もし”永遠のチャンプ”大場政夫が生きてたら、たとえ事故ったとしても、運良く奇跡の復活を成し遂げてたら。そう思うと居ても経ってもいられないのが、大場ファンである。
大場政夫ブログに結構アクセスが集中してるので、この強引なテーマを思いつきました。いきなりサラテとは、少し荷が重たいですが。大場の集中力と狂気をもってすれば、非常に白熱した展開になると、私は感じてます。
時は1976年9月、場所は日本の蔵前国技館です。チャチャイ戦以来、3年8ヶ月ぶりの世界タイトルマッチです。
1973年1月、チャチャイ・チオノイに劇的な逆転KOを収め、時代の寵児となった大場は、一度ボクシングの舞台から遠ざかります。極度な減量苦の為に、帝拳ジムがとった苦肉の策でした。
事実、帝拳ジムの具体的なプランでは、チャチャイ戦のあと、少し間をおき、大場の階級を一つ上げ、当時のWBCバンタム級王者エンリケ・ピンダー(パナマ)との試合を予定してたそうです。最初、大場にバンタム級での挑戦の話が持ち上がったのは、アモレス戦の後の72年10月のNYのMSGでの、当時のバンタム級王者エンリケ・ピンダーへの挑戦でした。
実はピンダーは、アモレスと同じパナマ出身で、大場とアモレス戦の時に、アモレスのスパーとして来日してます。ピンダーは72年7月に、当時最強と言われたオリバレスを破り、新王者となったエレラに挑戦し、これを打ち負かしバンタム級王者になったばかりでした。
故に、アモレスと同じマネージャに属するピンターが初防衛戦の相手に大場をと思っても不思議はないですね。大場陣営が壮絶な減量苦で階級を上げたがってるのは、自明でしたから。でも残念ながら、NYでのマッチメイクは流れてしまいました。
というのもピンターも、73年1月の初防衛戦でロメオ・アナヤ(メキシコ)にまさかの3RKO負けで王座から転落です。実際には、大場のチャチャイ戦後の予定は白紙だったようで、フライ級のタイトルは後々返上し、バンタム級での挑戦を現実的に帝拳サイドも考え始めた矢先の、あの事故だったんですね。
もし、NYで大場がピンターに挑戦してたら、MSGという大舞台の雰囲気に飲み込まれ、流石の大場もピンターに歯が立たなかったでしょう。チャチャイを選んだのも苦肉の策ではあったんですが。壮絶な減量でも確実な勝ちをを選ぶか?一か八かのギャンブルに賭けるか?今から思うと、どちらとも非常に危険な綱渡りだったんですね。
でも、そのピンターに勝って新王者となったアヤナもすぐに王者から転落しますが。多分、まだジム側も大場も、主戦場が中南米の、それも群雄割拠の熾烈なバンタム級で、彼等と対等に戦うには時間が掛かると読んでたんでしょうか。
さてと、アナザーストーリーに戻ります。大場サイドはここで大きな決断をします。ゆっくりと大場を休ませ、2年半を掛けてバンタムで通用する身体作りのプランを立てます。あくまで架空の物語です。
この大胆なプランが吉と出ます。僅か2.72キロですが、このウエイト増は大場にとって思った以上の肉体的精神的余裕を与えました。この2年半で身長も173センチにまで伸び、バンタム級でも全く見劣りしない体格に、長野ハル会長兼マネージャも大満足です。
それ以上にプラスになったのが、結婚でした。大場がギャンブルをせずにバンタム級に移行したがらなかったのも、彼女の存在があったんです。まずは、家庭の経済的な安定を優先したんです。外で飲み歩く姿もめっきり少なくなり、二人の娘と戯れる姿には、長野ハル会長が待ち望んだ姿でした。
そして、いよいよ2年半ぶりの復帰戦です。相手は宿命のライバルである花形進。過去の闘いでは1勝1敗。前回の防衛戦は負けに近い判定勝ちだったんで、いち早くバンタムに転向した花形を復帰戦の目標にしてたんですね。
その花形ですが、フライ級では屈指のハードパンチを誇るも、流石にバンタム級では勝ったり負けたりでパッとせず、引退試合に大場を選んだんです。
試合は大場の一方的な展開でした。左右のストレートにはより一層の磨きがかかり、重さも威力も別格でした。
全くの防戦一方の花形に、昔の面影は全くありません。フィニッシュは左の強烈なストレートで頬骨を刳り、ミゾオチにモロに突き刺さる右のショートストレートに、花形は一溜まりもありません。両者の7年に渡る完全決着は、ここに幕を下ろします。
