~ロバート・アルトマンのキャリア10傑~
(当然)新作が発表されることはないのに、なぜか「自分のなかでは」生きていると錯覚してしまう。
そんなアルトマン御大は、10年以上前に鬼籍に入っている。
享年81歳・・・なぜなんだろう、信じられないなぁ!!
アルトマン映画の一大特徴といえば、群像劇。
次に、シニカルな眼差し。
けれども生粋の冷笑家だったわけではなく、浮き沈みを経験した結果、そんなスタイルに「落ち着いた」といえるのかもしれない。
(1)『ショート・カッツ』(94)
レイモンド・カーヴァーによるいくつかの短編をヒントに群像劇を紡いでみせた、アルトマンの集大成。
PTAことポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』(99)は、あきらかにこの映画を参考にしている。
アンディ・マクドゥエル、マシュー・モディン、ティム・ロビンス、ジュリアン・ムーア、アン・アーチャー、ジェニファー・ジェイソン・リー、クリス・ペン、リリ・テイラー、マデリーン・ストー、フランシス・マクドーマンド、そしてトム・ウェイツ。
渋いオールスターキャスト全員が熱演、ベネチア映画祭で金獅子グランプリのほか、急遽「出演者全員賞」が授与されたのも納得の完成度。
(2)『ザ・プレイヤー』(92)
理想が現実に呑み込まれるさまを皮肉たっぷりに描き、ハリウッドの一側面を浮かび上がらせる。
巨大スタジオに翻弄された過去を持つアルトマンの、ルサンチマンで出来上がった映画なのかな。
それにしても、冒頭の長回しは気持ちよくって何度も観てしまう。
(3)『M★A★S★H マッシュ』(70)
朝鮮戦争を舞台にしたブラックコメディだが、アルトマンの映画のなかではクセが弱めで、初級篇にぴったりかもしれない。
事実かどうかは分からないが、劇中のなかで初めて「fuck」ということばが使われた映画と「されている」。
(4)『ナッシュビル』(75)
自分にとっての初アルトマン作品。
脚本さえしっかりしていれば群像劇は上手に撮れる・・・と思っていたのだが、いやいや、これは空間演出というのも大事な要素になってくるな、アルトマンは特殊な才能を持っていたのだ―ということが、この映画を観ればはっきり分かると思う。
(5)『ロング・グッドバイ』(73)
私立探偵フィリップ・マーロウが登場するレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説を映画化、独自のタッチが光り、主に作家のあいだで信奉者の多い傑作。
ちょっと笑ってしまうのが、チンピラの役で無名だったころのシュワ氏が登場しているところ。
(6)『ゴスフォード・パーク』(2001)
オスカー脚本賞に輝いた、群像ミステリー。
QTやPTAの映画にもいえることだが、多くの名優たちが全幅の信頼を寄せて物語の世界に身をゆだねている―だからこそ、観ている側も心地よくなれるのだろうね。
(7)『ストリーマーズ 若き兵士たちの物語』(83)
ベトナム戦争を描いた舞台劇を忠実に映画化。
日本では未公開だったものの、『ショート・カッツ』によるアルトマン再評価の波を受けて94年に劇場公開された。
それにしてもマシュー・モディンは、兵士の役が似合う。
(8)『プレタポルテ』(94)
服飾業界を描いた(これまた)群像劇。
けれども結末は予想どおりの展開で、ちょいとパンチが弱いかな。
(9)『クッキー・フォーチュン』(99)
世間体を気にし過ぎた一家が、老婆クッキーの自殺を殺人と偽装したことから起こる騒動を軽快に描く。
相変わらず全出演者が好演しているが、なかでもリヴ・タイラーとジュリアン・ムーアが素晴らしい。
(10)『ゴッホ』(90)
不遇の天才画家を、兄弟という視点で捉え直す。
アルトマンにしては正攻法だが、ファン・ゴッホを演じるティム・ロスの熱演により見応えは充分。
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明日のコラムは・・・
『Watches』
(当然)新作が発表されることはないのに、なぜか「自分のなかでは」生きていると錯覚してしまう。
そんなアルトマン御大は、10年以上前に鬼籍に入っている。
享年81歳・・・なぜなんだろう、信じられないなぁ!!
