静岡新聞のポータルサイト・アットエスで連載中の『静岡の地酒が呑める店』を、久しぶりに更新しました。先月末、下田へ行ったときに取材した手打ち蕎麦の店・いし塚さんです。こちら
をご覧ください。
気がついてみると、この連載も162回目。ここ数年は、これぞという店が発掘できたときに、思い出したように投稿するというワガママを許していただいていました。
10年余り前、連載を始めた頃は、知り合いの居酒屋さんや酒販店さん推薦の店を紹介したくてウズウズしてって感じで、張り切って取材していたのですが、ある程度取材し尽くした後、新規の店を発掘しようという自分のモチベーションをキープするのに苦労しました。この間、SNSが発達したり、フリーペーパーが続々創刊したりで、飲食店情報の発信方法が大きく変わり、情報の価値や読者のニーズも多様化し、自分の立ち位置を探すのに苦労した、ということかな。
昨年、フェイスブックを始めてから、「名前は知ってる」「一度、どこかで名刺交換したかも」「共通の知り合いはいるが、本人はまったく知らない」という人とつながりを持つことができました。その中に静岡の酒を扱う飲食店がいくつかあり、フェイスブックを通してですが、彼らの地酒愛の深さや広がりのほどを知って興味を持ったのが、連載再開のモチベーションにもつながりました。自分の足で飲み歩いたり、蔵元や酒販店の人脈に頼るといったアナログ世代の情報収集方法は、いかにも時代遅れだなあ~と痛感させられましたが、SNSが仕事に役に立った初めての、ありがたい事例になったわけです。
下田に赴いたのは、下田のご当地PB酒『黎明』のプロジェクトチームから、相談を受けたのがきっかけでした。『黎明』は、10数年前、下田のまちおこしグループ『にぎわい社中』と、市内の酒販店十数店で結成した下田地酒倶楽部という組織が呼びかけてスタートしたもので、市民から会員を募り、下田市内でコメの田植えから稲刈りを体験し、新酒を買い取ります。『黎明』という酒銘は下田在住の女優有馬稲子さんの命名。醸造は富士高砂酒造に委託し、ピーク時は会員200名超の一大プロジェクトになりました。私はしずおか地酒研究会の活動や取材ワークを通し、このプロジェクトを陰ながら応援してきました。
今回は、にぎわい社中のリーダーだった楠山俊介さんが、昨年、下田市長に当選し、下田地酒倶楽部のリーダーだった植松酒店さんも店をたたむという事情が重なり、『黎明』をどうやって発展成長させていこうか、チームの主だった方々と一緒に考える、そんな目的で下田へ行ったのでした。
で、どうせなら、最近フェイスブックで仲良しになった(下田地酒倶楽部メンバーではない)つちたつ酒店さんにも会いに行き、ついでに、つちたつさんがよくフェイスブック記事で絶賛しているお店にも行こうと。
つちたつ酒店さん、国道414号線を通って下田に行くときは、時々立ち寄ってお酒を買ったりしていましたが、ご本人とじっくりお話したり、お店を案内してもらうのは初めて。下田の観光酒販店というよりも、地酒ファンに向けて有名無名問わず、これぞという銘柄を腰をすえて扱う地酒専門店です。
静岡モノでは、『喜久酔』や『國香』といった静岡酵母酒を大切に扱っていたのが嬉しかったですね。
・・・あらためて10年という歳月を考えてみると、「しくみ」や「手法」など、変わらざるを得ないものは、劇的に変わるし、腰をすえて決めた「目標」や「使命」といったものは、10年でも20年でも変わらないものだと思います。
『いし塚』さんとの出会いは、確かに「しくみ」や「手法」を変えた成果ですが、石塚さんが感動した『國香』の蔵元が目指すものは、まったくブレていない。ブレていないからこそ、新しい世代にもしっかり伝わったのです。手前味噌ですが、國香の姿勢がブレていないことを、ブレずに理解できる自分だからこそ、つちたつさん、いし塚さんともつながったんだと実感しました。
『黎明』も、目指すものがブレなければ、担い手がメンバーチェンジし、手法が変わっても、地元にしっかり根付いていくと思います。単なる酒販店の生き残り策ではなかったから、多くの市民が共感してプロジェクトが成立した。その原点からブレずに、しっかり育てていってほしいなあと思います。
下田では、もう一軒、美味しい魚の店を取材しました。時期をみて、アットエスにUPしますので、ご期待ください!