本年度の映画総括、最終となる第四夜。
今宵は、いくつかの項目から「映画史の最新1年」を振り返ってみましょう。
…………………………………………
①イーストウッド映画の扱い
いま現在、最も映画界をざわつかせているのはイーストウッド御大の新作『陪審員2番』が「日本では劇場公開されず」配信スルーで済まされてしまうニュースだろう。
あくまでも「現時点では」の話。
自分も署名したが、「劇場公開を望む」運動が展開中なので、あるいは数週間の限定で劇場公開されるかもしれない。
『陪審員2番』は大作ではなく、物語も地味。
しかし米国では(オスカーへの目配せもあって)限定公開ののちに配信スタート、けれども、わが国はそれさえもないという。
比較的自由の効くシネコンの上映システムにおいて、偉人の新作をかける「隙」がないのかといえば、12月の新作映画ははっきりいって「弱い」。
そこに負けた、入り込めないと判断されたことのショックは、なかなかに大きいのであった。
②コッポラ映画の扱い
そこで想起されるのが、コッポラの『メガロポリス』である。
ワイナリー売って創った入魂のSFはなかなかに評判が悪く(^^;) 配給会社が積極的に手を上げることはなかった。
紆余曲折の末、米国では小規模公開に。
小規模であるにも関わらず、結果は大惨敗と大々的に報じられた。
イーストウッドもそうかもしれないが、
コッポラの映画を面白い・面白くないで判断しない信奉者は世界中に沢山存在するはずで、その惨敗の歴史でさえきっちり目撃したいと強く願う日本人だって少なくはないだろう。
そもそも日本は、コッポラ一家にやさしいはずなのだから。
しかし!
『陪審員2番』の流れを受けてしまうと、日本の配給会社が及び腰になってしまう可能性はおおいにある…と予想していたほうがショックが和らぐかもしれない、そんな風に弱気になってしまう映画小僧なのだった。
③リドリー・スコット映画の扱い
このふたりに比べると、スコット映画の恵まれかたはどうだろう。
そりゃ『グラディエーターII』はスクリーン映えする大作ではある、『陪審員2番』とはちがうのだ!!
いやでも、それじゃあ『メガロポリス』は?
関係者は「タイミングが…」などというが、いま劇場を賑わせているのは『室井慎次』と『インターステラー』再上映だったりするわけで、
前者なんて多くのひとはコケると予想していたわけでしょう、青島くんが(ちょっとしか)出てこないのだから。
でも、あのころ夢中になっていたひとが「年1で映画を観るとすれば、コレ!」と「室井さん」を選んだという事実がある、
どう転ぶか、なにが起こるか分からないのだから、すべての映画監督に同じようなチャンスを与えてくださいな。
④つづく外国映画の不振
このように、現在の映画界を論じようとすれば必ず配信の問題と向き合うこととなる。
名作の4K再上映や『ルックバック』の強気の興行が成功を収めるいっぽうで、外国映画とくにハリウッド産がどうにも振るわない。
私的15選のワンツーが米産(どちらもA24!!)であることから分かるとおり、小粒なものは健在ですよ、
しかしMCUも停滞気味であるし、
世界的なヒットを記録した『アバター』の続編も日本でだけはコケている。
日本の映画ファンは、ジェームズ・キャメロンの野心(米国)よりも、マ・ドンソクの安心感(韓国)を求めている気さえしてくる。
この独特な背景―全世界で成功しているUFCの興行が、日本でだけ成功とはいえなかったことに「すごく」似ている―が、確実にイーストウッドやコッポラの映画に影響を与えてしまったのだと思う。
興行は水物だというものね、配給会社だけを責めれば・攻めればいいってものでもないのかもしれない……。
最後に・・・
⑤米オスカーのヒトコマ
ウィル・スミスの一件を未だ許していない?ため、賞の結果を取り上げることはしなかったが、授賞式そのものは観ています。
今年話題になったのは、プレゼンターのキー・ホイ・クァン、ミシェル・ヨーが受けたの「かもしれない」アジア差別。
受賞者やその関係者が、彼・彼女が「そこに存在していないかのように」振る舞っている「ように見えた」という―指摘のとおりなのかもしれないし、そんなことはないのかもしれない。
さらにいえば、向こうのネット上では『オッペンハイマー』と『バービー』をコラージュして笑えるものとした「ミーム」が大流行した。
これもまた日本人をイヤな方向へと刺激し、ひょっとしたらこのあたりもハリウッドへの関心を弱くしている遠因になっているのかもしれない。
ほとんどすべての映画は、「現実の先」を見据えて前に進もうとしている。止まることを知らない。
けれどもそれを創っているヒトは、意外と「そのまんま」であったり、逆に「後退」することもあるだろう、
理想と現実を目の当たりにするかのようだが、その差が少しでも縮まればいいな。
映画ファンはもちろん、ジョージ・ミラーも阪元裕吾も、そのつもりで新作を放っているのだと思いますよ!!
