ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

ミステリー作家の米澤穂信さんの短編小説集「満願」を読み終えました

2015年01月17日 | 
 人気ミステリー作家の米澤穂信(よねざわほのぶ)さんの短編小説集「満願」を読み終えました。

 この単行本は、2014年3月20日に新潮社が発行しました。東京都内の大型書店に行った際に、この単行本が平積み展示されていて、売れている(あるいは売りたい)本だと思いました。購入した単行本は、17刷でした。約10カ月かけて数10万冊冊の売れ行きと推定できます。



 今回購入した動機は、1月に新聞紙に掲載された新潮社の広告のコピーが、「『満願』は年末の各社ミステリランキングで3冠を達成。 早川書房の『ミステリが読みたい!』、文藝春秋の『週刊文春ミステリーベスト10』、宝島社の『このミステリーがすごい!』で、すべて第一位をとった」と書かれていたからです。これが頭の片隅に残り、購入しました。

 以下は、ネタばらしです。この短編集は、「夜警」「死人宿」「柘榴」「万灯」「関守」「満願」という6編の短編が集められています。

 個人的には「夜警」「万灯」が面白く、気に入りました。逆に、「死人宿」「関守」はつまらないと感じました。

 最初の「夜警」は新人警察官が殉職した話です。冒頭の短い文書の中に、先輩警察官が今回殉職した新人警察官をどう見ていたのか、端的に表現されていて、描写力などの文章のうまさを感じます。伏線も巧みで、良くできたミステリーです。

 「万灯」は殺人を犯した犯人が“裁かれている”と自覚するシーンから始まります。これがなかなかの伏線です。専門商社の担当者がバングラデシュの支社で天然ガス事業の商談をまとめるために苦心し、あるところで一線を超えてしまう話です。描写力が優れていると感じる文章が続きます。最後のオチは、想像を超えるものです。

 「死人宿」は、ストーリーはありますが、主人公とその“元恋人”の気持ちのぶつかりや流れがよく分かりませんでした。二人の気持ちのやりとりでは何を伝えたいのか、分かりませんでした。「関守」はすぐにオチが分かる物語です。割と単純な流れです。

 今回、短編集のタイトルになった「満願」は、殺人を犯した女性の真意を探る話です。でも、共感できる内容ではありませんでした。これが代表作なのか、その理由が分かりませんでした。

 描写が的確な文章がうまいミステリー作家だと感じましたが、共感できる心理描写がわからない部分が多い短編集と感じました。読後感があまりよくないとの印象です。どこがよくないのかは的確に指摘できないのですが。