終わりまで読もうか、どうしようかと迷うような本だった。
ただ序章で、設定やペットを含む展開が面白そうだと思い読み始めたが、読み通すのは少し苦痛だった。
たまたま集まった擬似家族のふれあいや、オウム、犬、それに野良猫も加わって、ペットたちがストーリーを豊かにしている。
ハードボイルドにわずかにミステリの味つけがあり、それにホラーチックな場面も加わって、味の濃い作品にはなっている。
ただ、肝心のバックヤードというか、こういう物語が生まれたそもそもの要素が説明不足で、導入過程が絵として見づらい。
読み進めば、理解できないこともないが、入り乱れた物語は、メインの人物たちはいいし、面白く作られてはいる。だが説明不足もあり、話の順序から言えば、もっと整理しなければ、とっかかりから面白さに入り込むことは難しい。
* * *
元警視庁公安部に勤めていた奥野侑也は、妻の冬子が殺害されたのを期に離職して、不安定な生活を送っていた。
そこに元上司の太田の口利きで公安の緒方という男が接触してくる。
遠い北の果ての「モーターモウテル・光芒」の管理人にならないかという勧めだった。侑也は何気なく現地の航空写真を見て、そこに写っている犬に気がつく。
侑也は一時ハンドラー(の手伝いといってるが)をしたことがあり、写っている犬の生気のない汚れ果てた姿を見つける。
ドーベルマンは賢い美しい犬のはずだった。彼はその犬に惹かれて仕事を引き受ける。犬はマクナイトという名で、痩せて、人に親しみを感じることもない痛ましい目をしていた。傷まで負い、重い鎖につながれた姿だった。
「モーターモウテル光芒」という変な名前のリゾート施設の管理人になり、少し離れたところにある4階建てのサイロに住むことになる、ところが着いてみると、そこには隼人という青年とふみという娘が同居するというのですでに部屋に入っていた。
国際的無政府主義者組織の通称「N」を追っている、緒方を指揮官とする公安組織があり、侑也たちは、その「N」誘い込むための餌らしい。(あれ?、なんだかなぁの始まり)
三人には常時監視がつき、「N」の娘だというふみは自称陸自出身の隼人が見張っている。
侑也はマクナイトの訓練を開始し、人間には不信感と無関心しか示さない元警察犬でも、いつか親しみの感情が表れることを期待している。
孤独な集まりの擬似家族は時が経つに従って気持ちが通うようになる。
その上侑也たちと生活を共にする間に、マクナイトは特に優秀な奇跡の犬だったことが分かる。
そして「ふみ」は子供のころからのペット、オウムの「どんちゃん」を連れていた。
公安の「N」作戦は、別の集団「スカベンジャー」という組織に狙われる。これは表沙汰に出来ない殺人事件の被害者を、闇に葬るのが目的で生まれたのではあるが、次第にオカルト好みの人間で組織された殺人集団になっていった(これもなんだか)
徐々に、隠されていた陰が明らかになり三つ巴の戦闘が始まる。
* * *
片手のない「隼人」、孤児院で育った文字の読めない「ふみ」。
モーテルのオーナーと支配人の恵造という二人の老人に好かれる「ふみ」
マクナイトという侑也が教育した奇跡の犬。
歌うオウム。
次第の人の輪が暖かく回りだすが。
偏屈な老人が心を開いて「ふみ」に文字を教えだす。
離れたの不良たちが開いていた闘犬賭博、そこの仲間に入りきれず、ついには侑也たちと運命を共にする赤城という青年は、マクナイトと侑也を見て「ダイナマイト」という名前をつけた子犬をペットにする。
なんと、マクナイトにダイナマイト
赤城らしいといえば言える(笑)
「マクナイト」は映画「ブラックホークダウン」のマクナイト中佐に因んだ名前だそうで、最初の飼い主がつけている(笑)
組織対侑也たち三人の闘い、これがハードボイルドだということなら、少し絡まった枝葉が多いようだが。
「約束の森」とはどういう意味だろう。
面白くなりそうな世界だが、なり切れないもどかしさがあった。
|