アクセ数の激減が止まらない私めの過疎ブログですが、それに輪を掛けるような難しいテーマが続きますが、ご勘弁をです。
さてと前回”その11”では、群の構造を調べる為に、部分群を探したんですが、巡回群を列挙する事でその作業を簡単に出来ます。可換群となる部分群はすぐに見つかりますね。
しかしそれ以外の部分群は、それらの群が描く対称性の”家系図”を使いました。
群の家系図と群が描く(図形の)対称性の家系図(ハッセ図)。つまり、自己同型の群のハッセ図と群が描く代数体のハッセ図が一致する事がガロア理論の本質です。
こうした”部分群の家系図”こそが、”群が描く体のあり方”を見事に表現してます。
以上、寄せられたpaulさんのコメントを元に前回を纏めましたが、最初からこう書いとけば、解りやすかったかもです。
そこで今日は、アロア理論の中核いや生命線でもある”正規部分群”について述べたいと思います。
ナメた言い方をすれば、正規部分群の剰余類が巡回群になる時、方程式が四則とルートで解けるとなるんですが、手堅く言えば、正規部分群こそが”体の自己同型をなす群”と大きく関わってくるとなります。
でも実際にはずっとややこしいです。
故に、少しずつ話を進めていきたいと思います。
正規部分群と剰余類
前々回”その10”に寄せられたUNICORNさんのコメントにある様に、
結論から言えば、すべての群の対称性(自己同型)を1つ1つ調べる訳にもいかないので、右剰余類と左剰余類が一致する特別な部分群を抜き出す。
これを”正規部分群”と呼びますが、これこそが”方程式を四則とべき根で解く”大きな主力級の鍵となります。
そこで、ある1つの部分群に注目し、それに属する全ての元それぞれに、ある同じ1つの元を演算してみます。
例として、正方形の対称操作の群Gの部分群{e,S₁}=Hを考えます。”その11”で述べた様に、等脚台形を描く様な対称操作の部分群でしたね。
因みに、「天才ガロアの発想力」の著者小島氏は、”描く”というより”固定する”という表現を使ってますが、好きな方で理解してください。
Hに属する元eとS₁と、それぞれにある群Gの元をfとし、{f※e,f※S₁}という集合を作り、fH={f※e,f※S₁}と記します。
例えば、f=R₁(反時計回り90度の回転対称操作)なら、R₁※e=R₁、R₁※S₁=S₃ですから、R₁H={R₁,S₃}となりますね。
これを群論における”左剰余類”(LeftCoset)と呼びます。
定義では、Gが群でHがその部分群で、gはGの元とする時、gH={gh:h∈H}をGにおけるHを法とする左剰余類となる。但し、小島氏は右剰余としてますが、左右は関係ないです。
つまり、この左剰余類とは等脚台形を描く様な元全てにR₁の90度回転操作を繋げば、どんな対称操作になるのか?それを表すだけの事ですね。
これを”対称性をずらす”とも呼ぶんですが、Gの全ての元について、それを含むHの左剰余類を書き出します。
少し面倒ですが、fH={f※e,f※S₁}と乗積表を見ながら計算します。
eH={e,S₁}、S₁H={S₁,e}
R₁H={R₁,S₃}、S₄H={S₄,R₃}
R₂H={R₂,S₂}、S₂H={S₂,R₂}
R₃H={R₃,S₄}、S₃H={S₃,R₁}
すると、左剰余類fHの2個の要素は必ず異なる。左剰余類は全て2つの元で出来てる。更に2つの元は完全に重なるか、全く重ならないかのいすれか。と3つの特徴に気付きます。つまり、左剰余類とは左側から演算を掛けるが故に、”対称性をズラす”と呼ぶんでしょうね。
実はこれらは、正方形の対称操作の群Gだけっでなく、全ての群にて成立します。
まず、最初の一致する元がない事の証明ですが、仮にfHの2つの元が一致し、h₁≠h₂∈Hに対し、f※h₁=f※h₂とする。この両辺にfの逆元f⁻¹を左から演算すれば、f⁻¹※f※h₁=f⁻¹※f※h₂。f⁻¹※f=eよりh₁=h₂となり、h₁≠h₂に矛盾する(証明終り)。
次に、”Hによる全ての左剰余類はHと同じ個数の元からなる”ですが。”一致する元がない”という上の事実から直接証明できます。
では、3番目の奴はどうでしょうか?
