Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(390)

2021-09-15 00:10:00 | コラム
ずけ「い」→「い」かり

在日朝鮮人三世、李相日(り・そうじつ=イ・サンイル)は日本を代表する映画監督。



『69 sixty nine』(2004)や『スクラップ・ヘブン』(2005)などのインディーズで注目を受け、2006年の『フラガール』で大手系の映画をもこなせることを証明する。

大手系とは、簡単にいえば娯楽性と社会性の両面に「対応可能」ということ。

2010年、『悪人』で評価を決定的なものとする。
主演ふたり―妻夫木聡、深津絵里―の演技ばかり注目されたけれど、娯楽性と社会性を兼ね備えた李相日の演出に感心した映画好きも多かったはず。

そんな俊英監督が撮った『怒り』(2016)は、オールスター出演であったにも関わらず、あまり話題にならなかったことが疑問でならない傑作。


『悪人』同様、吉田修一の小説を原作とする群像劇+サスペンスの大作。

東京郊外で殺人事件が発生―未解決のまま1年が過ぎたころ、房総、東京、沖縄にそれぞれ「謎の男」が出現し、彼らは一様に「疑わしきところ」があって…という物語。

円熟期に突入したことをうかがわせる李相日の演出もさすが、しかしそれ以上に、俳優陣がみんな素晴らしいなと。

同性愛カップルを演じる妻夫木聡と綾野剛、


精神薄弱っぽい宮崎あおいと、彼女といい感じになる松山ケンイチ(もちろん、あおいちゃんパパを演じた渡辺謙も!)


そして沖縄編で強姦の被害に遭う広瀬すず、彼女はこれで新境地を開いたと思う。



どこかの映画祭が『ショート・カッツ』(93)の演者全員に「出演者全員賞」を贈ったことがあったと思うが、日本もそういうことすべきでは?と思った。


たしかに、きつくてしんどい物語がつづく。
李相日の映画のなかで最も娯楽性に乏しく、一般受けはしない映画かもしれない。
と同時に、最も野心に満ちた映画だとも思うのよね。

それなのに、あまりにも話題にならなかった。

残念無念、こういう映画が報われると、俳優たちもやる気になるはず、、、なんだけれどな!!





次回のしりとりは・・・
いか「り」→「り」いまじねーしょん。

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明日のコラムは・・・

『この程度で最長距離だそうです(^^;)』
コメント
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