 (1)尊敬語・謙譲語Ⅰとの違い

2014-11-02 | 秘書検定
 尊敬語 に始まり、謙譲語Ⅰ謙譲語Ⅱ、そして 丁寧語 へと進めて参りました敬語シリーズ。

5種類の最後は、以前は 丁寧語 に含まれていた 美化語 です。

その名の通り、ものごとを美化して述べるときに用い、特に女性が多く使うのが特徴です。

名詞の前に 「お」 または 「ご(御)」 を付けて、ものごとを美化することにより、

それを述べている自分まで上品に見せる効果があるのですから、上手に取り入れたいものです。


 さて今日は、美化語 と、尊敬語謙譲語Ⅰの 「お」 や 「ご(御)」 との違いを確認しましょう。

1 尊敬語 の 「お」 「ご(御)」 は、行為者や所有者を立てる ときに用います。

 (1) お ・ ご(御) + 名詞         「(お客様からの)お電話」 「(先生からの)ご挨拶」

                          「(お客様の)お名前」 「(先生の)ご住所」

 (2) お ・ ご(御) + 動詞  
 
     ① お ・ ご(御) ~ になる     「お読みになりますか?」

     ② お ・ ご(御) ~ なさる     「ご出席なさるそうです」

     ③ お ・ ご(御) ~ くださる    「ご了承くださいませ」


 (3) お + 形容詞 ( 形容詞 に、ご(御)は付きません)

                         「お美しい方ですね」

                         「お忙しいことでしょう」


2 謙譲語Ⅰ の 「お」 「ご(御)」 は、向かう先を立てる ときに用います。

 (1) お ・ ご(御) + 名詞         「(お客様への)お電話」  「(皆様への)ご挨拶」

 (2) お ・ ご(御) + 動詞     

     ① お ・ ご(御) ~ する      「お持ちしましょうか?」

     ② お ・ ご(御) ~ 申し上げる  「ご案内申し上げます」

     ③ お ・ ご(御) ~ いたす     「ご説明いたします」 ( 「いたす」は 謙譲語Ⅱも兼ねています)


 以上は 尊敬語謙譲語Ⅰ に付く 「お」 や 「ご(御)」 であり、美化語 ではありません。

それでは、どのような 「お」 や 「ご(御)」 が 美化語 に該当するのかと言いますと、

もともと 「お」 や 「ご(御)」 が付いている、あるいは自然と付けてしまう、、とでも申しましょうか。

たとえば、 ごはん    おにぎり    おでん    お茶    お酒  

これらは 尊敬語 でも 謙譲語Ⅰ でもなく、どちらかといえば 丁寧語 に近いように思えますが、

丁寧語 ( です ・ ます ・ ございます ) が、相手に対して丁寧に述べるもの であるのに対して、

美化語 ( お ・ ご(御) )は 、ものごとを美化して述べるもの と位置づけられています。

「丁寧に述べる相手」 の有無に関わらず使えるという違いが 丁寧語 から分類された所以なのかも知れません。


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秘書検定 49*『丁寧語』 (3)形容詞 + ございます

2014-10-18 | 秘書検定
 前回お話しした 「(で)ございます」 は、前に 名詞 が来ると 「お茶 でございます。」 となりますが、

たとえば、「きれい」 や 「美しい」 という言葉が来ると、どのようになるでしょう。

     「きれいでございます。」

     「美しいでございます。」

二つを比べてみますと、「美しいでございます」 の方は違和感があり、このように言うことはありませんね。

「きれい」 と 「美しい」 は似たイメージの言葉ですが、「きれい」 は形容動詞で、 「美しい」 は形容詞です。

形容詞といえば最後が 「い」 で終わると覚えているため、「きれい」 を形容詞と考えがちですが、

「綺麗」 「華麗」 「有名」 は、「な(連体形)」 「だ・です(終止形)」 などの活用が続く 形容動詞 です。

そして 「美しい」 は、「高い」 「軽い」 「重い」 と同様に、物事の性質や状態を表す 形容詞 です。

形容詞に丁寧語である「ございます」 を付けて言い表すパターンは、下記をご参照ください。


「・・・ a い」 : 「高い」 t a k a i         → たかう (読み方は)たこうございます
         「暗い」 k u r a i        → く らう  (読み方は)くろうございます

「・・・ i い」 : 「おいしい」 o i s h i i      → おいしう (読み方は)おいしゅうございます
        「うれしい」 u r e s h i i     → うれしう (読み方は)うれしゅうございます

「・・・ u い」 : 「軽い」 k a r u i         → かるうございます
         「暑い」 a t s u i        → (お)あつうございます

「・・・ o い」 : 「重い」 o m o i         → おもうございます
         「遅い」 o s o i         → おそうございます

( 「・・・ e い」 という形容詞はありません。)

 いかがでしょうか?