そして、75年12月。相手は一度は対戦のプランが持ちかけられた、元WBCバンタム王者のエンリケ・ピンダーです。流石に王者から転落した後は、往年のスピードも輝きもないですが。大場の復帰戦の相手には格好の相手です。
ピンターを日本に招いての復帰第二戦。大場はこの元王者も難なくKOで下し、バンタム級で十二分に戦える事を証明します。世界ランクも上位に上がります。
年が明けての復帰3試合目の大場はここにても、元WBCバンタム王者の ロドルフォ・マルチネス(メキシコ)を相手に選びます。
この76年の3月(実際には5月ですが)、サラテにKO負けを喰らい、王者から転落しますが。46戦41勝(34KO)4敗1分という輝かしい戦歴を誇るスイッチヒッターのテクニシャンは、大場にとって難関とも格好とも言える相手です。
前年の沼田久美(当時WBC9位)との防衛戦では際どい判定で勝利し、油断ならない相手です。
5月敵地メキシコに乗り込むも、やや不利と見られてた大場だが。その元王者を難なく一蹴します。打ち合いを避け、確実に勝つ戦法を試した大場は、左右のストレートと右のショートボディで、意気消沈したマルチネスを全く寄せ付けず、大差の判定勝ちです。
これで大場は世界ランク一位に返り咲きます。そして、バンタム級史上最強と噂される最強の王者が、大場に前に立ちはだかります。
今年3月(実際には5月です)にWBCの新王者となったばかりのメキシコの英雄でもあるサラテ。あまりの強打の為に誰もが挑戦を嫌い、40戦目にしての世界初挑戦&初タイトルでした。
元王者マルチネスを9KOで下した、メキシコの怪人サラテの戦歴は47戦47勝45KOと、破格の戦歴を誇る。41戦38勝18KOの大場とは、次元が違った。
勿論、メキシコのメディアも大場の実力は認めるものの、ミスマッチと酷評した。それでも大場ば逃げなかった。追い詰められた時ほど大場の狂気は唸るのだ。
勿論、大場に逃げ道はなかった。闘い続ける事が唯一の救いであり、逃げ道だったのだ。
しかし、今度の対戦相手は強さの桁が違う。大場との死闘を演じた”パナマの黒豹”アモレスも、バンタムに転向し、この年の6月にサラテの初防衛戦に挑むも。強打の前に呆気なく、僅か3Rで撃沈した。まさに、強さの桁が違った。
大場はこのビデオを見ていた。そしてポツリと呟いた。”倒せばいいんでしょう、倒せば”
今日はここまでです。多分、3話完結になると思います。
いきなりサラテですか。私なりに、色々と予想はするんですが。期待すればする程、ワクワクします。復帰初戦を花形にした所は憎いです。2戦目がピンター(パナマ)、そして3戦目がマルチネス。マッチメイクもなかなか渋いです。二人とも元バンタム級王者というのも大場らしいです。
3話完結という事で、こちらもじっくりと楽しませて頂きます。
大場は、ノンタイトルで世界ランカーと4試合やってんですね。それもスーパーフライのウエイトで、多分全てKO勝ちで圧倒したと。ロッキーガルシアくらいですかね、苦戦したのは。
それを考えると、バンタム級での大場の戦いぶりは、彼のピークに近いと思います。一方、サラテは減量苦で階級を一つ上げる予定でした。丁度、大葉と同じ様な状態なんですね。
それに、書きながら思ったんですが。お互いに丁度いいタイミングじゃないかと。バンタム級に階級を上げて、息を吹き返した大場と、スーパーバンタムに階級を上げ、凋落する前のサラテ。大場が生きてたら、宿命の対決になってたかもしれません。
大場復活ですか。
そして、サラテとの夢の対決。
復活戦の花形戦は圧勝ですが。その後も順調ですね。
我らが大場にしては、とても言い滑り出しです。でも、どうやってメキシコの怪人サラテに立ち向かうんですかね。接近戦は絶対に禁物です。
井上尚也との対決も見たいもんです。
先も言った様に、とうとうスマホ完全に壊れました。何とかしぶとく持つかなと期待してたんですが。
実質3年、計4年の寿命だったんですが。スマホにしては長寿に属するんですかね。大体において、3年に1度のスパンで機変してんですが、完璧に壊れたのはこれが初めてです。
大場アナザストーリーその3を書いてる時、何だか怪しくなってきたんですが。その後直ぐにお釈迦様にです。
人の運命もそうですが。終わる時は呆気なくですかね。大場の死もホントに呆気なかったですもの。
でもそんな大場の死を無駄にしない為のアナザストーリーですが。出来るだけ公平に書こうと思ってます。今後とも宜しくです。