3月8日 BIZ+SUNDAY
生命の設計図 遺伝子を自在に操作する技術ゲノム編集がいま企業の間で注目を集め始めている。
ゲノム編集はたとえば食料の分野では
腐りにくいトマトや
養殖しやすいおとなしいマグロ
伝染病に付いブタなどが作れるとされている。
これまでになかった商品が生まれることで新たなビジネスにつなげることが出来る。
ゲノム編集の産業化を目指して国もプロジェクトを立ち上げている。
中央大学理工学部 原山重明教授。
ゲノム編集で新たなエネルギーを生み出す研究を進めている。
ライトの下で育てているのは内部に油を蓄えている特殊な藻。
乾燥させると油を取り出すことが出来る。
自動車の燃料にも使えると言う。
「バイオディーゼル(バイオ燃料)がこれから出来上がるということになる。」
とれる油の量をどう増やすか注目したのがデンプンである。
でんぷんの量が減れば油が増えると考えた。
そのためにはデンプンを作る遺伝子の機能をなくす必要がある。
しかしこれまでは遺伝子を狙い通りに壊すことは簡単ではなかった。
薬品や放射線にさらし何万回に1回成功するかの低い確率で
成功は偶然に頼ったものだった。
そこで原山さんが注目したのは狙ったとおりに遺伝子を壊すゲノム編集である。
遺伝子の配列を読み取り性格にターゲットを切り込む技術。
原山さんは1万を超える遺伝子の中からデンプンを作る遺伝子だけを壊すことに成功した。
油の量は1,5倍に増えた。
(中央大学理工学部 原山重明教授)
「生産性という意味でかなりの効果が期待できる。
水分変わっていくと思う。」
この研究に注目しているのが自動車部品メーカーである。
デンソーでは6年後に油を大量生産する技術を確立したいとしている。
(デンソー 基礎研究所 福田裕章さん)
「ここからバイオ燃料をつくる技術を作り
日本の国内に広げていって
できれば日本の中の燃料は日本で確保するといった世界を作りたい。」
アメリカではゲノム編集の技術が実用化の段階に入っている。
ゲノム編集によって肉の量が増えた牛。
暑さに強く世界中で飼育されているが肉が少ないことが欠点だった品種。
そこで筋肉の成長を抑えるミオスタチンという遺伝子に注目。
ゲノム編集で切り込みを入れ働かなくした。
牛の肉は腰回りを中心に通常の2倍に増えた。
今後 アジアや食糧難に苦しむアフリカに売り込む計画である。
この牛を作ったベンチャー企業はいま新たな品種 “角の無い乳牛”を開発している。
角を切るための膨大なコストと手間を無くし農家の負担を減らすねらいである。
乳牛から取り出した細胞をゲノム編集。
そこにもともと角を作らない肉牛の遺伝を入れると角の無い乳牛が生まれる。
すでにイギリスの大手畜産会社から出資を受けているということである。
(バイオベンチャー企業 ファーレンクルッグCEO)
「もう時代は変わった。
遺伝子は神秘的なものではなくなった。
私たちの目の前には大きな可能性が広がっている。」