実は日頃から、「早い」を「おはようございます」、「めでたい」を「おめでとうございます」と言っているのですが、

特にお若い方にとっては、「おいしゅうございます」 などは使いにくい言葉かも知れませんね。

「高い」 を 「高いだ」 と言わないということは、本来は 「高うございます」 が正しくて、

厳密に言えば 「高いです」 は間違っている、、ということになるのかも知れませんが、

既に多くの人が、「高いです」 「暑いですね」 「おいしいですよ」 など 「形容詞 + です」 を許容しつつあり、

言葉は生きていて、常に変化しているのだと実感するところです。

とはいえ、「高いです」 と言われて、違和感や抵抗を感じる人がいるのも事実です。

本来の言葉を知っていて使い分けることが出来れば、コミュニケーションの幅がさらに広がることでしょう。


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秘書検定 48*『丁寧語』 (2)ございます

2014-10-13 | 秘書検定
 丁寧語には、「です」 「ます」 の他に 「ございます」 があり、「ございます」 には二つの意味があります。

           1 ある   「 の隣に がございます。」

           2 ある   「 の隣は でございます。」

どちらも 「ある」 の丁寧語ですし、よく似た文ですが、12 の「ございます」 では意味が異なります。

丁寧な言い方(敬体)を、普通の言い方(常体)に直してみますと、それぞれの 「ございます」 は、

 1 は、「 の隣に がある。」 という 存在 を表し、

 2 は、「 の隣は である。」 という 断定 を表し、「 の隣は だ。」 と言い換えることができます。

「である」 は 「であ」 を経て 「だ」 になった 断定の助動詞 ですので、

「だ」 の中に 「で」 が含まれていると考えて差し支えないのでしょうが、

「ございます」 には 「で」 が含まれていませんので、断定 を表す際には 「で」 を付ける必要があります。

 
 さて、「(で)ございます」 は 「です」 「ます」 より丁寧な表現ですが、

前回お話しした、丁寧語の会話例に当てはめてみますと、

 「田中さん、電話でございます。」

 「どなたでございますか?」

 「ABC 商事の鈴木さんでございます。」

となり、「どなた」 と 「鈴木さん」 には、「ございます」 が、しっくり来ないことにお気づきでしょう。

これは、存在 を表す 「ございます」 が、自分側の事に限らず、広く様々な内容を述べる際に使えるのに対し、

断定 を表す 「(で)ございます」 は、自分側の事を述べる場合に使い、相手側には使えない ためです。

「(で)ございます」は、丁寧語であると同時に 謙譲語Ⅱの様相を呈している丁重な表現 と言ってもよいでしょう。

上記の会話を、丁寧語を用いた適切な表現に言い換えますと、

 「田中さん、電話でございます。」
           
 「田中さん、お電話です。」

秘書A子さんが上司に取り次ぐ場合は、「お電話でございます。」となるのでしょうが、
田中さんが肩書きの付かない先輩や同期、まして後輩なら、これで


 「どなたでございますか?」
           
 「どなたでしょうか?」 「どなたからですか?」

電話の相手に尋ねるのなら、「どちら様でいらっしゃいますか?」となりますが、
この場合は、自分側である同僚との会話ですので、このようにシンプルな丁寧語で

  
 「ABC 商事の鈴木さんでございます。」
           
 「ABC 商事の鈴木様です。」 「ABC 商事の鈴木様からです。」


  の会話は二人だけのものですが、このように取り次ぐことになりますと、

その場に居合わせた上司やお客様、そしてもちろん の相手の耳を意識しなくてはなりません。
 
「誰 」 「鈴木さん」では、たとえその後の言葉遣いが丁寧であっても、

舞台裏が見えてしまったようで、周囲の方に雑な印象を与えてしまいますし、何より相手の方に失礼です。

保留ボタンを押し忘れて、会話が筒抜けになってしまっても慌てることのないよう、気をつけたいものです。

 
 前述したように、存在 を表す「ございます」は、「ある」 「あります」 という意味で広く使える丁寧語です。

  「 売り場は地下1階にございます。」

一方、断定 を表す丁寧語 「(で)ございます」 は、自分側には使えますが、相手側には使えません。

  「先ほどお電話いたしました、佐藤でございます。」
  「お待ちいたしておりました。 佐藤様でございますね。」

  「私の郷里は北海道でございます。」
  「佐藤様のご郷里は、どちらでございますか?」

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 秘書検定の面接試験では、準1級 1級共に、上司に対して報告を行なうという課題がありますが、

「新製品が発売されたそうでございます。」 「大変便利だとのことでございます。」 などの「~でございます」は、

自分側の話ではなく、一般的な話題を伝聞形式で述べるものです。

したがって謙譲語Ⅰの役割はなく、上司に対してひたすら丁寧に述べていると解釈すればよいでしょう。


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