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マスターズ挑戦10度目 満面の笑み

2021-05-05 08:54:00 | 編集手帳

2021年4月13日 読売新聞「編集手帳」

 

 ゴルフはなぜ18ホールで競うのか。
時は18世紀に遡る。
1764年、
スコットランドのセントアンドルーズのコース改造でたまたまそうなったからだという。

その当時の日本は、
江戸時代が半分を過ぎた頃である。
歴史も見えない壁の一つだろうか。
日本の一流選手が挑戦しては惜しいところで敗れてきたメジャー大会で、
松山英樹選手(29)が栄冠を射止めた。
マスターズ・トーナメント優勝の偉業は、
沈みがちな気分を明るくするニュースだろう。

松山選手は優勝者に贈られる「グリーンジャケット」に袖を通し、
両手を振り上げて喜んだ。
つられてほほ笑んだ方は多かろう。

詩人の杉山平一さんに「蕾」という作品がある。
<誰がつくった文字なのだろう
 草かんむりに雷とかいて
 つぼみと読むのは素晴らしい…
 とき至って野山に
 花は爆発するのだ>(「杉山平一詩集」土曜美術社)。
春から初夏にかけての景色だろう。

あまり感情を表に出すことのない松山選手が、
春の鮮やかな芝生の上で満面の笑みをたたえた。
マスターズへの挑戦は10度目になる。
蕾のままでいた時間は短くない。
爆発する花を思った。


 

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