仮に、f₁≠f₂∈Gに対し、f₁Hとf₂Hに共通の元があるとすると、h₁,h₂∈Hに対し、f₁※h₁=f₂※h₂となる。この両辺にh₂の逆元h₂⁻¹を右から演算すれば、f₁※h₁※h₂⁻¹=f₂※h₂※h₂⁻¹=f₂※e=f₂。
すると、Hの任意の元hに対し、f₂※h=f₁※h₁※h₂⁻¹※hとなり、h₁※h₂⁻¹※hはHの元である事から、f₂※hはf₁Hの元になる。つまり、f₂Hの元が1つでもf₁Hに含まれるなら、f₂Hの全ての元がf₁Hに含まれる。
故に、左剰余類を作れば、完全に一致するか、全く重ならないかのいすれかになる(証明終り)。
以上の3つの事実から、”群Gは部分群Hを使い、重なる事なく同じ個数の集合に分類される”事が判ります。これをイメージすれば、G{H{e,f₁,f₂}、f₃H{f₃,f₄,f₅}、f₆H{f₆,f₇,f₈}}となる。これは、fH={f※e,f※f₁,f※f₂}から明らかですね。
少し抽象的でややこしいですが、”対称性をずらし”ても、群の要素は完全に一致するか、全く重ならないかのいすれかになる。故に、対称性をずらさなければ、部分群同士が重なる事はなく群は区分され、その部分群の元数が決まる”という事です。
部分群の元の個数
そして上の事実から、”群Gの部分群Hの元の個数は、必ずGの元の個数の約数になる”という重要な「部分群の元数の法則」が導けます。これは、部分群Hによるどの剰余類もHと同じ元の個数で区分けされる事から明らかです。
上述した様に、8個の元からなる正方形の対称操作の群Gの部分群Hの元の個数は、(区分けされる事で)1,2,4,8の何れかとなり、全て8の約数になってますね。
それと、もう一つ重要な法則が導けます。
前回”その11”で述べた巡回群ですが、有限群Gの任意の元fを複数個演算した元を作ると、Gは有限群により異なる元が延々と作れらる事はない。
そこで仮に、7個演算したものが3個演算したものと一致すれば、f※f※f※f※f※f※f=f※f※fとなりますね。この両辺にfの逆元f⁻¹を3つ右から演算すれば、f※f※f※f=eとなる。
つまり、演算を続ければ、いつかは単位元eに辿り着き、後はその繰り返しになる。
この様な作業から部分群である巡回群H={f,f※f,f※f※f,・・・,e}が得られ、”群Gの任意の元fに対し、fをGの元の数と同じ回数演算すると必ず単位元になる”という拡張された法則を得ることが出来ます。
そこで先程、左剰余類で群全体が区分けされると述べましたが、右剰余類も同じです。
例えば、”R₁を含むH={e,S₁}の左剰余類”R₁Hに一致する”R₁を含む部分群Nの右剰余類”NR₁が存在する。
事実、N={e,S₂}とおけば、NR₁={e※R₁,S₂※R₁}={R₁,S₃}={R₁※e,R₁※S₁}=R₁Hとなりますね。
この部分群Nを部分群Hと”共役な部分群”と呼びます。
そこで一般に、群Gのどんな部分群Hと元fに対し、fH(fを含むHの左剰余類)=Nf(fを含むNの右剰余類)となる部分群Nが、Hとfの組毎に存在する。この時、fHf⁻¹なるNが部分群となります。
上の例で言えば、H={e,S₁}とN={e,S₂}を”共役”と呼びますね。
この共役な部分群の中でも、特に重要なのは、自身と共役な部分群が自身と一致するケースです。
これは全てのfに対し、fHf⁻¹=Hが成立する様な、fH=Hfという左剰余類と右剰余類が完全一致する部分群です。
そして、この様な部分群を”正規部分群”と呼びます。因みに、この正規部分群は”normal subgroup”と書きますが、”fHf⁻¹=Hが成立する”って、一見すれば当り前(normal)に見えますが。実はかなりややこしいですね。
