『吟醸王国しずおか』パイロット版試写会に参加してくださった方々から、続々と感想メールが届いています。30日静岡の会場では30名の方が、31日東京会場では15名の方がその場でアンケートに記入してくださいました。東京会場のアンケート回収率が低いのは、パーティー試飲会とセットになっていたため、呑み始めたら書くのが面倒になったという方が多かったからでしょう。代わりにメールで激励をいただきました。貴重なご意見をくださったみなさまに、心からお礼申し上げます。
アンケートやメールを読んでいて、静岡と東京で反応に違いがあるのに気づきました。
試写会オンリーの静岡では、映像を観にきたという明確な目的の方々ばかりです。したがって感想も映像の質に対するコメントが多く、手厳しいものも結構ありました。活字ライターが初めて映像づくりに挑戦した未完成のもので、初めて酒蔵に入ったカメラマンが試し撮影をした範囲のもので、会員への経過報告と新規会員募集を目的とした(できるだけいろいろなカット=人物を見せて支援者を増やしたいための)映像です、とお断りしたにもかかわらず、
「作者が何を伝えたいのか見えてこない」
「登場人物が多すぎる」
「手ぶれが気になる」
「モンタージュ写真がまったく生かされていない」
「アップと引きがわざとらしい」
「音の入れ方がヘン」
などなど、みなさん、どこの映画会社の方ですか!?ってなくらいの専門的なツッコミ。搾ったばかりで酒としては未完成の状態で出品し、鑑定官から厳しい点数をもらった蔵元の心境でした。
いくら未完成と言い訳をしても、公で上映をした以上、一個の作品として批評の対象にさらされるのは覚悟していましたが、地元静岡の観客が、鑑定官みたいな見方をするとは意外でした(実際、静岡会場には国税局酒類審議担当者も来てました。* 。*;)。厳しい見方をするのは東京のほうだと思っていたからです。(ポジティブに解釈すれば)それだけ静岡の期待値が高かったということでしょうか・・・。
一方で、
「シナリオや構成が見事」
「観ていてドキドキした」
「映像作りに関わった人々の熱意や誠実さを感じた」
という肯定的なコメントもたくさんいただきました。でも減点がキツイとそのインパクトが後々尾を引いてしまうものですね。これも、お酒の鑑評会と同じかも・・・。
ちなみに静岡会場の観客で映像のプロは、私が知る限り1人しかいませんでした。彼は、
「テーマの選択と取材の深さに、非常に感銘を受けました。
僕の彼女は、作品を見たあと、日本酒をもの凄く飲みたいと言っていました。映像にインパクトがあるのだと思います。
僕も制作の人間なので、様々な御苦労は手に取るように分かります」
とメールをくれました。
翌日の東京。8000円の会費を払って静岡吟醸だけの会に来るツワモノばかりです。加えて蔵元7人(プラスなぜか県外の蔵元1名)が観客に交じって観ています。どんなダメ出しが襲ってくるのか戦々恐々でした。
ところが、映像の質を云々言う人はほとんどなく、映像の中身をストレートに評価してくださるコメントが続々と寄せられました。ジャーナリストや編集者や大学教授、名前を聞けば誰でも知っているテレビ局や和菓子メーカーや航空会社にお勤めの方などから、
「シンプルに感動した」
「職人に対する畏敬が感じられる素晴らしい映像」
「うちの社員研修に使いたい」
「学生に見せたい」
という言葉が。一番ハードルが高いと思われた松崎晴雄さんの日本酒講座の受講生から、こういうコメントをいただけたことで、緊張の糸がスーッとほぐれる感触を得ました。
「減点も加点も同じエールだ」「制作初期の段階で両方の評価をもらえたってことはスゴイ財産だ」―と、大人の判断ができるようになったのは、次の2つのメールをもらってからでした。
あ~あ、自分ってホントに打たれれば凹み、褒められれば伸びる単純な人間だなぁと実感・・・。千恵子さん、えり子さん、本当に救われました。ありがとうございました。
そして映像の素人が作った未熟な作品を真剣に視聴し、真摯な意見をくださった130名のみなさま。みなさま方は、いわば「搾りたて」の「あらばしり」酒を一番最初に試飲した稀有な方々です。これが時間を経てどんな酒(映像)に熟成していくのか、この先もじっくりお付き合いいただきたいと思っています。