暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

楽茶碗に恋して・・・茶道具こわい in Kyoto Ⅱ

2014年12月27日 | 茶道具
                     御ちゃわん屋の暖簾が遠く感じられて・・・

茶道具こわい in Kyoto の続編です。
京都へ家うつりして以来、何度か訪れた楽美術館と楽美術館茶会
特に楽美術館茶会では、所蔵の楽茶碗で薄茶を頂き、楽茶碗を手に取って鑑賞する機会を得ました。
席主の15代・楽吉左衛門氏の話が興味深く、歴代の楽茶碗の魅力や特徴、また自らの体験を通して作り手の葛藤や思いを伝える話に毎回魅了されました。

そんなこともあって、「当代の楽茶碗が欲しい・・」と憧れたのです。
でも、とても高価なので(私にとって)半ばあきれながら、
京都で最初の友人TYさんに相談しました。
「当代の楽茶碗を私が手に入れる方法があるかしら?」
すると
「1つだけあるとしたら、高島屋のオークションかしら?
 茶碗がでるとは限らないけれど、誰でも入札できるので可能性はありますよ」
「う~ん・・・・!」
身分が釣り合わない恋のようなもの、入手は無理とあきらめて、
楽茶碗は鑑賞するだけの近くて遠い存在になりました。



  石碑「楽焼窯元 楽吉左衛門宅」

その後、楽美術館茶会や京都の茶会で楽茶碗でお茶を頂き、楽焼の茶道具を鑑賞していくうちに、4代一入と5代宗入の作品に心惹かれるようになりました。
元々、長次郎の静謐な、素を感じる佇まいの茶碗が好きだったので・・。

現在、楽美術館で「特別展・宗入生誕350年記念Ⅱ 初源への視線 -楽家五代宗入と三代道入、四代一入、九代了入、十五代吉左衛門-」が開催中です。
(期間 2014年12月10日~2015年3月1日)


楽美術館茶会の日に(12月14日)


12月の或る日、茶友Sさんから電話があり、
「好い黒楽茶碗の出物があるので、少し遠方ですが見にいらっしゃいませんか?
 茶道具大好きの友人Jさんと一緒に道具屋さんへご案内します・・・」

思いがけないお誘いでしたが、なにかご縁を感じて○○市へ向いました。
電車を降りると、師走の冷たい風が吹く中、Sさんが出迎えてくださり、Jさん夫妻の車で道具屋さんへ一目参です。


   師走の京都駅
 

最初のA店で4代一入、10代旦入、14代覚入の黒楽茶碗を見せて頂きました。
どれも箱書の確かなものばかりで、私は4代一入の黒楽が気に入りましたが、
とても買える値段ではありません・・・ 

心を奮い立たせて次のB店へ、併設の茶室で6代左入と7代長入の黒楽を見ました。
特に左入の茶碗は内側に小宇宙の景色が感じられ好かったのですが、小振りで濃茶2~3人がやっとの大きさでした。
出来たら4~5人分が点てれる茶碗が希望です・・。




最後のC店には4代一入の黒楽茶碗が一点だけありました。
茶友Sさんは、私の一入好みを知らずに
「この楽茶碗をどうかしら?」と連絡して来てくださったのです。
・・・出逢った時から、茶碗が私を待っていてくれたように思われ、
箱書も確かで、お値段も納得のいくものでした。
決まる時って、驚くほどスムースに行くものなんですね。
一緒にまわって、アドバイスしてくださったSさんとJさん夫妻に感謝です!


  灑雪庵のドア飾り

こうして、一入の茶碗が灑雪庵へやってきました。
自分へのクリスマスプレゼントですが、何よりの京都の記念品と喜んでいます。
ただ、問題が一つ・・・主人になかなか言い出せませんの! 



        茶道具こわい in Kyoto へ戻る


茶道具こわい in Kyoto

2014年12月18日 | 茶道具
                         雪の金閣寺

ぶるっ!お寒いですね。
京都では昨夜から雪になりました。   

ずっーと前に書いた「茶道具こわい」の京都編です。
京都に住みだしてから年金生活となったので茶道具購入をあきらめていました。
それでも茶道具との嬉しいご縁があり、いそいそと書き留めておきます。

今年10月、Sさんの名残りの茶事へ招かれたあとのある日、
道具屋さんのちらしに藤村庸軒好みの「凡鳥棗」(写し)の出物がありました。
庸軒流の隆盛に力を尽くされた、横浜在住の伊藤庸庵氏(故人?)が写しをいくつか作ったそうで、そのことをSさんから伺っていたのです。
早速、道具屋さんへ電話をすると、すでに売れていてご縁がなかったみたいです。


  
    姫路・好古園                   凡鳥棗


あきらめきれず、Sさんへ電話しました。
Sさん所有の伊藤庸庵箱書の「凡鳥棗」をお譲りいただけないか・・・と。
すると、おもいがけない言葉が返ってきました。
「「凡鳥棗」を二つ持っていても仕方がないので、横浜へ帰る暁庵さんに
 伊藤庸庵ゆかりの凡鳥棗を使ってもらいたいと思い、電話するところでした」
「えっ・・・!(思わず絶句)」
二人で同じことを考えていたのです。

