「點笑」(てんしょう)という御軸を持っています。
「笑いを点(點)てる・・・笑いを絶やさないこと」という意味だそうです。
東大寺別当・清水公照師の御筆です。ちょっと読み難いのですが、一目で気に入り意味を知って益々気に入っています。
茶事や茶会の時に主客共にニコニコと和やかに過ごして頂ければ・・・そんな思いでこの御軸を掛けています。
その昔、敬愛する茶事の師匠から「茶事(茶の湯)」についていろいろお教えいただきました。今なお、いくつかのお教えが耳に残っています・・・。
〇 茶事では心を込めて・・は当たり前ですが、その思いをどのように表現するかが大切
〇 茶事には不協和音が必要だ
〇 自分のお茶を心がけるように
〇 茶事には笑いが大事、笑いのある茶事を心がけるように
〇 茶道具は自分で買うこと。自分で買って使ってみて、自分の眼(センス)を養いなさい。
数々の有難いお教えが昨日のことのように思い出されますが、一番難しいと思ったのが「笑い」でした。
「笑い」のテーマは難しく、せめてにこやかに笑顔を絶やさずに・・・を心がけています。
時折、緊張のあまりお顔が険しくなっているお客さまがいらっしゃると、何とかお帰りまでにお顔がやわらぎ、笑顔になって欲しい・・・と、ついおもてなしに力が入ります。
ある茶事へお招きされた時のこと・・・帰ってから気になったことがありました。
その方のおもてなしはとてもお心がこもっていて、しかもその方らしい個性がにじみ出ているので、いつも楽しみしていました。
コロナもあり久しぶりにお会いしたのですが、最後まで笑顔が無かったように感じられたのです・・・もちろん、おもてなしは非の打ち所がないくらい素晴らしく、連客も素敵な方でした。
人間ってとても正直で、特に茶事では亭主のあり様が全て明るみに出てしまいます。
理由はわかりませんし、わかる必要もありませんが、とても良い経験だったと思っています。
どんな理由であれ、笑顔が出ない時には人をお招きするものではない、してはいけないのだ・・・と心に刻みました。
大声で笑い合うほどでなくっても、ニコニコと穏やかな気持ちで愉しく茶事をしたいですし、お客として笑顔を心がけてお伺いしたいと思います。
(雨後の大欅と水たまり・・・台風10号が来ています)