2021年1月22日 NHK「おはよう日本」
緊急事態宣言が出される前の1月初め
東京オリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場で
大勢の観客がいるなかで初の大規模な調査が行われた。
調査の舞台となったのはJリーグカップの決勝。
感染拡大後 国立競技場で最多となる2万4,000人余が訪れた。
人が密集しそうな場所に設置されたのは
(産業技術総合研究所 保高さん)
「これはCO2(二酸化炭素)の濃度を測定する機械です。」
人の吐く息に含まれる二酸化炭素の濃度を測ることで
その場所の密集度合いや換気の状況を把握できる。
レーザーレーダーは
観客同士の距離を計測し
1人1人の動きを追跡できる。
選手ロッカーや審判の控室も調査の対象。
Jリーグと国の研究機関が
いつ・どこで3密が起きているのか
くまなく調べた。
(環境リスク評価が専門 産総研 保高さん)
「観客 スタッフ 選手がいるところでリスクが高いところを見極めるのが重要。」
今回 密が明らかになったのが①トイレである。
ハーフタイム
席を立ちトイレに向かう人たちが・・・。
二酸化炭素の濃度は3つの時間帯で極端に上がっていた。
試合開始の30分前
ハーフタイム
そして試合終了後に利用が集中していたのである。
中でも観客席に近い1階の男子トイレ。
ハーフタイムの多い時で65人が並んでいたという。
一方
同じ時間帯に観客席から離れた地下のトイレは倍以上広いのに閑散としていた。
二酸化炭素の濃度を比べてみると2,5倍を超える開きが。
鑑定者の想定以上の結果だった。
(感染リスク強化が専門 産総研 保高さん)
「なぜか誰も並んでいないトイレに人は行かず
並んでいるトイレに行ってしまう現象がある。」
(人工知能を用いた行動分析が専門 産総研 大西さん)
「国立競技場もできたばかりで
皆ほぼ初めてというのもあって
これはオリンピックのときにも出てくるだろうなと。」
問題はトイレだけではない。
②試合終了後の入退場ゲートでも密が起きていた。
千駄ヶ谷駅に近いゲートで人の動きをレーザーでとらえた動画。
試合終了直後は人がまばら。
約5分で画面を埋め尽くすほどになった。
急激に人が増えて渋滞が起き
周辺の二酸化炭素の濃度はそれまでの2倍に上がっていた。
試合終了から10分間で1,600人近くが通過し
最も密になっていたことが分かった。
勝ったチームのファンはセレモニーを見ようと残る人も多い一方
負けた方はいっせいに帰るため終了直後に混雑が起きていたのである。
(人工知能を用いた行動分析が専門 産総研 大西さん)
「負けたチームの方が
負けた瞬間にもういいやと思って帰る人が増えるので
そこでCO2なんかも増える。」
Jリーグは
混雑状況を可視化して
利用者の少ないトイレに誘導する「空きトイレマップ」作りや
時間差をつけて退場してもらう方策について
今後検討することにしている。
(Jリーグ新型コロナウィルス対策室 仲村さん)
「対策を講じつつ
多くのお客様に見に来ていただける環境を整えたい。」
調査に立ち会った専門家は
(東京大学医科学研究所 井元教授)
「どこが混雑するかを“見える化”し
どうやって観客に届けるか。
係員が大声で伝えるとそれ自体がリスクになるので
スマートフォンやIoT技術を使ってやっていくのが1つの方法。
東京五輪・パラのメインスタジアムである国立競技場の感染リスク評価に
データが使えるのは非常に意義深い。」