杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

経年変化の因果律

2017-08-07 11:44:55 | 仏教

 このところ体調の変化を如実に実感しています。今までにない腰痛と片足の痺れに悩まされ、母親が通院しているペインクリニックを受診してみたら「腰部脊柱管狭窄症」と言われ、生まれて初めてお薬手帳を作りました。立て続けに歯茎が痛み出し、歯周病かと思ってデンタルクリニックを受診したら、歯や歯茎に異常はなく、「顎関節症」だと言われてマウスピースを作りました。

 同じころ、左手の親指の付け根にポキポキ違和感を感じるようになり、親指全体が硬くなって折り曲げるたびに痛みが生じ、1か月ぐらい経て本格的に痛み出し、モノが持てなくなってしまってペインクリニックで診てもらったら「ばね指」との診断。

 50半ばまで病気らしい病気をせず、お薬手帳も持ったことがない健康優良児を自認していたのですが、今まで聞いたこともない病名を3つももらって、自分もやっぱり人並みに更年期を迎え、身体は確実に経年変化しているんだと自覚しました。腰も顎も指も、なるべく安静にって言われても動かさざるをえない部位だし、効果的な治療法もない慢性疾患。年齢相応の持病持ちになったようです。

 

 それよりなにより、もっと単純に自分の加齢を実感するのは白髪の量。暑さ対策でベリーショートにしてみたら、つむじのあたりからおばけのQ太郎みたいにツンツン白髪が立つようになりました。髪をたくしあげると奥に白髪のカタマリがいくつも発生していたのにギョッ!美容師さんからヘアカラーを勧められたものの、10代の頃から時々円形脱毛症に悩まされていた私は、なんとなく毛染めに抵抗があって即答ができず、「白髪まじりでもいい感じになるようカットしてみます」と慰められ?ました。

 

 白髪ばかりはクリニックでも美容院でも治療は出来ないだろうと、原因と対策をネット検索(こちらを参照)してみたところ、根本的には成長ホルモンの減少が原因。成長ホルモンの分泌量は20歳を100%とすると、30代後半で早くも25%まで減少し、50歳ではわずか12%なんだとか。道理で身体のあちこちに不具合が出てくるわけです。

 20歳の若者の1割程度しか分泌されない成長ホルモンをなんとかキープ&できればアップさせるには、無酸素運動(加圧トレーニング、スロートレーニング、チベット体操等)で成長ホルモンの分泌を促す「乳酸」を増やすことが効果的。有酸素運動ではあまり効果がないそうです。

 よく知られる白髪原因はメラニン不足。メラニンとは白いものに黒く色を付ける絵の具のような役割をする細胞で、今の時期は日焼けの原因として悪者扱いされてますよね。皮膚に元からある細胞ではなくて、食物に含まれる分子チロシンの作用が生み出すそう。つまりチロシンを含む食物(大豆-とくに豆腐、チーズ等)を多く摂取するのがよいということになります。日焼け対策と育毛サイクルを考慮したら、夜に摂取するのがベターのようです。

 メラニンは身体に蓄積された過酸化水素に攻撃されやすいため、過酸化水素を無害水と酸素に分解するカタラーゼという酵素が“武器”として必要になります。このカタラーゼも加齢によって減少し、食物では直接摂取できないそう。また糖質がカタラーゼの活動を低下させることも。したがってなるべく糖質を控え、カタラーゼの栄養源「鉄分」を積極的に摂取せよ、ということになります。

 成長ホルモンやカタラーゼを活性化させるには「断食」も効果的だそうです。米国心臓病学会の研究によると、まる一日断食した後、成長ホルモンの平均分泌量をはかったところ 男性で2,000%、女性で1,300%も増加。ラットの実験では30%の食事制限によってカタラーゼが26%増加したそうです。カタラーゼを増やすって、イコール、ダイエット効果も期待できるわけですね。

 

 

 痛みと同居するようになったこの1か月、お寺の仕事でお盆の行事に関わったり、花園大学の歴史講座や禅学フォーラムに参加したりして、仏教に真正面から向き合う日が続きました。

  白髪になるメカニズムを調べていくと、仏教で言うところの「因縁」を感じます。変化の原因は一つではなく、因と縁が織りなした因果律によって起きるということ。自分の身体に起きる変化も、単に「加齢」だと一括りで終わらせるのではなく、因と縁を丁寧に見つめ直していけば、「因縁」そのものから解き放たれることもあるかもしれない。・・・少し希望が湧いてきます。

 

 説教や講演をするお歴々を「お坊さんは白髪を気にしなくていいなあ」「でもカンカン照りの時期は頭皮が熱いだろうなあ」と下世話に眺めていましたが(笑)、よくよく観察してみると、高僧や名僧といわれる方々は厳しい修行をしながらもご長寿で晩年までエネルギッシュに活動されていた方が実に多い。88歳で亡くなった一休さんは77歳のときに盲目の女性森女(当時30歳)と出会って恋に落ち、艶歌をたくさん書き残し、末期の言葉は「死にとうない」。成長ホルモンを死ぬ間際までトコトン分泌させようとしていたんだなあと思います。

 

 今現在、ご縁をいただいている和尚さんがたも、結構な御歳にもかかわらず肌ツヤよく姿勢もよく、今風にいえば全身デトックス済みって居住まいの方が多いのです。禅の修行者は定期的に断食をし、日頃から低糖質低カロリー食、とくにカタラーゼの宝庫である大豆食品を多く摂取しています。剃髪しなければ、きっと黒くてふさふさなヘアになるかもしれませんね。もっとも体調がよく、いつまでもお達者であれば「色欲」なんかとも闘わなければならないのかな・・・。

 白隠さんの「南無地獄大菩薩」の教え=地獄と極楽の当体は表裏一体で同じもの、というように、物事には表と裏の二極性があります。日焼けの大敵であると同時に白髪を防ぐ絵の具にもなるメラニンがまさにそう。

 長い間、円形脱毛症に悩んできたことも、何かの機会に「因果」を発見するかもしれませんが、とりあえずの白髪対策としては安易に毛染めに走らず、食生活を見直し、体調を考慮しながらプチ断食にも挑戦してみようと思います。断食経験のある方はよきアドバイスをお願いします。