正規部分群の重要性とは
そこで、正規部分群Hに対し、任意の左剰余類f₁Hとf₂Hを選び、1つずつ元を取り出し、演算してみます。つまり、f₁Hからf₁※h₁をf₂Hからf₂※h₂を取り出し、(f₁※h₁)※(f₂※h₂)を計算します。
h₁※f₂は右剰余類Hf₂の元より、左剰余類f₂Hのある元と一致するには、その元をf₂※h₃とすれば、(f₁※h₁)※(f₂※h₂)=f₁※(h₁※f₂)※h₂=f₁※f₂※h₃※h₂となる。
そこで、Hは群だからh₃※h₂はHの元です。故に、f₁※f₂※h₃※h₂は右剰余類(f₁※f₂)Hの元となる筈ですね。
以上より、(f₁H)※(f₂H)=(f₁※f₂)Hが成立します。左辺は、2つの左剰余類f₁Hとf₂Hの任意の元同士を演算して出来る元の全ての集合です。故にこの事は、左剰余類による区分けに対し、その区分けを一纏めにし、同じ演算に対して群が作られる事を意味します。
つまり、左剰余類による区分けの塊が同じ演算に対し群をなすんですね。
例えば、前回”その11”で述べた部分群H={e,R₂,S₁,S₂}⑦に対し左剰余類を作ります。
eH=R₂H=S₁H=S₂H={e,R₂,S₁,S₂}
R₁H=R₃H=S₃H=S₄H={R₁,R₃,S₃,S₄}となり、部分群Hによる区分けは2つになります。
この結果から、第1の区分け{e,R₂,S₁,S₂}のから取り出した元と第2の区分け{R₁,R₃,S₃,S₄}から取り出した元の演算は、どれも必ず第2の区分けの中の元となる。ややこしいですが、確かに乗積表で確認すれば、そうなってますね。
また、第2の区分けから取り出した任意の2個の演算は、必ず第1の区分けの元となる。
つまり、eH※eH=eH、eH※R₁H=R₁H、R₁H※eH=R₁H、R₁H※R₁H=eHと、区分けを塊とした群(eH、R₁H)は演算※に対し”可換”となります。
故に、Hが正規部分群であるとは、片方がHの元である様な演算は、Hの元をすり替える事で可換になる。
これは、”任意のfとHの任意の元h₁に対し、Hの元h₂が存在し、f※h₁=h₂※fとなる”事を意味します。つまり、fH=Hfという左剰余類と右剰余類が完全一致する”正規部分群”とは、Hの元のすり替えであり、fの演算順序の入れ替えでもあるんですね。
つまり、巡回群は可換(群)だから共役な部分群が存在し、その中でも自身同士が重なる共役な部分群を正規部分群と呼びますが、共役変換により不変な部分群とも言えます。
冒頭で、”正規部分群の左剰余類の成す群が巡回群(可換)になる時、方程式が四則とルートで解ける”と述べましたが。この様な(ガロア)系列が見つかる群こそが”簡単な群”であり、四則とべき根で解けるとなる。
解りやすく言えば、正規部分群の剰余類が巡回群つまり可換群になる事をガロアは発見し、このガロア系列という”簡単な群”を見つける時、四則とルートで解けると。
故に、4次方程式まではこの様な”簡単な”部分群の系列が存在し、5次方程式では存在しないんですね。
つまり、正規部分群がガロア理論の中で非常に重要な性質を備えてるとは、こういう事なんです。
以上、3次方程式のガロア理論を”正規部分群”という形で纏めましたが、まだこれだけでは、ガロア理論の本質が目に見える形で現れてきません。
そこで、次回は有理数体ではなく複素数体について述べたいと思います。
この複素数を理解する事で、ガロア理論が肉眼で見えるようになるんです。
ま、そこまでどれだけの人がついてこれるかが一番の問題ですが。本人も書いてる時は簡単に思えるんですけど、振り返ってみるとやはり難しいですね。
これじゃ、アクセ数が激減するのも無理はない(悲)。
