Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

ときめきに死す

2013-01-20 04:51:17 | コラム
東京にも雪が積もった先週―自分は某所で6時間くらい雪かきをやっていた。

力仕事なら任せてくれい! という雰囲気? を年中漂わせている人間として気合は入るものの、慣れない作業であるからして、思う通りにコトは運ばない、悪戦苦闘していると、デリバリーヘルスのドライバーであろう、ケバイけどモノスゴ美人な女子を降ろした中年男性が自分の動きをじっとみている。

見せもんじゃねぇぞ。

・・・と少しイライラしたが、見られると火がつくところがあるので、ちょっとムキになってスコップを動かした。

男は5分経ってもじっと見ているまま。

おいおい、こっちも疲れちゃうよ。早く消えてくれないかな・・・と思っていると、ようやくどこかに歩き始めた。

・・・って、あれ、車には戻らずに歩き始めるの?

まぁいいや、とにかく視線がなくなったのだから。


数分後―男は再び現れる。
今度こそ車に戻るのかと思いきや、自分に近づいてきて「ひとりで、たいへんだねぇ」といいながら缶コーヒーを差し出した。

「・・・」
「どうぞ」
「あっ、すんません」
「こんな広いところ、ひとりでやんの?」
「まぁ、力しか取り柄がないもので」

男は笑って車に戻っていった。

なんだバカヤロウ、ちょっと感動するじゃないか。

真夜中の町田で起こった、「ちょっといい話」であった。


さて。
雪かきを終えたから、あとは自宅に帰還するだけ―なのだが、路面がたいへんなことになっていて、チャリの運転は出来ない。
無理すれば出来ないこともないが、自分の身体より愛車のほうが大切・・・そう考えて、チャリを押して帰ることにした。

ふつうに歩けば90分の距離、しかしきょうは120分くらいを要するだろうな。
憂鬱だな、でもしょうがない、早いとこ帰って自慰でもして温まろう。


町田街道に出ると、さすがにチャリを運転するものは居なかった。
皆が歩いている、滑りそうになりながら。

自分はランニングシューズを履いていた。
通気性はいい、、、かもしれないが、良過ぎて足は氷のよう。
靴底も雪対策を取ったモノではないから滑り易いはずなのだが、チャリが支えになってくれて、うまいこと前進出来た。

なるほどなるほど、これはありがたいじゃないかと。


前方に、通勤途中と思われる女子がひとり。
といっても、そこまで若くなく、たぶん、自分のふたつ下くらいのひと。

彼女は恐る恐る歩き、5分に1度くらい滑りそうになっていた。
だから歩く速度が、異常に遅い。

何度か信号で止まるため追いつき、それとなく彼女の顔を拝んでみる。

『ときめきに死す』(84)のころの、樋口可南子に似ている。

タイプではないが、こういうひともいいな、、、と思った。
エラソーに。

べつに急ぐ必要もないので、彼女を追い抜くことをせず、敢えて後方を歩く。

寒さ冷たさを忘れるため、くだらない想像をする。

彼女、滑らないだろうか。
で、転倒する直前に自分が抱きとめ、「ありがとうございます、助かりました」なんて展開にならないのだろうか。
そんな風にときめく展開があっても、いいのではないか。

とか、なんとか。


そうしたら15分後―。
彼女はほんとうに滑ってしまい、自分の居る後方へと倒れる・・・直前に抱きとめようとしたものの、
まずはチャリを寝かせ、そのあと彼女、、、とやったものだから、少しだけ間に合わず、自分が彼女に触れたのは、小さな身体を地面に強打したあとだった。

「大丈夫ですか」

こういうときって、痛さよりも恥ずかしさのほうが勝ってしまい、ひとは笑いがち。

だからだろう、彼女も笑いながら「はい大丈夫です、すいません、すいません」などという。


彼女を起こし、服についた雪を払ってあげ、あらためて「痛いとこ、ないですか」。

「・・・大丈夫、みたいです」
「よかった、お互い、気をつけましょうね」
「(笑顔)はい」

歩き出すふたり。

「どちらまで?」
「駅前です」
「じゃあ、もう少しですね。ふつうに歩ければ、、、の話ですけれど」
「そうですねー」
「大丈夫ですよ、今度はちゃんとキャッチしますから」

このヒトコトがいけなかったのだろうか、
彼女はそのあとは滑ることもなく、つまり、ときめきは生まれず、無事に駅前まで辿り着いた―という、ひとの不幸を期待した、しょーもない自分、、、という話である。


※なんか無情に、、、じゃなくて、無性に聴きたくなったので




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明日のコラムは・・・

『つまり奥行きなのですよ、奥行き。』

コメント (2)
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