後日、Sさんから「凡鳥棗」が手渡されました。
「アリガトウ・・・大事に使います」
お返しに平棗を差し上げると、とても喜んでくださって二人ともハッピーでした。
横浜へ帰ったら、小林芙佐子先生に仕覆を注文して、○○茶会にどうかしら・・・
と今から楽しみにしています。


    ギャリラー池川               「茶道」須田剋太書


11月の或る日、Kさんから永らくお借りしていた茶入をお返ししました。
京都在住中永久貸与とのことで送られてきたのです。
「濃茶をしないから使ってください。茶入も喜ぶと思います」
でも、この茶入はKさんが崇拝している揖保川焼の池川みどり氏作ですので
横浜へ持ち帰ることもできず、御礼の薄器と一緒にお返ししました。

すると、またKさんから
「ステキな贈り物をありがとう。
とても気に入り、取り合わせをあれこれ考え、愉しんでいます。
もう一つ、濃茶をしていた頃に購入した茶入がありました。
代わりに送りますので、どうぞ使ってあげてください・・・」

思いがけず、ステキな茶入が二つの着物(仕覆)と共に送られてきました。
「アリガトウ・・・大事に使います」

             
                クリスマスツリー 京都駅ビル

茶道具が取り持つ、思い出すたびに心がウルウルするご縁でした。
今回は「茶道具こわい」より「茶道具やさし」でしたが、次回はこわい?話かも。                                   

         茶道具こわい in Kyoto Ⅱ へ


岩渕祐二さんの工房へ

2014年08月13日 | 茶道具
                (お盆ですね・・・法金剛院の蓮)          

7月に岩渕祐二さんの工房を1年ぶりに訪ねました。

岩淵祐二さんは漆芸を専門とする若手工芸作家さんです。
裏千家の月刊誌「淡交」平成25年8月号にインタビュー記事が
掲載されたので、ご存知の方も多いかと思います。

   
             訪問前に安楽寺の鹿ケ谷カボチャ供養へ      

うだるように暑い7月25日でした。
修理を依頼していた豊楽焼の茶巾筒と茶筅筒を取りに行きがてら
工房見学をお願いしたのです。
丸太町通のバス停でSさんとYさんと待ち合わせ、14時頃工房へ着きました。

玄関脇が応接と作品展示の店の間になっていて、
早速、冷たい麦茶とお菓子をご馳走になり、一息つきました。
お菓子は水牡丹(塩芳軒製)、黒漆器の皿に映えています。
もちろん岩渕祐二作、さりげなく載せるものを惹き立てていました。

           

いろいろな形や塗の棗、菓子皿、盆、縁高、建水・・・
作品を見せて頂きながら、複雑な工程、デザインの妙、作家のこだわりを
伺うことができ、改めて漆器が持つ奥深さを知る機会になりました。

思えば、祇園祭の曳き初めの日に高島屋の挑交会茶道具展で
岩渕さんに初めてお逢いしました

その時に目を輝かせて
 「この黒中棗は北村美術館所蔵の棗を写しているのですが、
  めったに展示されないので一部完成されていません・・・」
形も雰囲気も好い、この中棗で包み帛紗を・・と想像してみました。

完成した中棗と2年ぶりの再会です。
帛紗をお借りして包み帛紗を試みましたが、厚手の帛紗なので
最後のひと結びが上手く結べません。
小棗だとうまくいくのですが、小棗では濃茶3人分は無理ですし・・・。
それで、今回は保留としました。

            

同行のお二人は、特注の棗や盆の修理をお尋ねしています。
一段落したので、作業場を見せて頂きました。
新しい作品たち、削りかけの木地の大棗、十年がかりで仕上げている作品など、
地道な作業の積み重ねと日々の葛藤から岩渕作品が産まれるのだと実感しました。

私たちが訪問する数日前から「かぶれ」を用心して、「うるし」を使う作業を
控えてくださったことを知り、一同、感激しました。

最後に渡された豊楽焼の二品について、岩淵さんから嬉しいメールが・・・。

   豊楽の修理では、大変お待たせしまして、お詫び申し上げます
   柔らかい素地のものですので 壊れやすいものではありますが
   機能一辺倒では生まれない味わいがあのお道具にはありますね。

とてもきれいに仕上がっていてこちらにも感激しました。
八月の茶事で、茶籠で薄茶を差し上げるのが楽しみです。

岩渕祐二さん、いろいろありがとうございました!

