暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

はつなつのかぜ  川上澄生・木版画の世界

2010年05月01日 | 閑話休題
4月29日に世田谷美術館へ出かけました。
世田谷美術館に収蔵されている北大路魯山人の
陶器や書が見たくなり急に出かけたのですが、
常設展はないそうで少々がっかり。

開催中の川上澄生の「木版画の世界」展を見てきました。
初めて知る名前でしたが、横浜市紅葉坂に生をうけて
東京・青山で育った川上澄生(1895-1972)は
宇都宮で旧制中学の教員をしながら木版画と詩の創作を続け、
「心の遊び」の世界を独特の画風で表現しています。
木版画に添えられている詩に強く惹かれました。

初期の作品「黒き猫」(1922年頃、27歳)が先ず印象に残り、
幼い日に愛読した「グリム童話」や「アンデルセン童話」の
挿絵を懐かしく思い出しました。
(・・進歩ないけれど、あの本たちと再会したい・・・)

代表作の一つ「初夏の風」(1926年31歳)が魅力的です。
22歳の川上は終生にわたり思いを寄せ続ける女性に出会います。
その女性に受け入れてもらえず失恋に終わったのですが、
その思いは見事な作品「初夏の風」に結実していました。

最も川上の息づかいを感じさせる作品で、
薄緑色の「はつなつのかぜ」がやさしく、狂おしく
画面いっぱいに踊っていて、マリリン・モンローばりに
淡桃色のドレスの裾を吹き上げています。

  「初夏の風」(詩の部分)
    かぜとなりたや
    はつなつのかぜとなりたや
    かのひとのまへにはだかり

    かのひとのうしろふりふく
    はつなつの はつなつの
    かぜとなりたや

                

八重桜は盛りを過ぎていましたが、
新緑の若葉が溢れる砧公園は白とピンクの花水木が満開。
「はつなつのかぜ」が吹いていました。

                        

  写真は「新緑の砧公園」と「花水木」です。

追記
 世田谷美術館の川上澄生・木版画の世界は5月9日まで。