評価点:31点/2006年/アメリカ
監督:クラーク・ジョンソン(「SWAT」ほか)
ホワイトハウス内が、頭弱すぎ。
シークレットサービスのピート(マイケル・ダグラス)は、大統領夫人と不倫関係にあった。
ある日、シークレットサービスが一人何者かに殺害されるという事件が起こる。
内通者がいることを情報屋から知ったピートは、全員に嘘発見器による尋問を試みる。
その事件に関連するように、大統領夫人との間柄を示唆する写真がピートの元に届く。
同じシークレットサービスのデヴィッド(キーファー・サザーランド)は、不審な行動をするピートがあやしいと考え始める。
ピートにまつわるお金の動きを察知したデヴィッドは、ピートの元に強制捜査に立ち入るが、ピートは逃げ出してしまう。
映画の一場面を観ただけでは、それが映画「ザ・センチネル」なのか、「24」なのか、わからない。
それくらい僕にとってはキーファーはジャック・バウワーなのだ。
それはさておき、ジャックを全部見きれない僕は、仕方がなく本作を観ることにした。
映画公開から実はしょうもないだろうと踏んでいたけれども、どうしても観たくなってしまうのが、「24」ファンだろう。
なんだか完全に乗せられたような気もするが、観てしまったので批評にした。
キャスティングやストーリーにあまり惹かれないようなら、観る必要はない、そんな暇つぶしにぴったりの映画に仕上がっている。
▼以下はネタバレあり▼
はっきり言って駄作である。
これがキーファーとダグラスの二人の主演でなかったら、きっと誰も観ないような、ビデオ映画になりさがっていただろう。
出来はかなりひどい。
映画館にいかなくてほんと良かったと思えてしまう。
映画の設定は大統領暗殺事件が軸になっている。
シークレットサービスはこれまで141年間一切裏切り者がでなかったことが、誇りであるが、彼らが、もし裏切ったとしたら?
というのがこの映画の設定上では最大の売りになっている。
だが、これがほとんどかすんでしまうほど、ホワイトハウス内のスキャンダルのほうが丁寧に描かれている。
大統領と夫人との冷たい関係や、夫人の性欲の強さや、シークレットサービスの女ったらし具合がドラマの中心となっている。
そのため、ものすごく重要な大統領暗殺という事件が、どちらかというとゴシップのような軽いノリに見えてしまう。
それもそのはずだ。
主人公であるピートに関する情報が、「レーニンを守った男」ということと、「友人の妻を寝取った男」という二つの評価しか観客には与えられないからだ。
しかも、現状では夫人と不倫関係にあるというびっくりの禁忌を侵している。
これでピートを英雄としてみろというほうが無茶だ。
大統領を守りたいのか、自分の無実をはらしたいのか、もしくは大統領夫人をもう一度抱きたいのか、
彼の嫌疑を晴らしたいという気持ちは、どんどん不純なものに見えてしまう。
それに較べて、暗殺計画のほうはさらりとしか描かれない。
事件の全容がよくわからない。
元KGBとシークレットサービスがどのように結びついたのか、裏切っていたシークレットサービスはなぜ最初にその仕事を受けたのか、そしてなぜまた正義に目覚めようとしたのか(大統領をヘリに乗せずに間接的に彼が助けている)、ぜんぜん中身がない。
悪玉の元KGBの狙いも今ひとつだ。
アメリカに対してわだかまりがあるにしても、なぜそこまで大きな計画を立ち上げたのか、資金はどうしたのか、どのようにしてシークレットサービスに取り入ったのか、一向にわからない。
肝心の事件の全容がわからないため、余計にふしだらなホワイトハウスが焦点化されてしまう。
しかし、それも不十分だ。
なぜ彼が不倫していることが判明したのか、誰が告発したのか、こちらは不明なままだ。
おそらく裏切り者のシークレットサービスが彼を陥れるために、細工したのだろう。
だが、夫人との熱烈なキッスを描くよりも、こちらの詳細を描く方が先立ったはずだ。
最もひどいのは、ジャック(キーファー・サザーランドのこと)の元妻と、ピートとの会話をいきなり何の前触れもなく挿入したことだ。
しかも数十秒の短いシーン。
唐突に挿入されるため、何のことだかさっぱりわからない。
あの人、とか、君と寝ていない、とか、序盤にいきなり切り替わるから、びっくりする。
ホントはピートは良い人なんだと、言い訳しようとしているようにしか見えない。
これでは、余計にズボンのひもが緩いシークレットサービスなのではないかと思えてしまう。
逆効果の良い例だ。
映画の結構としては、「逃亡者」シリーズなどに似た構造になっている。
あるいは「交渉人」と言った方がいいか。
ともかく、逃げる方と追う方という典型的な結構である。
それをもっと上手く生かし切れれば、きっと面白くなったはずなのに、完全にゴシップに走ってしまったために設定は完全に死んでしまった。
シークレットサービスは何のサービスをしているのだ、という皮肉を込めたかったのだろうと思うしかない。
大統領にしても、あんた本当に狙われているのか、と言いたくなるくらい影が薄い。
狙いと手法が完全に不一致に終わっている映画、とまとめることが出来るだろう。
(2007/6/11執筆)
監督:クラーク・ジョンソン(「SWAT」ほか)
