秘書検定 64*『敬語の誤用』 (1)二重敬語

2015-05-02 | 秘書検定
 せっかくの敬語も、使い方を間違えてしまいますと、相手に敬意や心遣いが伝わらないばかりか、

かえって失礼になってしまうことさえあります。

敬語の間違えやすい使い方として、今日は 「二重敬語」 についてお話しいたします。

 
 一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを 「二重敬語」 といいます。

たとえば 「歩く」 を尊敬語で表すには、

 1 尊敬語を作る公式 「お~ (に) なる」 に当てはめて、「お歩きになる」 

   例) 「ゆっくり お歩きになっても 10 分で到着します」

 2 尊敬の助動詞 「~ れる・られる」 を使って、「歩かれる

   例) 「バスの本数が少ないので、歩かれた方が早いと思います」

どちらか一方で尊敬語になるのに、両方を使って 「お歩きになられる」 と言ってしまう背景には、

「敬語は長いほど丁寧に聞こえる」 という思い込みがあるのかも知れませんね。

ただし、敬語を二重に使っても 「二重敬語」 には該当しない場合もあります


例外 1 習慣として定着している語

      「お召し上がりになる」 「お見えになる」

      「召し上がる」 「見える」 だけでも尊敬語になるのですが、

     「~ (に) なる」 を付けることが、習慣として定着 しています。


例外 2 敬語連結( ふたつの尊敬語を、接続助詞である 「」 で繋げたもの )

     例) 「お客様がお読みになっいらっしゃる」

        「お客様が読んでいる」 の 「読む」 と 「いる」 を、

         尊敬語の 「お読みになる」 と 「いらっしゃる」 にして、「」 で繋げた。
 
     例) 「お客様がお読みになっくださる」

        「お客様が読んでくれる」 の 「読む」 と 「くれる」 を、

         尊敬語の 「お読みになる」 と 「くださる」 にして、「」 で繋げた。

これらは、個々の尊敬語の使い方が適切であり、結びつきに不合理がないため許容されているものです。

*******************************************************************************

 秘書検定の面接試験では、来客役の面接官に対して、秘書になりきって話します。

第 92回の 「状況対応」(準1級) では、このような課題が出されました。

「 いらっしゃい。(お辞儀をする)

(前傾姿勢で言う) 山田部長はすぐに来るので、椅子に座って待ってくれ。(椅子を指し示す) 」

これを適切な敬語に直すのですが、解答例には次のように書かれています。(動作は省きます)

「 いらっしゃいませ。 

(部長の) 山田はすぐに参りますので、椅子にお掛けになってお待ちください(ませ) 」


「お掛けになっお待ちください」 という箇所が、「敬語連結」 に該当しますが、

」 を付ければよいというものではなく、前後の語を適切な尊敬語に整えることが必要です。
 
  「座ってお待ちください」 では、「座る」 が尊敬語になっていません。

  「お座りになって待っていてください」 では、「待つ」 が尊敬語になっていません。

  「お座りになられてお待ちください」 では、「お座りになられ」 が 「二重敬語」 です。
 

 ところで、課題文の 「座る」 が、解答例では 「掛ける」 になっていることにお気づきでしょうか?

「座る」 と 「掛ける」 の違いは?

畳や床には 「座る」 と言いますが、脚の付いた椅子やソファーには、「座る」 も 「掛ける」 も使います。

そういう意味では、「掛ける」 より 「座る」 の方が、使用範囲が広いと言えるでしょう。

また、「掛ける」 よりも 「座る」 の方が、時間が長くなる場合に使うと聞いたことがあります。

昔は、「お嫁に行くまでの、ほんの腰掛け」 と言って、社会勉強のために働く女性もいましたっけ。

 さて、「食べられる・飲まれる」 より 「召し上がる」 、 「着られる」 より 「お召しになる」 の方が、

そして 「お座りになる」 よりも 「お掛けになる」 と言った方が、スマートではありませんか?

相手の動作をそのまま述べるより、別の言い方をした方が奥ゆかしく、上品に聞こえるようです。

ちなみに座布団を勧めるときは、「お座りください」 ではなく、「どうぞ おあてください 」 と言います。

ひとつの動作にも、さまざまな言い方があります。

それもまた、日本語の魅力ですね。


お読みくださいまして、ありがとうございます。 クリックしていただけますと励みになります。
にほんブログ村 資格ブログ 秘書検定へ
コメント (2)