2021年5月13日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
アメリカは世界有数の国際養子縁組大国で
これまで27万人以上の養子を迎えてきた。
その中で最も多いのが中国からである。
これまでに8万人以上と全体の約30%を占める。
中国から来た養子の多くは“自分は何者?”という疑問を抱えているという。
23年前に中国から養子を迎え入れたマッカーサーさん夫妻。
晩婚で子どもに恵まれなかったふたり。
中国からの養子を選んだのは
アメリカでは年齢制限があり養子縁組が難しかったからである。
娘のリューリンさんは25歳となり
いまは独立して離れて暮らしている。
(娘 リューリンさん)
「子どものころ中国のことはほとんど意識していませんでした。
成長するにつれて考えるようになりました。」
16年前
(娘 リューリンさん)
「9歳。
小学校に通っています。
飛行機で来たことしか覚えていないの。」
白人とアジア人という人種を超えた家族。
リューリンさんが恥ずかしがったこともあったという。
(アニータ・マッカーサーさん)
「“友だちに出身を教えないで”と言われましたが
“見ればわかるから無理よ”と言いました。」
(ビル・マッカーサーさん)
「何も隠さないと決めていました。」
愛情をかけられて育ったリューリンさん。
アメリカで育ちながら中国にルーツがあることに複雑な思いを抱えていた。
高校生の時に書いた作文にそのことが記されていた。
母に連れられかつて暮らしていた中国の孤児院を訪れた時のことである。
成長して戻ってきてくれたと大歓迎してくれた孤児院の人々。
しかし自分は戸惑いしか感じられず
目を合わせないよう下を見続けていたという。
自分のアイデンティティーは何か。
悩んだ時期もあったが
両親が多様な文化を尊重してくれたことで自信を持って向き合えるようになった。
(娘 リューリンさん)
「中国とアメリカ
どちらにも属さず
受け入れられない間隔はありました。
どちらかに自分を合わせる必要はなく
自分自身であればいいのです。」
自分の子どもはなぜ養子に出されたのか。
我が子の生い立ちを調べ続ける親もいる。
スタイさんは中国から3人の養子を迎え中国出身の妻と暮らしている。
中国に通って手に入れた新聞を手掛かりに娘の生い立ちを調べてきた。
(スタイさん)
「預けられた孤児院や名前 性別や生年月日などが書いてあります。
1999年から中国全土の情報を集めています。」
孤児院に保護された子どもの性別
発見された日
健康状態などが記されている。
一定期間内に親が名乗り出なければ養子に出されるのである。
20年かけてデータベース化した情報は約7万人分。
これをもとに100組近い生みの親を特定してきた。
そこまで生い立ちにこだわる理由。
きっかけは娘たちから繰り返し聞かれた質問だった。
(娘)
「生みの親がなぜ手放したのか知りたかった。
私たちの多くが捨てられたと思っています。」
スタイさんは中国の孤児院を訪ね
娘を保護したという女性に聴き取りを行なった。
「拾われたのは何時ごろですか?」
「午前8時ごろです。」
(スタイさん)
「娘の服装や哺乳瓶の話を聞き
生い立ちが分かった気になりました。」
ところが数年後あるニュースを目にすることになる。
中国湖南省の孤児院が
乳幼児を集めるため届け出た人にお金を払っていたという大規模な事件である。
海外に養子に出せば孤児院にお金が入るからだった。
娘は売られていたのではないか。
不安を感じたスタイさんが孤児院にあらためて事情を聴くと
捨てられていたという当初の説明が作り話だったことが分かったのである。
(スタイさん)
「“ごめんなさい 私たちが見つけたんじゃない”と言いました。
でたらめだったのです。
問い詰めると“嘘を一度つくと続けるしかない”と言いました。」
自分たちのようなケースは他にもあるのではないか。
集めたデータをもとに調べると
一人っ子政策が理由で
親が子どもを泣く泣く手放したり地元の当局が取り上げたりするケースが少なくなかった。
(スタイさん)
「中国からの養子を迎えたのは恵まれない子を救おうと思ったからでした。
それが真実ではないかもしれないと知り
絶望的な気持ちになりました。
同じような家族の痛みを和らげ平穏に暮らせる日をもたらしたい。」