杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録 興津上映会のご案内

2019-08-13 10:36:56 | 朝鮮通信使

 久しぶりに映画『朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録』の上映会が開催されることになりました。2007年の製作から12年。20代30代の方はこの作品の存在すら知らない人も多いと思いますので、時を経てもこのような上映会を企画していただけるのは作り手名利に尽きるというもの。本当にありがたいことです。

 

 今回の上映会は、朝鮮通信使の顕彰事業を行う静岡市内の5団体(在日本大韓民国民団静岡支部、静岡に文化の風をの会、NPO法人AYUドリーム、興津地区連合自治会朝鮮通信使興津保存会、静岡県朝鮮通信使研究会)が連携した協働団体〈朝鮮通信使静岡ネットワーク〉の発足事業の一環で企画されました。

 会場は興津生涯学習交流館(こちらを)。意外にも興津での上映会は初めてです。なんといっても興津には徳川家康が最初の朝鮮通信使をもてなした清見寺があり、通信使が清見寺に遺した漢詩がユネスコ世界記憶遺産にも登録されたことから、地元団体(AYUドリーム、自治会連合会)が毎年、朝鮮通信使再現行列のイベントを開催して盛り上げています。

 映画の中でも清見寺の場面は終盤のハイライトですが、なぜか今まで興津で上映する機会がありませんでした。今回、朝鮮通信使静岡ネットワークの発足事業で記念講演を依頼された北村欽哉先生が「ならばこの作品を上映しよう」と企画し、私にもお声かけをしてくださったのでした。

 

 ご承知のとおり、日韓関係は今、複雑な局面に立っています。映画の序盤でしっかり紹介した長崎県対馬では、1980年頃から地元商工会が中心となって毎年8月の厳原港まつりの目玉に朝鮮通信使行列を開催するなど市を挙げて日韓交流イベントに注力してきましたが、今年の厳原港まつりでは、元徴用工問題や日本の対韓輸出規制強化などによる関係悪化を受け、韓国にある2つの友好姉妹都市の職員計約20人が出席を取りやめ、釜山市から寄港予定だった通信使の復元木造船の参加も中止になりました。

 それでも朝鮮通信使行列は8月4日、韓国から「草の根レベルの交流は絶やしてはいけない」という有志60人が参加し、計260人の行列イベントが無事催行されたそう。その決断と行動に敬意を表したいと思います。

 

 顧みると徳川家康は、秀吉が戦争を仕掛けた相手国との難しい戦後処理や国交回復をわずか9年で成し遂げ、朝鮮王朝側も攻め込んできた相手国に、国を代表する超一級の文化人を使節団として送り込んだのでした。紙の文書しか通信手段のない時代、これは本当に、リスク承知で将来を見据えた明確な政治判断があったのだと実感します。

 今の世の中、民意によって選ばれたリーダーが家康や朝鮮国王と同じような政治決断は簡単には出来ないと理解しつつも、相手の真意を探り、関係改善を図ろうとしたとき、どのような決断・行動をとるべきか、人間の判断能力は400年前も今もさほどの差はないような気がする。だからこそ、現代人はテレビや映画等でさかんに制作される歴史検証作品を通して温故知新を図りたいと願うわけです。

 日韓関係が難しい今、このタイミングで、家康が通信使をもてなした興津でこの作品を上映できる意義をかみしめながら、当日を迎えたいと思います。入場無料ですので、ぜひふるってお越しください。

 

 なお席に限りがありますので、主催者に電話で事前申込みをお願いします。申込先=NPO法人AYUドリーム事務局 TEL 054-369-1154