この剰余類により対称性をズラすことで、群の要素は完全に重なるか否かですから、対称性をズラさなければ、全て重なることはなく群が区別できます。
つまり、群が区別されることで群の元の個数が決まる。部分群Hの元数が群Gの元数の約数になるとはそういうことですよね。事実、8個の元の群は区分されることで、その部分群の元数は1、2、4、8のどれかになります。
右剰余類もまったく同様ですが、今度は左剰余類と右剰余類がまったく重なる部分群が出てくるんですね。これを正規部分群というのですが、ここら辺は実に抽象的です。
一応何気なく気づいたことを補足しました。それと、コメント引用ありがとうございます。
巡回群の例で言えば、群Gは左剰余類の3個の要素を持つ部分群3つに分けられるということ。つまり群Gの元数が9つなら、部分群の元数は1か3か9ってわけだ。
この巡回群は可換(群)だから、共役な部分群が存在し、その中でも自身同士が重なる共役な部分群を正規部分群と呼ぶんだけど、共役変換により不変な部分群とも言える。
確かに、”全てのfに対し、fHf⁻¹=Hが成立する”って当り前のように見えるんだよね。だから正規(normal)と呼ぶんだけど。
そこで正規部分群の剰余類が巡回群つまり可換群になる事をガロアは発見し、このガロア系列という簡単な群こそが、四則とルートで方程式が解ける大きな鍵なんだよ。
なんだか抽象的な言い方になって悪いが、これが精一杯だ。あ、それにコメントありがとね。
ガロア理論って一見美しくロマンチックだけど、とても複雑で抽象的に映るのよね
今まで何とかついてこれたけど、ここで頓挫しそうだわ(・・;
書いてる時は解ってるつもりですが、後から見ると何だこりゃって感じなんです。
”対称性をズラさなければ、重なる事はなく群が区別され、群の元数が決まる”と、これが抜けてました。早速補足します。
いつもいつも助けてもらって有り難うです。
この正規部分群という当り前の簡単な群がガロア理論の中核なんですが、それに気付く顔ロアの発想は凡人にはとてもついていけません。
いつも貴重な補足有り難うです。
何とか自己同型まで進んだんですが、全てをっ理解してるかと言えば、自信ないですね。
だから何も心配しなくてもいいです。数学とは所詮抽象的な学問ですから。
次回は、複素数体についてなので、少しは解りやすいかなと思います。色々とご迷惑掛けてすんません。
これはアーベルが初めてやった手法だけど、ガロアは解の置換を体や群に置き換え、自己同型に繋げることで統一した解法を発見する。
解と係数の全てを添加した添加したガロア拡大体の自己同型こそがガロア群だとする金重明氏の説明のほうが判りやすいかもしれない。
転んだ君が「ガロアその2」で書いてたように、方程式の背後に解の置換群という構造が存在する事をガロアは見抜いた。
つまり、解を単純に求めるんではなく、解が導き出される構造をシンプルな形で求めた。
金重明氏は正規部分群を置換群として捉えている。故に、解の置き換えにより、係数から解を四則演算とべき根で表す事が可能となるとしたんだろう。故に、ガロア群が正規部分群の列(ガロア系列)になる時、その群は可解群になり、一般解を持つ。
こう見ると、金重明氏は限りなくアーベル寄りだし、小島寛之氏はガロア寄りなんだろう。
ただ、序盤は金重明氏の方が解り易かったんですが、3次元方程式の解法となると、家系図と群の対称性を使った小島寛之氏の方がずっと解り易い。
でもガロア群の概念でみれば、正規部分群を置換群とみなせば、解の置き換えから一般解を持つ事が導けますね。
解の置換の群に重きをおいた金氏と、解から作った自己同型の群の構造に重きをおいた小島氏とも言えつ様な気もします。
貴重なコメントとても参考になります。