Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

にっぽん女優列伝(251)左幸子

2021-04-09 00:10:00 | コラム
30年6月29日生まれ・2001年11月7日死去、享年71歳。
富山出身。

自分が映画好きではなく映画小僧であると自覚し、本格的に映画史や映画論などを学び始めたのは高校1年のころ。
そんな自分が最初に衝撃を受けた日本の女優が、左幸子(ひだり・さちこ)さんでした。

田中絹代や原節子、山田五十鈴や杉村春子ではなく、左さん。

このひとの二大傑作といえば、『にっぽん昆虫記』(63)と『飢餓海峡』(65)でしょう。


イマヘイと内田吐夢の期待に全力で応え、自らの性に翻弄される強烈なヒロインを熱演しました。

私生活では元旦那と実妹との不倫などゴタゴタはありましたが、
キャリアそのものが忘れられ過ぎており、再評価が望まれるひとりだと思っています。



<経歴>

妹は女優の左時枝。
元旦那は映画監督の羽仁進。

抜群の運動神経を活かし、体育教師をしながら「俳優座」の委託生として演技の基礎を学ぶ。

映画俳優デビュー作は、52年の『若き日のあやまち』。

『思春の泉』(53)、『大阪の宿』(54)、『黒い潮』(54)、『人生とんぼ返り』(55)、『青ヶ島の子供たち 女教師の記録』(55)、『神阪四郎の犯罪』(56)、『真昼の暗黒』(56)。

57年―川島雄三の快作『幕末太陽傳』で女郎おそめを好演、脚光を浴びる。
自分も、南田洋子より左さん派でしたね。

『誘惑』(57)、『暖流』(57)、『荷車の歌』(59)、『女経』(60)、『誰よりも君を愛す』(60)。

63年、『にっぽん昆虫記』に主演。
貧しい農村に生まれたヒロインが、やがて売春組織を立ち上げるまでの「昆虫のような生命力」を称えたイマヘイの傑作です。

左さんの熱演はもちろん、不思議な音響効果などイマヘイの才気が爆発していて、あのスコセッシ先生も大ファンとのこと。

ベルリン映画祭で女優賞を受賞した『彼女と彼』(63)、
『拝啓天皇陛下様』(63)、『無宿人別帳』(63)、『五瓣の椿』(64)、

そして65年―内田吐夢の労作『飢餓海峡』に出演。

三國連太郎扮する犯人の「爪」を大事にそうに持ちつづける娼婦・杉戸八重を演じる。

16mmフィルムを持ち込んだ内田監督の気迫がフィルムに焼き付いている、映画史に残る傑作です。



『かあちゃんと11人の子ども』(66)、『アンデスの花嫁』(66)、『女の一生』(67)、『春日和』(67)、『人生劇場 飛車角と吉良常』(68)、『軍旗はためく下に』(72)、『はだしのゲン』(76)。

五社協定の時代にあっても、それに縛られることなく俳優活動をつづけた強いひとで、
その芯があったからこそ、77年には『遠い一本の道』を監督、かなり早い段階で男女の格差をなくそうと戦っていました。

格好いいですね!

『若い人』(77)、『曽根崎心中』(78)、『鉄騎兵、跳んだ』(80)。

85年に胃癌が発覚し、以降、映画の仕事をセーブするようになりました。

『お墓と離婚』(93)、『スキヤキ』(95)、『ただひとたびの人』(95)。

2001年―今度は肺癌が見つかり、11月7日に死去。

享年71歳、いつか、伝記映画が制作されるほどのひと。だと思うのですがね!!


次回のにっぽん女優列伝は、広末涼子さんから。

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『プロテインマン』
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする