リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

偉大なるミーハー

2017-01-15 07:44:00 | オヤジの日記
身もふたもない言い方になるが、SMAPにもジャニーズにも興味はない。

ただ、SMAP解散騒動のことは知っていた。
極めて断片的にしか知らないが。


SMAPについて語る資格を私は持っていないので、ここでは、ある女性の話をしようかと思う。

私が「SMAP」と聞いて思い浮かべるのは、いつもその方のことだった。
高校・大学時代の友人の母君だ。

友人のお母さんは、昨年の2月に亡くなった。
83歳だった。

友人のお母さんは、声楽家だった。
60歳くらいまで現役で、音大の講師をしていたこともあった。
引退後は、ご自宅で声楽とピアノを教えていた。

音楽は、クラシックしか聞かない。


70歳近くになって完全リタイアしたが、それからのち楽しみにしていたのが、SMAPが出演するバラエティ番組だった。
(おそらくSMAP×SMAP?)

ただ、歌は聴かない。

お母さんが仰るには、「あれを歌と言ってしまったら、私たちのしてきたことは・・(以下、辛辣な表現なので省略)」ということだ。
だから、バラエティの部分しか見なかったという。

しかし、それで十分だったようだ。
毎回楽しみにしていて、欠かさずに見ていた。


芸達者な若者たちが、明るく仲よく人を楽しませる姿を「日本の若者の縮図ですよ」と言って、喜んだ見ていたという。
「こんな平和な世界を作れる、この子たちの力は素晴らしいですよ」とも言っていた。

「難しいことを簡単にやるんですよね、この子たちは」
「努力のあとを見せない粋なところが好きですね」

たった一人の元声楽家のご意見だが、頷けるところもある。

私は、昔から志村けん師匠や出川哲朗師匠、江頭2:50師匠、上島竜兵師匠、坂田利夫師匠を尊敬していたのだが、彼らも同じように、努力のあとを人には見せずに、体を張って笑いを取る人たちだ。

友人のお母さんは、私が志村師匠たちに感じるのと同じことをSMAPに感じていたのかもしれない(ぜんぜん違うか?)。


友人のお母さんは、SMAPの中でも特に中居正広氏がお気に入りだったようだ。

中居正広氏がMCをする番組も、よく見ていたらしい。

そして、「あの子は、どこにいっても成功しますよ。それだけの能力があります」と言うほど、彼を買っていた。

その根拠が、どこから来るのか、関心のない私にはわからないのだが、長い年月を生き、多くの人たちを見てきた人だからこその説得力は感じた。


その元声楽家は、昨年の2月に生を終えたから、SMAPが解散したことは知らない。

それは、幸せなことだったのかもしれない。


先週、友人から電話があった。

一周忌を前に、お母さんの遺品を整理したというのだ。

そこで、SMAPのCDをたくさん見つけたという。
「SMAPの歌は聴きません」と言っていたから、封を切っていないCDだ。

それが、40枚以上あった。

歌は聴かない、と言いながら、CDだけは買うというのは、どういうことか。
やはり、お母さんは心底SMAPが好きだったんだろう、と私は思った。

歌は聴かないけど、ファンだからCDは買う。
その思いは、何となくわかる。

つまり、ミーハーだ。

友人のお母さんが、ショップに行って、クラシック以外のCDをこっそり買う姿を想像すると微笑ましくなる。


おまえ、そのCDどうするつもりだ、と友人に聞いた。

友人が答えた。

「展示用のキャビネットを買って、母さんの部屋をSMAPだらけにしようと思っているんだ」

いいね。
偉大なるミーハーに対する、それは最高の供養だ、と私は答えた。

「偉大なるミーハーか」
「そう言われれば、ミーハーかな」
「だが、俺には想像もできなかったよ。まさか、クラシックで身を立てていた母さんが、ミーハーだったなんてな」


言い方は失礼かもしれないが、可愛い人だったんだな。
おまえの母さんは・・・。
俺には、とても可愛く思えるよ。


十秒近い沈黙のあと、かすかな鼻声で友人が言った。

「つまり、偉大なるミーハーが認めた、そのアイドルも偉大だったってことだよな」



そうかもしれない。