身もふたもない言い方になるが、SMAPにもジャニーズにも興味はない。
ただ、SMAP解散騒動のことは知っていた。
極めて断片的にしか知らないが。
SMAPについて語る資格を私は持っていないので、ここでは、ある女性の話をしようかと思う。
私が「SMAP」と聞いて思い浮かべるのは、いつもその方のことだった。
高校・大学時代の友人の母君だ。
友人のお母さんは、昨年の2月に亡くなった。
83歳だった。
友人のお母さんは、声楽家だった。
60歳くらいまで現役で、音大の講師をしていたこともあった。
引退後は、ご自宅で声楽とピアノを教えていた。
音楽は、クラシックしか聞かない。
70歳近くになって完全リタイアしたが、それからのち楽しみにしていたのが、SMAPが出演するバラエティ番組だった。
(おそらくSMAP×SMAP?)
ただ、歌は聴かない。
お母さんが仰るには、「あれを歌と言ってしまったら、私たちのしてきたことは・・(以下、辛辣な表現なので省略)」ということだ。
だから、バラエティの部分しか見なかったという。
しかし、それで十分だったようだ。
毎回楽しみにしていて、欠かさずに見ていた。
芸達者な若者たちが、明るく仲よく人を楽しませる姿を「日本の若者の縮図ですよ」と言って、喜んだ見ていたという。
「こんな平和な世界を作れる、この子たちの力は素晴らしいですよ」とも言っていた。
「難しいことを簡単にやるんですよね、この子たちは」
「努力のあとを見せない粋なところが好きですね」
たった一人の元声楽家のご意見だが、頷けるところもある。
私は、昔から志村けん師匠や出川哲朗師匠、江頭2:50師匠、上島竜兵師匠、坂田利夫師匠を尊敬していたのだが、彼らも同じように、努力のあとを人には見せずに、体を張って笑いを取る人たちだ。
友人のお母さんは、私が志村師匠たちに感じるのと同じことをSMAPに感じていたのかもしれない(ぜんぜん違うか?)。
友人のお母さんは、SMAPの中でも特に中居正広氏がお気に入りだったようだ。
中居正広氏がMCをする番組も、よく見ていたらしい。
そして、「あの子は、どこにいっても成功しますよ。それだけの能力があります」と言うほど、彼を買っていた。
その根拠が、どこから来るのか、関心のない私にはわからないのだが、長い年月を生き、多くの人たちを見てきた人だからこその説得力は感じた。
その元声楽家は、昨年の2月に生を終えたから、SMAPが解散したことは知らない。
それは、幸せなことだったのかもしれない。
先週、友人から電話があった。
一周忌を前に、お母さんの遺品を整理したというのだ。
そこで、SMAPのCDをたくさん見つけたという。
「SMAPの歌は聴きません」と言っていたから、封を切っていないCDだ。
それが、40枚以上あった。
歌は聴かない、と言いながら、CDだけは買うというのは、どういうことか。
やはり、お母さんは心底SMAPが好きだったんだろう、と私は思った。
歌は聴かないけど、ファンだからCDは買う。
その思いは、何となくわかる。
つまり、ミーハーだ。
友人のお母さんが、ショップに行って、クラシック以外のCDをこっそり買う姿を想像すると微笑ましくなる。
おまえ、そのCDどうするつもりだ、と友人に聞いた。
友人が答えた。
「展示用のキャビネットを買って、母さんの部屋をSMAPだらけにしようと思っているんだ」
いいね。
偉大なるミーハーに対する、それは最高の供養だ、と私は答えた。
「偉大なるミーハーか」
「そう言われれば、ミーハーかな」
「だが、俺には想像もできなかったよ。まさか、クラシックで身を立てていた母さんが、ミーハーだったなんてな」
言い方は失礼かもしれないが、可愛い人だったんだな。
おまえの母さんは・・・。
俺には、とても可愛く思えるよ。
十秒近い沈黙のあと、かすかな鼻声で友人が言った。
「つまり、偉大なるミーハーが認めた、そのアイドルも偉大だったってことだよな」
そうかもしれない。
ただ、SMAP解散騒動のことは知っていた。
極めて断片的にしか知らないが。
SMAPについて語る資格を私は持っていないので、ここでは、ある女性の話をしようかと思う。
私が「SMAP」と聞いて思い浮かべるのは、いつもその方のことだった。
高校・大学時代の友人の母君だ。
友人のお母さんは、昨年の2月に亡くなった。
83歳だった。
友人のお母さんは、声楽家だった。
60歳くらいまで現役で、音大の講師をしていたこともあった。
引退後は、ご自宅で声楽とピアノを教えていた。
音楽は、クラシックしか聞かない。
70歳近くになって完全リタイアしたが、それからのち楽しみにしていたのが、SMAPが出演するバラエティ番組だった。
(おそらくSMAP×SMAP?)
