2021年4月15日 NHKBS1「国際報道2021」
3月31日
国民に向けてテレビ演説を行ったフランス マクロン大統領。
強い言葉で鼓舞した。
(フランス マクロン大統領)
「この4月がものすごく重要だ。
みなさんの協力が必要だ。
みんなで団結して頑張ればトンネルの終わりが見える。」
そして発表したのはワクチン接種の新たな目標である。
1日に接種できる数を3倍に増やし
今年6月半ばまでに国民の半分近くが1回接種することを掲げた。
(フランス マクロン大統領)
「祝日も週末もワクチンの接種 接種 接種だ。
そのためにあらゆる措置を行う。」
背景にあるのは変異ウィルスによる感染者数の急増である。
4月に入ってから1日平均の新規感染者数は4万人に迫り
4月からは3度目の全国的な外出制限が行われている。
フランスでのワクチン接種はイギリスなどより大幅に遅れ
3月までに接種を受けたのは国民の13%ほど。
ワクチンの確保や接種体制の遅れが原因だと指摘されている。
感染の拡大に対し
野党はマクロン政権への批判を強めている。
(野党 共和党議員)
「ワクチンの接種戦略に失敗した。
外出制限になったのはこのためだ。」
一方
前回の決選投票で闘った極右政党のルペン党首は
移民排斥を訴え
保守層から支持を集めている。
感染拡大によって支持層である地方の労働者や農家が大きな打撃を受けるなか
マクロン政権への攻勢を強めている。
(極右政党「国民連合」 ルペン党首)
「5月半ばに経済を通常に戻すという政府目標は信じられない。
ワクチン接種率が低すぎる。
フランス国民は6,700万人もいるのに
接種した人数がまだまだ少なすぎる。」
こうしたなか
マクロン政権がワクチン接種のスピードを上げるために始めたのが大規模施設での接種である。
サッカースタジアムなどを活用し
消防隊員や医学部学生も動員して
1日2,000人ほどに接種を始めた。
自転車の競技場を利用した接種会場は訪れた人にも好評である。
(接種を受けに来た人)
「選手たちが練習していて
とてもいいですね。
ワクチン接種の前にリラックスできます。」
感染予防対策としてマクロン政権が特に力を入れているのが高齢者への接種である。
政府が製作した広報ビデオでは
副反応を心配する高齢者が少なくないなか
“接種を受ければ孫にも会える”と接種を呼びかけている。
再開を夢見るのなら
接種しましょう
さらに
接種を受けやすい環境を作ろうと
マクロン大統領が設置したのがコールセンターである。
主に高齢者が抱いている接種への不安をとりのぞくため
質問に答えたり接種の予約をとったりしている。
マクロン大統領は野党に批判されたワクチン確保にも積極的に動き出した。
国内に初めてできたワクチンの製造拠点に足を運び
確保に向けた成果をアピールした。
(フランス マクロン大統領)
「4か所で今後ワクチンを生産し
生産能力を高めていく。
今年中にフランス国内で2億5,000万回分をフランスとヨーロッパ用に製造する。」
ワクチン接種を目標どうり進め
疲弊した経済に道筋をつけることは
マクロン大統領の再選には欠かせない条件だと専門家は指摘する。
(ソルボンヌ大学 客員教授 ベネデティ氏)
「ワクチン接種がうまくいったとしても
マクロン大統領の再選が容易になるとは限りませんが
滞ればより情勢は厳しくなるでしょう。
だからマクロン大統領は急いでいるのです。」
選挙まで1年となったが
フランス国民の関心は感染拡大をどう抑え込むのかにつきる。
フランスでは観光業や小売業を中心に幅広い産業で深刻な打撃を受けていて
人々の関心はワクチンの接種に集まっている。
さらに
マクロン大統領がワクチン接種を急ぐ背景に
極右政党のルペン党首の存在がある。
最新の世論調査の結果を伝える紙面には
“トップの顔ぶれはマクロンのルペンのまま”と書かれている。
選挙の構図は前回と同様まったく変わっていないままだと伝えているのである。
ただルペン党首のある変化がいま話題になっている。
ある新聞は“ルペン党首がイメージチェンジを図っている“と伝えている。
激しい口調でライバルを責め立てる強面のイメージがもたれてきたが
“より幅広い支持を狙って物腰や口調が柔らかくなっている“と分析しているのである。
世論調査ではルペン党首が都市部の若者にも支持を広げつつあるという結果も出ていて
マクロン大統領としては油断できない事態となっている。
新型コロナウィルス以外の争点は
テロ対策と国民の融和だと考えられる。
去年フランスではイスラム過激派による残忍なテロが相次いだ。
イスラム教徒などの移民と
フランスがこれまでよりどころとしてきた“表現の自由”などの価値観を
どのように共有するのかを問われる時代になった。
マクロン政権は
イスラム教徒の若者が過激化するのを防ぐため
社会に取り込んでいく方針である。
一方の極右政党のルペン党首は
“政府の対策は手ぬるい“と厳しく批判している。
当局が監視対象としている人物については“国外退去すべきだ”などと主張しているのである。
安全をどう守るか
いま国民の関心は非常に高く
今後大きな争点になる見通しである。