アルトマン映画の一大特徴といえば、群像劇。
次に、シニカルな眼差し。
けれども生粋の冷笑家だったわけではなく、浮き沈みを経験した結果、そんなスタイルに「落ち着いた」といえるのかもしれない。
(1)『ショート・カッツ』(94)
レイモンド・カーヴァーによるいくつかの短編をヒントに群像劇を紡いでみせた、アルトマンの集大成。
PTAことポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』(99)は、あきらかにこの映画を参考にしている。
アンディ・マクドゥエル、マシュー・モディン、ティム・ロビンス、ジュリアン・ムーア、アン・アーチャー、ジェニファー・ジェイソン・リー、クリス・ペン、リリ・テイラー、マデリーン・ストー、フランシス・マクドーマンド、そしてトム・ウェイツ。
渋いオールスターキャスト全員が熱演、ベネチア映画祭で金獅子グランプリのほか、急遽「出演者全員賞」が授与されたのも納得の完成度。
(2)『ザ・プレイヤー』(92)
理想が現実に呑み込まれるさまを皮肉たっぷりに描き、ハリウッドの一側面を浮かび上がらせる。
巨大スタジオに翻弄された過去を持つアルトマンの、ルサンチマンで出来上がった映画なのかな。
それにしても、冒頭の長回しは気持ちよくって何度も観てしまう。
(3)『M★A★S★H マッシュ』(70)
朝鮮戦争を舞台にしたブラックコメディだが、アルトマンの映画のなかではクセが弱めで、初級篇にぴったりかもしれない。
事実かどうかは分からないが、劇中のなかで初めて「fuck」ということばが使われた映画と「されている」。
(4)『ナッシュビル』(75)
自分にとっての初アルトマン作品。
脚本さえしっかりしていれば群像劇は上手に撮れる・・・と思っていたのだが、いやいや、これは空間演出というのも大事な要素になってくるな、アルトマンは特殊な才能を持っていたのだ―ということが、この映画を観ればはっきり分かると思う。
(5)『ロング・グッドバイ』(73)
私立探偵フィリップ・マーロウが登場するレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説を映画化、独自のタッチが光り、主に作家のあいだで信奉者の多い傑作。
ちょっと笑ってしまうのが、チンピラの役で無名だったころのシュワ氏が登場しているところ。
(6)『ゴスフォード・パーク』(2001)
オスカー脚本賞に輝いた、群像ミステリー。
QTやPTAの映画にもいえることだが、多くの名優たちが全幅の信頼を寄せて物語の世界に身をゆだねている―だからこそ、観ている側も心地よくなれるのだろうね。
(7)『ストリーマーズ 若き兵士たちの物語』(83)
ベトナム戦争を描いた舞台劇を忠実に映画化。
日本では未公開だったものの、『ショート・カッツ』によるアルトマン再評価の波を受けて94年に劇場公開された。
それにしてもマシュー・モディンは、兵士の役が似合う。
(8)『プレタポルテ』(94)
服飾業界を描いた(これまた)群像劇。
けれども結末は予想どおりの展開で、ちょいとパンチが弱いかな。
(9)『クッキー・フォーチュン』(99)
世間体を気にし過ぎた一家が、老婆クッキーの自殺を殺人と偽装したことから起こる騒動を軽快に描く。
相変わらず全出演者が好演しているが、なかでもリヴ・タイラーとジュリアン・ムーアが素晴らしい。
(10)『ゴッホ』(90)
不遇の天才画家を、兄弟という視点で捉え直す。
アルトマンにしては正攻法だが、ファン・ゴッホを演じるティム・ロスの熱演により見応えは充分。
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明日のコラムは・・・
『Watches』