映画監督、プロデューサーとしてたしかな能力があっても、創りたいものを創ることが出来るとはかぎらない―という真理に、なんとなく気づいたのは、映画史をきちんと学び始めた20歳のころだったか。
それでも映画制作者は、夢をあきらめない。
あえていえば・・・ひととしては、けっこう潔くないタイプなんだ。
英国の奇人テリー・ギリアムが念願の企画、『ザ・マン・フー・キルド・ドン・キホーテ』(ドン・キホーテを殺した男)の撮影を終えたことが報じられた。
20年以上の映画ファンであれば、ピンとくるだろう。
17年前に企画された映画であり、ジョニー・デップや(当時の)ハニー、ヴァネッサ・パラディが出演する予定だった。
しかしロケ地のスペインが洪水の被害に遭ったり、主演のジャン・ロシュフォールが椎間板ヘルニアを患ったりして、撮影が度々中断され、資金が底を尽き始める。
ギリアムは制作中断を決意、ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラマンチャ』(2002)にその顛末が描かれている。
「どうやら、ギリアムがまた動き出したらしい」と報じられたのは、たしか去年だったと思う。
すでに撮り終えているのだからもう大丈夫だろうが、これで編集作業中に事故などがあり、結局は完成しなかった・・・となったら、これほど呪われている映画もないだろう。
ある企画に対して、映画ファンが出来ることといったら、「ひたすら待つ」ということだけである。
だからこそ、その作品が駄作であった場合、怒りも通常の2倍3倍になってしまうのだが・・・。
さて、ある企画が滞ってしまう理由には、ギリアムのようなトラブルのほかに、以下のようなケースもある。
(1)資金難
橋本忍は、『砂の器』(74)映画化のための資金を、約10年かけてかき集めたという。
(2)技術開発の問題
キューブリックは未来世界を描くにあたり、まだ映像技術が追いついていないことを理由に『A.I.』(2001)の企画をあきらめ、
先に『アイズ ワイド シャット』(99)を撮り、これが遺作になってしまった。
(3)企画が山のようにあり過ぎた
『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)や『沈黙』(2016)の制作が大幅に遅れた理由のひとつとして、スコセッシのもとに企画書が舞い込み過ぎている、、、というのがある。
人気者は、それはそれで辛いよね・・・って話だろうか。
スコセッシには『天国と地獄』(63)のリメイク企画も「かつて」あって、これは結局流れてしまった。
本人的にはあきらめがついているのだろうが、じつはファンのほうが「思い返してくれないかな」と思っている―そんなケースもあるのだった。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(223)』
それでも映画制作者は、夢をあきらめない。
あえていえば・・・ひととしては、けっこう潔くないタイプなんだ。
英国の奇人テリー・ギリアムが念願の企画、『ザ・マン・フー・キルド・ドン・キホーテ』(ドン・キホーテを殺した男)の撮影を終えたことが報じられた。
20年以上の映画ファンであれば、ピンとくるだろう。
17年前に企画された映画であり、ジョニー・デップや(当時の)ハニー、ヴァネッサ・パラディが出演する予定だった。
しかしロケ地のスペインが洪水の被害に遭ったり、主演のジャン・ロシュフォールが椎間板ヘルニアを患ったりして、撮影が度々中断され、資金が底を尽き始める。
ギリアムは制作中断を決意、ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラマンチャ』(2002)にその顛末が描かれている。
「どうやら、ギリアムがまた動き出したらしい」と報じられたのは、たしか去年だったと思う。
すでに撮り終えているのだからもう大丈夫だろうが、これで編集作業中に事故などがあり、結局は完成しなかった・・・となったら、これほど呪われている映画もないだろう。
ある企画に対して、映画ファンが出来ることといったら、「ひたすら待つ」ということだけである。
だからこそ、その作品が駄作であった場合、怒りも通常の2倍3倍になってしまうのだが・・・。
さて、ある企画が滞ってしまう理由には、ギリアムのようなトラブルのほかに、以下のようなケースもある。
(1)資金難
橋本忍は、『砂の器』(74)映画化のための資金を、約10年かけてかき集めたという。
(2)技術開発の問題
キューブリックは未来世界を描くにあたり、まだ映像技術が追いついていないことを理由に『A.I.』(2001)の企画をあきらめ、
先に『アイズ ワイド シャット』(99)を撮り、これが遺作になってしまった。
(3)企画が山のようにあり過ぎた
『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)や『沈黙』(2016)の制作が大幅に遅れた理由のひとつとして、スコセッシのもとに企画書が舞い込み過ぎている、、、というのがある。
人気者は、それはそれで辛いよね・・・って話だろうか。
スコセッシには『天国と地獄』(63)のリメイク企画も「かつて」あって、これは結局流れてしまった。
本人的にはあきらめがついているのだろうが、じつはファンのほうが「思い返してくれないかな」と思っている―そんなケースもあるのだった。
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明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(223)』