                                 


本 「裂がつつむ」

2014年04月25日 | 茶道具
・・・ちょっと落ち込んでいました。

散歩の途中、歩道近くの分離帯につまづいて、なんと顔面制動・・・。
とっさに手が出ず、顔面を目から火が出るほど打ちつけました。
それで、顔の左側が打ち身と擦り傷でお岩さん状態です。
4月29日の「京都の春を惜しむ茶会」までに治らないかしら?
治らないまでも傷を目立たなくしたい・・・と祈っています。 

そんな折に、ステキな御本「裂がつつむ」が届きました。
横浜に居るときに仕覆をお習いしていた小林芙佐子先生からです。
更紗の表紙を見た途端、うっとり・・・先生の熱い思いが伝わってきます。

           

早速、電話でお礼を申し上げると、
「なんか恥ずかしいのですが、あなたにも見ていただきたくて・・・」
先生らしい謙虚なお言葉が返ってきました。

「裂がつつむ」には20年余、仕覆にひたすら向き合ってこられた、
小林芙佐子先生の確かな足跡とゆるぎない信念を感じました。

           

どの頁の仕覆も垂涎の素晴らしい裂地で作られ、
茶道具たちを優しく温かく包んでいます。
茶入や茶碗だけでなく、茶籠一揃い、茶杓一式、香合、花入など
裂と茶道具が生み出すハーモニーが一段と茶道具を惹き立てています。
写真から中の茶道具を想像するのも愉しいです。

           

「お茶の道具は、持ち主の愛情で仕覆や箱が調えられて
 はじめて茶道具から”お道具”になるのよ」
・・・そんな先生のお話を、本を見ながら思い出しています。

古布や古い着物の裂地もあり、いわゆる名物裂ばかりではないのですが、
そこに先生のセンスと個性が輝いていて、素敵です。

            

「自分の茶事とは・・・? 
 自分のしたい茶事をしているの?」
・・・ふらふらと迷い、自問自答していた時だったので
ガーンと一発、殴られたような、愛の鞭を感じました。
(先生を見習って、迷いながらでも前へ進もう・・・っと)

「裂がつつむ」は非売品とのこと。
大事な記念の御本を大切に愛読するとともに、一人でも多くの方に
見て頂けたら・・・と思っています(貸出、大歓迎です)。

                               


虫明焼の茶碗

2013年10月30日 | 茶道具

10月4日~6日まで開催された京都大骨董市へ出かけた時のことです。

ある店で穢い箱に入った侘びた風情の茶碗が目に留まりました。
伯庵茶碗のような枇杷色の肌、とても薄づくりで、小振り、
葦に雁の鉄絵が画かれています。

高台の中に彫られた字が読めなかったので尋ねてみました。
「この字は何と書かれているのかしら?」
「むしあけと真葛・・・と書かれています。
 これは富山県の某旧家の倉の買い取り品です。
 箱はなく、合せ箱ですが蓋がありません。
 袋はありますが、この通りボロボロです・・・」

「これが虫明焼の茶碗・・・」
実は、伊木三猿斎の虫明焼に密かにあこがれていたのですが、
なかなかご縁がありませんでした。
・・・「むしあけ」と「真葛」の印銘も気に入って、
「今度の秋の茶会へどうかしら?」と購入を決めました。




「むしあけ」と「真葛」の印銘が気になって
茶道大辞典(淡交社)で調べてみると、

  虫明焼は、岡山県邑久(おく)町虫明の陶磁器。
  寛政年間(1789-1801)岡山藩主池田候の家老伊木家の御庭焼
  として創設され、二代高橋道八も招かれて作陶しましたが、
  天保13年(1842)廃窯(池ノ奥窯)。

  弘化4年(1847)伊木三猿斎は京都から初代・清風与平を招いて
  再び開窯(間口釜)しました。
  文久3年(1863)、二代・与平は千少庵二百五十回忌のため
  「少庵伝来三島角水指」(玄々斎箱)を作陶しました。
  これにより虫明焼の名前が世に広まったそうです。
  清風父子の作品には染付・金襴手・赤絵・三島などがあり、
  印銘は「琴浦」「清風」を用いています。

  宮川長造も招かれ仁清写しを残し、印銘は「むしあけ」「真葛」。
  長造の四男・宮川香山も明治初年に作陶し、作品は主に鉄絵の御本写し、
  三猿斎好みの十二か月茶碗や五節句茶碗が有名です。

  
  文久3年、間口窯は森角太郎に譲られ、角太郎とその子香洲は香山から
  陶技を学び、主に茶器つくり、印銘は「むしあけ」「香洲」「明浦」。
  現在は黒井・岡本・横山家が陶業を続けています。





ネットを調べていると、「虫明焼の栞」というHPに行き当たりました。
虫明焼を熱愛していると思われる蓼純氏の論説や参考書などが満載。
「虫明焼にはニセモノが多い」というショックな話もありましたが、
「今月の抹茶茶椀」「「蓼純Collection」で貴重な写真が掲載されていて
興味のある方にはお薦めのHPです。

10月10日が「虫明焼の栞」を始めて10周年だそうで、
「虫明焼の栞」10周年記念プレゼントに厚かましくも応募しました。
「バンザーイ、ありがとうございます!」
抽選に当たり、プレゼントの「虫明焼茶碗」が届きました。

雲のようにたなびく、白い刷毛目の混じり具合が美しい平茶碗です。
「むしあけ」の印が高台内にありますが、作者は ? 。
虫明焼の初心者なので、これから本物やニセモノ(?)をたくさん観て、
感性を磨きたいものです。

二つの虫明焼茶碗、
まさに秋の茶会のために私の手元にやってきたようで、
せっせと抹茶を点てて使っています。