★ネタバレなし★
こちらも夏休みの特集として、書店で平積みされていたので手に取った。
別に他の作家でも良かったが、あまり手を出したことがない作家を、ということで手元にない武者小路実篤を選んだ。
読み終わって、「あ、これ読んだことあるわ」と思い出した。
おそらくかなり前に読んでいる。
しかし、ほとんど覚えていなかったのは、それほど私にとって共感できるところが多くなかったからだろう。
「白樺派」として知られる武者小路実篤をあまり手に取ってこなかったのは、そのためだろう。
野島は作家を目指しているが、あるとき、杉子という女性と出会う。
彼の妄想は膨らみ、なんとしても彼女を自分の妻にしたいと考えるようになる。
妄想に囚われるようになった彼は、親友の大宮に自分の胸の内を訴える。
しかし、事はそれほど上手くいかない……。
有名なので、ネタバレもなにもないだろう。
武者小路実篤についての人生もほとんど知らないので、語れない。
ただ、漱石から続く三角関係を、やっぱり当時の文壇たちは好きだったのだろう。
新潮文庫の裏表紙には、「大失恋小説」と書かれている。
私ならどうするのか、という発想を安易に想像しやすい作品と言える。
私ならどうするのか、野島のような高い志をもってこの恋を乗り越えることはできないだろう。
しかし、いかにも若い恋のようにも思える。
彼が小説にまで結晶化してしまったことそのものが、この恋の若さを象徴している。
私なら……この小説を書いてしまったことを恥じて家にまた閉じこもりそうだ……。
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