暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶事 「Spiral in Summer」-1

2014年09月05日 | 思い出の茶事  京都編
                (満開の木槿  季節の花300)

葉月も終わる31日にYさまの正午の茶事へ招かれました。

相客のKさまやSさまから伺っていた通り、
ご亭主のほんわかとした雰囲気に心温まる、素敵なお茶事だったのですが、
なにか、新鮮な衝撃(サプライズ?)が残り、今なお心を騒がしています・・・。

いったい、何故なのでしょう?
もう一度、心を真っ新にして思い出してみました。

                    
                 (オミナエシ  季節の花300)

それは腹鼓を打った懐石後の炭手前から始まりました。

籠の平炭斗は見立て。
オーロラを見にアラスカへ行ったときに出合った、
白樺で編んだイヌイットのバッグでした。

炭斗に続いて、背の高い香合と灰器が同時に持ち出されました。
手に余るほどの香合は、前田酒店お別れ茶会の鶉香合以来なので
嬉しくってワクワクしました。

あとで拝見すると、12センチほどの銅鐸(どうたく)でした。
銅鐸は弥生時代に製造された釣鐘型の青銅器です。

ご亭主に勧められて、振ってみると、高音の鐘の音がします。
「当てずっぽうでごめんなさい・・・韓国の銅鐸でしょうか?
 喚鐘のような高音だったので・・・」
すると、
「滋賀県野洲市の「銅鐸博物館」で購入したもので、
 日本で出土した一番小さな銅鐸の写しです。
 鐘のように楽器に使われていたと云われています。
 下の香受けは陶器で、茶友が手びねりで作ってくれました」

銅鐸を香合に使うなんて! アイディアが愉しく、ステキです。

             
           袈裟襷文銅鐸 浜松市出土(東京国立博物館蔵)

初炭が終わって、主菓子が銘々皿で運ばれました。
透明の葛が乗せられた菓子を一口頂いて、
「こっ、これは?」 
小豆の味わいが幽かにあるものの、独特の甘味や食感に全く覚えがありません。

濃茶になってお尋ねすると、
「デーツを基に、茹で小豆を混ぜて漉し、成型した自製の菓子です。
 Kさまが砂糖を断っていると伺っていましたので、
 全て天然の甘味を使ってみましたが、如何でしたか?」

「デーツを知らなかったので、初めて食べる甘味でした。
 干し柿でもレーズンでもなく、濃厚で、不思議な美味しさです・・」と私。

デーツはナツメヤシの果実(ドライフルーツ)です。
北アフリカや中東で栽培され、シロップ、ジャム、菓子に加工され、
日本でも輸入され、大型スーパーで見かけるようになったとか。

             
                      「デーツ」
 
菓子銘をお尋ねすると
Spiral Summer Version」(スパイラル サマー バージョン)
「えっ! スパイ・・??」 

「Spiral(スパイラル)」とは、
コンピューターのシステムを構築するときの手法の1つで、
螺旋(スパイラル)のように少しずつ上を目指して進んで行く・・・
そんな意味が込められていて、ご亭主お気に入りの言葉(手法)でした。

きっとこの次の菓子「Spiral」は、さらにバージョンアップしていることでしょう。

                                      

           茶事 「Spiral in Summer」-2へつづく