杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

松井妙子先生のカワセミ

2007-12-28 15:25:56 | アート・文化

 昨日、入手した喜久酔の酒粕を持って、金谷の染色画家・松井妙子先生のお宅へ年末のご挨拶に行ってきました。牧之原の茶畑のど真ん中にある、先生お気に入りの自家焙煎珈琲店アルムでお茶をしながら、この一年の出来事を振り返り、表現者として生きる悦びや難しさを語り合いました。

 松井先生とは、1992年3月発行のJA静岡中央会産直ガイド『四季ORIORI』の取材で、お茶にまつわるお話をうかがって以来、親しくおつきあいをさせていただいています。

 先生は、ふくろう、カワセミ、なまず、アンコウなど愛らしいキャラクターが自然と寄り添う姿を、優しく、温かいまなざしで描かれます。5月のGW明けに松坂屋静岡店で開催される年1回の個展は、初日午前中に大半が売約済みになってしまいます。「小さな作品しか手が届かないけど、1年間、コツコツ貯めて買いに来たの」というお客さんが大勢来ます。お正月の福袋のときのように、初日開店前から並び、オープンと同時に6階画廊までエスカレーターを駆け上がる(エレベーターより早いらしい)人もいるそうです。

 10数年前、1枚だけ、自分に買えそうな額の作品が奇跡的に残っていたことPhotoがありました。作品を選ぶ、というよりも、作品に選ばれた、という思いに近かったでしょうか。雪の中、じっと春の訪れを待つカワセミの姿は、当時の自分を映し出しているようでした。

 「余分なものは要らない、シンプルに生きられるのが一番ね」とおっしゃる先生。かといって自然豊かな山里でアトリエを構えたり、気ままに放浪生活をする作家とは違い、生家である金谷の古い商家で、実母を介護しながら、市井のつつましい暮らしを続けておられます。

 「母が元気な頃は気持ちが外にばかり向いて、カリカリ尖がった生き方をしていたと思う。今、こうして母の面倒を見るようになって、心がずいぶんおだやかになったの」と前向きに語ります。先生の作品は、先生のお人柄そのものだな…と改めて実感しました。

 

 松井妙子先生の作品は、静岡グランドホテル中島屋&焼津グランドホテルに常設展示されています。2008年は2月に金谷のミンクル(図書館)、5月に松坂屋、秋にお茶の郷で展示会が予定されています。ぜひ一度ご覧になってください。


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