…………………………………………
~2024年度劇場公開映画ベスト15~
第01位『アイアンクロー』
第02位『関心領域』
第03位『あんのこと』
第04位『どうすればよかったか?』
第05位『ルックバック』
第06位『悪は存在しない』
第07位『瞳をとじて』
第08位『シビル・ウォー』
第09位『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
第10位『辰巳』
第11位『マッドマックス:フュリオサ』
第12位『コンセント 同意』
第13位『侍タイムスリッパー』
第14位『水深ゼロメートルから』
第15位『オッペンハイマー』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『1年を「くいもん」で振り返る^^』
今宵は、いくつかの項目から「映画史の最新1年」を振り返ってみましょう。
…………………………………………
①イーストウッド映画の扱い
いま現在、最も映画界をざわつかせているのはイーストウッド御大の新作『陪審員2番』が「日本では劇場公開されず」配信スルーで済まされてしまうニュースだろう。
あくまでも「現時点では」の話。
自分も署名したが、「劇場公開を望む」運動が展開中なので、あるいは数週間の限定で劇場公開されるかもしれない。
『陪審員2番』は大作ではなく、物語も地味。
しかし米国では(オスカーへの目配せもあって)限定公開ののちに配信スタート、けれども、わが国はそれさえもないという。
比較的自由の効くシネコンの上映システムにおいて、偉人の新作をかける「隙」がないのかといえば、12月の新作映画ははっきりいって「弱い」。
そこに負けた、入り込めないと判断されたことのショックは、なかなかに大きいのであった。
②コッポラ映画の扱い
そこで想起されるのが、コッポラの『メガロポリス』である。
ワイナリー売って創った入魂のSFはなかなかに評判が悪く(^^;) 配給会社が積極的に手を上げることはなかった。
紆余曲折の末、米国では小規模公開に。
小規模であるにも関わらず、結果は大惨敗と大々的に報じられた。
イーストウッドもそうかもしれないが、
コッポラの映画を面白い・面白くないで判断しない信奉者は世界中に沢山存在するはずで、その惨敗の歴史でさえきっちり目撃したいと強く願う日本人だって少なくはないだろう。
そもそも日本は、コッポラ一家にやさしいはずなのだから。
しかし!
『陪審員2番』の流れを受けてしまうと、日本の配給会社が及び腰になってしまう可能性はおおいにある…と予想していたほうがショックが和らぐかもしれない、そんな風に弱気になってしまう映画小僧なのだった。
③リドリー・スコット映画の扱い
このふたりに比べると、スコット映画の恵まれかたはどうだろう。
そりゃ『グラディエーターII』はスクリーン映えする大作ではある、『陪審員2番』とはちがうのだ!!
いやでも、それじゃあ『メガロポリス』は?
関係者は「タイミングが…」などというが、いま劇場を賑わせているのは『室井慎次』と『インターステラー』再上映だったりするわけで、
前者なんて多くのひとはコケると予想していたわけでしょう、青島くんが(ちょっとしか)出てこないのだから。
でも、あのころ夢中になっていたひとが「年1で映画を観るとすれば、コレ!」と「室井さん」を選んだという事実がある、
どう転ぶか、なにが起こるか分からないのだから、すべての映画監督に同じようなチャンスを与えてくださいな。
④つづく外国映画の不振
このように、現在の映画界を論じようとすれば必ず配信の問題と向き合うこととなる。
名作の4K再上映や『ルックバック』の強気の興行が成功を収めるいっぽうで、外国映画とくにハリウッド産がどうにも振るわない。
私的15選のワンツーが米産(どちらもA24!!)であることから分かるとおり、小粒なものは健在ですよ、
しかしMCUも停滞気味であるし、
世界的なヒットを記録した『アバター』の続編も日本でだけはコケている。
日本の映画ファンは、ジェームズ・キャメロンの野心(米国)よりも、マ・ドンソクの安心感(韓国)を求めている気さえしてくる。
この独特な背景―全世界で成功しているUFCの興行が、日本でだけ成功とはいえなかったことに「すごく」似ている―が、確実にイーストウッドやコッポラの映画に影響を与えてしまったのだと思う。
興行は水物だというものね、配給会社だけを責めれば・攻めればいいってものでもないのかもしれない……。
最後に・・・
⑤米オスカーのヒトコマ
ウィル・スミスの一件を未だ許していない?ため、賞の結果を取り上げることはしなかったが、授賞式そのものは観ています。
今年話題になったのは、プレゼンターのキー・ホイ・クァン、ミシェル・ヨーが受けたの「かもしれない」アジア差別。
受賞者やその関係者が、彼・彼女が「そこに存在していないかのように」振る舞っている「ように見えた」という―指摘のとおりなのかもしれないし、そんなことはないのかもしれない。
さらにいえば、向こうのネット上では『オッペンハイマー』と『バービー』をコラージュして笑えるものとした「ミーム」が大流行した。
これもまた日本人をイヤな方向へと刺激し、ひょっとしたらこのあたりもハリウッドへの関心を弱くしている遠因になっているのかもしれない。
ほとんどすべての映画は、「現実の先」を見据えて前に進もうとしている。止まることを知らない。
けれどもそれを創っているヒトは、意外と「そのまんま」であったり、逆に「後退」することもあるだろう、
理想と現実を目の当たりにするかのようだが、その差が少しでも縮まればいいな。
映画ファンはもちろん、ジョージ・ミラーも阪元裕吾も、そのつもりで新作を放っているのだと思いますよ!!
…………………………………………
~2024年度劇場公開映画ベスト15~
第01位『アイアンクロー』
第02位『関心領域』
第03位『あんのこと』
第04位『どうすればよかったか?』
第05位『ルックバック』
第06位『悪は存在しない』
第07位『瞳をとじて』
第08位『シビル・ウォー』
第09位『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
第10位『辰巳』
第11位『マッドマックス:フュリオサ』
第12位『コンセント 同意』
第13位『侍タイムスリッパー』
第14位『水深ゼロメートルから』
第15位『オッペンハイマー』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『1年を「くいもん」で振り返る^^』