ホワイトハウス内が、頭弱すぎ。
シークレットサービスのピート(マイケル・ダグラス)は、大統領夫人と不倫関係にあった。
ある日、シークレットサービスが一人何者かに殺害されるという事件が起こる。
内通者がいることを情報屋から知ったピートは、全員に嘘発見器による尋問を試みる。
その事件に関連するように、大統領夫人との間柄を示唆する写真がピートの元に届く。
同じシークレットサービスのデヴィッド(キーファー・サザーランド)は、不審な行動をするピートがあやしいと考え始める。
ピートにまつわるお金の動きを察知したデヴィッドは、ピートの元に強制捜査に立ち入るが、ピートは逃げ出してしまう。
映画の一場面を観ただけでは、それが映画「ザ・センチネル」なのか、「24」なのか、わからない。
それくらい僕にとってはキーファーはジャック・バウワーなのだ。
それはさておき、ジャックを全部見きれない僕は、仕方がなく本作を観ることにした。
映画公開から実はしょうもないだろうと踏んでいたけれども、どうしても観たくなってしまうのが、「24」ファンだろう。
なんだか完全に乗せられたような気もするが、観てしまったので批評にした。
キャスティングやストーリーにあまり惹かれないようなら、観る必要はない、そんな暇つぶしにぴったりの映画に仕上がっている。
▼以下はネタバレあり▼
はっきり言って駄作である。
これがキーファーとダグラスの二人の主演でなかったら、きっと誰も観ないような、ビデオ映画になりさがっていただろう。
出来はかなりひどい。
映画館にいかなくてほんと良かったと思えてしまう。
映画の設定は大統領暗殺事件が軸になっている。
シークレットサービスはこれまで141年間一切裏切り者がでなかったことが、誇りであるが、彼らが、もし裏切ったとしたら?
というのがこの映画の設定上では最大の売りになっている。
だが、これがほとんどかすんでしまうほど、ホワイトハウス内のスキャンダルのほうが丁寧に描かれている。
大統領と夫人との冷たい関係や、夫人の性欲の強さや、シークレットサービスの女ったらし具合がドラマの中心となっている。
そのため、ものすごく重要な大統領暗殺という事件が、どちらかというとゴシップのような軽いノリに見えてしまう。
それもそのはずだ。
主人公であるピートに関する情報が、「レーニンを守った男」ということと、「友人の妻を寝取った男」という二つの評価しか観客には与えられないからだ。
しかも、現状では夫人と不倫関係にあるというびっくりの禁忌を侵している。
これでピートを英雄としてみろというほうが無茶だ。
大統領を守りたいのか、自分の無実をはらしたいのか、もしくは大統領夫人をもう一度抱きたいのか、
彼の嫌疑を晴らしたいという気持ちは、どんどん不純なものに見えてしまう。
それに較べて、暗殺計画のほうはさらりとしか描かれない。
事件の全容がよくわからない。
元KGBとシークレットサービスがどのように結びついたのか、裏切っていたシークレットサービスはなぜ最初にその仕事を受けたのか、そしてなぜまた正義に目覚めようとしたのか(大統領をヘリに乗せずに間接的に彼が助けている)、ぜんぜん中身がない。
悪玉の元KGBの狙いも今ひとつだ。
アメリカに対してわだかまりがあるにしても、なぜそこまで大きな計画を立ち上げたのか、資金はどうしたのか、どのようにしてシークレットサービスに取り入ったのか、一向にわからない。
肝心の事件の全容がわからないため、余計にふしだらなホワイトハウスが焦点化されてしまう。
しかし、それも不十分だ。
なぜ彼が不倫していることが判明したのか、誰が告発したのか、こちらは不明なままだ。
おそらく裏切り者のシークレットサービスが彼を陥れるために、細工したのだろう。
だが、夫人との熱烈なキッスを描くよりも、こちらの詳細を描く方が先立ったはずだ。
最もひどいのは、ジャック(キーファー・サザーランドのこと)の元妻と、ピートとの会話をいきなり何の前触れもなく挿入したことだ。
しかも数十秒の短いシーン。
唐突に挿入されるため、何のことだかさっぱりわからない。
あの人、とか、君と寝ていない、とか、序盤にいきなり切り替わるから、びっくりする。
ホントはピートは良い人なんだと、言い訳しようとしているようにしか見えない。
これでは、余計にズボンのひもが緩いシークレットサービスなのではないかと思えてしまう。
逆効果の良い例だ。
映画の結構としては、「逃亡者」シリーズなどに似た構造になっている。
あるいは「交渉人」と言った方がいいか。
ともかく、逃げる方と追う方という典型的な結構である。
それをもっと上手く生かし切れれば、きっと面白くなったはずなのに、完全にゴシップに走ってしまったために設定は完全に死んでしまった。
シークレットサービスは何のサービスをしているのだ、という皮肉を込めたかったのだろうと思うしかない。
大統領にしても、あんた本当に狙われているのか、と言いたくなるくらい影が薄い。
狙いと手法が完全に不一致に終わっている映画、とまとめることが出来るだろう。
(2007/6/11執筆)
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