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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

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2023-11-27 15:50:46 | 映画(さ)
評価点:70点/2023年/アメリカ/111分

監督:ウィル・メリック/ニック・ジョンソン

語りの重層性とメタ映像。

なんでもないホームムービー。
父親は楽しそうに娘を抱っこし、娘がカメラを回している。
父親は不意に鼻血を出す。
父親はその後、脳出血で倒れ、他界してしまう。
それから10年、母子家庭で育ったジューン(ストリーム・リード)は、18歳になり、母親から自立したい気持ちが真っ盛りだった。
母親グレイス(ニア・ロング)は1人で子供を育てていたが、ボーイフレンドを作り始めた。
反発していた娘は、2人が旅行に出かけるタイミングで、友人たちとパーティーする計画を立てる。
なんでもない秘密の会だったが、2人が帰ってくるはずの月曜日、待っても待っても母親は空港に現れない。
娘はたった1人で母親の失踪を追うが。

前作のコンセプトはそのままに、全てパソコン上の画面だけで描かれるサスペンスドラマ。
前作は運良く映画館に行くことができたが、今回は時間があわず、アマプラで鑑賞した。
SNSや情報機器に通じた現代ならではの作品になっている。
また、今回はティーンの娘が主人公で、よりリアルティがあるかもしれない。

いわゆる二転三転するというジェットコースター・ムービーなので、何も考えずに楽しめばい。
粗探しをしてしまうと本作の魅力は減退してしまうので、素直に受けとろう。
ネタバレされてしまうと全く面白くないので、予備知識は必要ないだろう。
十分楽しめる作品ではあるので、おすすめである。

▼以下はネタバレあり▼

同じコンセプトで撮られている、というだけで、特にナンバリングはされていないようだ。
面白さはそのままで、よりしっかりした制作陣のコンセプトをもって撮られている印象がある。

海外旅行から帰ってくるはずの母親とそのボーイフレンドが帰ってこない。
なぜなのか。
防犯カメラがあることをアメリカから突き止め、ホテルに問い合わせる。
LAを離れられない娘は、ネットを通じて現地で人を雇い、詳細を聞いてもらう。
ボーイフレンドの過去を突き止めた娘は、二人の関係を疑い始める。
彼は本気だったのか。
調べていくと、彼はプロポーズしようとしていたことがわかってくる。

母親のボーイフレンドは、シロなのか、クロなのか。
母親がなぜ一切の過去を持たない人間なのか。
黒幕はひょっとして母親?
次々にわかってくる事実と噂、謎によって二転三転していく。
この翻弄ぶりはおもしろかったし、サスペンスだけではなくホラー的要素もあり、娘のジューンに強く感情移入できるようになっている。

真相は、死んだと思われていた父親は実はひどいDV男で、証人保護プログラムによって母子は過去の一切のデータや記録を消去されて、新しい地で生活していた。
しかし、ちょうどその元夫が出所し、母親のグレイスは居場所を突き止められた。
いきなり近づかずに、夫は用意周到な計画を立てて、同じ刑務所だったケヴィンをボーイフレンドとして近づけさせ、二人だけの海外旅行を企てる。
グレイスを空港からとびだつ前に誘拐し、グレイスに似せた女とケヴィンで旅行させ、逐一それを娘に報告させ偽装工作する。
その後、二人は何者かに誘拐されたことにして、捜査の及ばない場所で未解決事件として有耶無耶にしようとした。

しかし、誘拐された女性がまったく別人の可能性があることを娘が突き止めたことで、夫は姿を現さざるを得なくなり、娘までも誘拐する。
窮地に追い込まれた母子だが、機転をきかせる娘がエマージェンシーコールをかけることで窮地を逃れて、ちゃんちゃん。

おもしろいのだが、実はこの話かなり破綻しているところがある。
一つは、いくらなんでもFBIなら彼女の証人保護プログラムの過去についてはつかんでいて当然で、真っ先に夫が疑われるはずである、ということ。
いくらなんでも、過去を知っているのが弁護士の一人で、それが殺されたらすべて過去が消え去ってしまうというのは無理がある。
記録がなくてもむしろ、証人保護プログラムではないかと疑うのが、捜査当局としては当然の展開だろう。

もう一つは、なんでそんなに夫は手の込んだ方法で元妻のグレイスを誘拐しようとしたか、ということ。
出所したてで、すぐに娘のパソコンをハッキングして、監視し、その上で複数の協力者が必要なリスキーな方法で、こんな犯罪を行ったのか。
そんなスキルがあるなら、もっと他の方法、たとえば二人をいきなり誘拐してしまって海外に逃亡するなど、ができるだろう。
そもそもこんなに複雑な事件を、しかも結局娘の前に姿を現すくらいの切り札をもちつつ、企てたのか。
さらにいえば、妻を誘拐するときに妻の前に、自宅まで姿を現して、自ら誘拐するという非常に危険な賭けまでやっている。
(元夫にすぐに身元がばれたのに、FBI捜査官たちは一向に彼女の身元が調べられなかったのは、さらに不自然)

だから、どうしても映画のための事件であり、事件やサスペンスとしては少々強引さが目立ってしまう。
この映画にのれなかった人は、そういう点だろう。
私はじつに素直な性格をしているので、最後の方までハラハラ楽しめた。
さすがに、父親が生きていたという事実がわかった時点で、こりゃだめだ、と思ったわけだが。

それでもこの映画は上手に作られていると思う。
それは、SNSや情報機器端末の使い方が、きちんとその特性をわきまえているということだ。
画面やネットからの情報は、非常に狭いものであり、常にその外側に世界や事実があるという入れ子型構造を取り入れている。
ほとんどが娘のパソコン画面を映し出しているが、そこから得られる情報は極めて狭く、不安になるのも安心するのもすべて針の穴から世界を覗くがごとく、バイアスがあり、欠如している。
彼女は様々な方法で情報を得ようと画策する。

防犯カメラ、メール、SNSサービス、家事委託サービス、多様性に富んでいるが、それが実はすべて父親に監視されていたということだ。
つまり、情報が入れ子型構造になっている。
常に彼女が得る情報には【外側】があってメタレベルで多様なのだ。

さらには、「ジェーンへ」と切り取られた子供の頃のホームビデオは、母親のグレイスの手によるものだったことが明かされる。
この物語全体が、私たちを視野狭窄に追いやっていることを暗示する。
しかも、その前には、この話全体がNetflixの番組だった、という【過去】にする演出まである。
私たちは、情報機器端末やサービスに頼って、様々な情報が蓄積されている。
一つの事件や一人の人生をすべて理解できるくらいに。

けれども、それすら、切り取られた情報であり、断片であり、フィクション(事実そのものではない)のだ。
その世界観を、この映画の作り手たちは意識している。
だからこそ、おもしろいし、怖いのだろう。
私は案外、このシリーズへの評価は高い。

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