ただ、歌は聴かない。
お母さんが仰るには、「あれを歌と言ってしまったら、私たちのしてきたことは・・(以下、辛辣な表現なので省略)」ということだ。
だから、バラエティの部分しか見なかったという。
しかし、それで十分だったようだ。
毎回楽しみにしていて、欠かさずに見ていた。
芸達者な若者たちが、明るく仲よく人を楽しませる姿を「日本の若者の縮図ですよ」と言って、喜んだ見ていたという。
「こんな平和な世界を作れる、この子たちの力は素晴らしいですよ」とも言っていた。
「難しいことを簡単にやるんですよね、この子たちは」
「努力のあとを見せない粋なところが好きですね」
たった一人の元声楽家のご意見だが、頷けるところもある。
私は、昔から志村けん師匠や出川哲朗師匠、江頭2:50師匠、上島竜兵師匠、坂田利夫師匠を尊敬していたのだが、彼らも同じように、努力のあとを人には見せずに、体を張って笑いを取る人たちだ。
友人のお母さんは、私が志村師匠たちに感じるのと同じことをSMAPに感じていたのかもしれない(ぜんぜん違うか?)。
友人のお母さんは、SMAPの中でも特に中居正広氏がお気に入りだったようだ。
中居正広氏がMCをする番組も、よく見ていたらしい。
そして、「あの子は、どこにいっても成功しますよ。それだけの能力があります」と言うほど、彼を買っていた。
その根拠が、どこから来るのか、関心のない私にはわからないのだが、長い年月を生き、多くの人たちを見てきた人だからこその説得力は感じた。
その元声楽家は、昨年の2月に生を終えたから、SMAPが解散したことは知らない。
それは、幸せなことだったのかもしれない。
先週、友人から電話があった。
一周忌を前に、お母さんの遺品を整理したというのだ。
そこで、SMAPのCDをたくさん見つけたという。
「SMAPの歌は聴きません」と言っていたから、封を切っていないCDだ。
それが、40枚以上あった。
歌は聴かない、と言いながら、CDだけは買うというのは、どういうことか。
やはり、お母さんは心底SMAPが好きだったんだろう、と私は思った。
歌は聴かないけど、ファンだからCDは買う。
その思いは、何となくわかる。
つまり、ミーハーだ。
友人のお母さんが、ショップに行って、クラシック以外のCDをこっそり買う姿を想像すると微笑ましくなる。
おまえ、そのCDどうするつもりだ、と友人に聞いた。
友人が答えた。
「展示用のキャビネットを買って、母さんの部屋をSMAPだらけにしようと思っているんだ」
いいね。
偉大なるミーハーに対する、それは最高の供養だ、と私は答えた。
「偉大なるミーハーか」
「そう言われれば、ミーハーかな」
「だが、俺には想像もできなかったよ。まさか、クラシックで身を立てていた母さんが、ミーハーだったなんてな」
言い方は失礼かもしれないが、可愛い人だったんだな。
おまえの母さんは・・・。
俺には、とても可愛く思えるよ。
十秒近い沈黙のあと、かすかな鼻声で友人が言った。
「つまり、偉大なるミーハーが認めた、そのアイドルも偉大だったってことだよな」
そうかもしれない。