リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

天国から地獄?

2018-05-20 05:16:00 | オヤジの日記

先週の土曜日のことだった。

「初任給をもらったら、買おうと思っていたんだ」と言いながら、娘が紙袋を私に向かって放り投げた。

 

中を開けると、ベルトが2つ入っていた。ウェニダと書いてあって、色は黒と茶。黒は穴のあるもの。茶は、穴のないオートロック式のものだ。

私は生意気にもベルトを1本持っていた。10数年前、大宮の紳士服店の閉店セールで500円で買ったやつだ。そのベルトの表面が毛羽立っていたのを、私は見て見ぬ振りをして長い年月生きてきた。

まーだ、使えるもんね。

そうやって、自分をごまかしてきた。罪深い男だ、私は。

しかし、今回、娘が教えてくれたのだ。現実を見ろ、と。

現実を見た結果、私は、ありがトーフ、と言って泣きながら2つのベルトを受け取った。

新品のベルトは、やっぱりいいなあ。

私は、このベルトに「夏帆1号」「夏帆2号」と名前をつけた。

 

娘は、母親には化粧品を。兄には靴下をプレゼントした。

そして、「まだ、晩ご飯の支度はしてないよな」と聞いた。

まーだだよ。

「よし、近くのイタリアンレストランでディナーをするぞ。7時半に予約をしておいた。ボクの奢りだ」

何といういい娘だろう.きっと親御さんの育て方がよかったに違いない。

 

そう言えば、5年前の息子の初任給のときも、息子に奢ってもらった記憶があった。

このときは、横浜まで出かけたのだ。

なぜ、わざわざ横浜まで行ったかというと、超人的に記憶力のいい息子が、我々夫婦の初デートの話を覚えていたからである。

34年前。サトル君とユミコさんは、横浜の「港の見える丘公園」に行ったという。そして、そのあと、元町のフレンチレストランで食事をした。さらに、山下公園を手をつないで歩き、馬車道のカフェでコーヒーを飲んだとさ(まったく芸のないデートコース)。

 

それを思い出した息子が、そのときと同じルートをたどりたい、と希望したのだ。

さらに、「お金は全部俺が出すから」と、慈悲深いことを言った。

息子と娘は、山下公園と馬車道には行ったことがあった。だが、港の見える丘公園と元町は行ったことがなかった。

「行きたいな」「楽しみだな」と、はしゃいだ。

私の場合は、3年前まで、横浜元町にクライアントがいたので、年に5、6回は行っていた。だから、目を瞑っていても歩ける・・・わけではないが、目を開けていたら、普通に歩けた。

 

港の見える丘公園から元町へ。しかし、残念なことに、あのフレンチレストランは、もう地球上に存在していなかった。仕方ないので、中華街に足を向けて、そこで本格中華をご馳走になった。

ついでに、関帝廟で、関羽雲長さんにご挨拶をした。

山下公園では娘と手をつないで歩いた。馬車道では娘とスキップをした。初デートをたどるこの旅は、思いのほか楽しかった。

そのときも私は、息子に、ありがトーフ、と泣きながら頭を下げた。

 

今回のイタリアンレストランは、マンションから3分程度歩いたところにあった。メインストリートではなく、住宅街の一角に、その店はあった。

いかにもイタリアンな店だった。だって、店の前に大きなイタリア国旗が飾ってあったから。

ディナーは、コース料理が2つだけ。みな同じものを頼んだ。

サバのアクアパッツァ、ほうれん草とベーコンの濃厚トマトソースパスタ、春野菜と蒸した鶏のジェノベーゼソース、白桃のジェラート。

美味かったかって?

これが、3000円なら、私は膝を叩いて、美味い! と言っただろう。しかし、5000円では膝は叩けない。せいぜいトイレのドアを叩くくらいだ。

ご馳走になっていて、言うことではないだろうが。

 

しかし、娘には、ありがトーフ、と深く頭を下げた。

この上なく、嬉しい一日だった。

ただ、嬉しくないことも、心の片隅に、深海に生息するダイオウイカのような大きさで存在していた。

 

初任給の日から遡ること4日、同業者と飲んでいるときに、娘からLINEが突然来たのだ。

「気になる人ができた。好きになる確率99パーセントぉ!」

「さっきまで、その人を入れて、4人で飲んでた」

 

意気消沈。

 

これは地獄か・・・と思ったが、娘の幸せを願わない父親は、父親ではない。

だから、もし、付き合うことになったら、絶対に紹介するんだぞ、と涙ぐみながら土下座した。

 

「わかったなりー」と娘。

そして、娘は、フライング気味に、こんなことも言ったのだ。

「初デートは、港の見える丘公園、元町、山下公園、馬車道がいいな」

 

 それを聞いて、父ちゃんは、こっそりとあとを付けてやろうかと思ったぞ。

 

トホホホホホホ・・・・・