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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

アメイジング・スパイダーマン

2012-07-11 22:08:28 | 映画(あ)
評価点:70点/2012年/アメリカ/136分

監督:マーク・ウェブ

ちょっと空気読めないピーターは、イマドキの高校生なのです。

高校生のピーター・パーカーは、幼い頃両親からおじさん、おばさんの元へ預けられた。
ある時、おじさんの家の地下室から父が残したバッグが出てくる。
そこには、ある研究についてのヒントが書かれていた。
父親と共同研究していたというコナーズ博士(リス・エヴァンス)の元を訪れる。
うまく忍び込んだピーターは、研究所の奥へと入り込み、遺伝子研究中の蜘蛛にかまれてしまう。
目を覚ますと驚くほどのパワーを手に入れてた彼は、有頂天になってしまう。

人気アメリカンコミック「スパイダーマン」の新シリーズ。
監督も、主人公たちもすべて一新した、全く新しい「スパイダーマン」を描く。
主人公のピーターを演じるのは「ソーシャル・ネットワーク」のアンドリュー・ガーフィールド。
若手の中でも最も注目される役者の一人である。
あのいかにもさえない容貌のトビー・マグワイアとは、全く違うイケメン、長身である。
根暗、秀才、運動音痴、奥手というこれまでのイメージとは真逆といってもよいほどだ。

全く新しくなったことで、賛否があるだろう。
特に前シリーズに思い入れが深かった人は、違和感があるに違いない。
違う作品として楽しむことが、まず大切だろうと思う。
どっちが好きかは、見終わったそのとき考えよう。

若いカップル、特に高校生あたりにはスマッシュ・ヒットしそうな作品だ。
3Dの出来は、間違いなくよいので、映像体験としても楽しめそうな一本である。

▼以下はネタバレあり▼

これがイマドキの高校生なのだろうなぁ、と思いながらほほえましく鑑賞した。
この映画を前シリーズの比較としてみてしまうのはやむをえないものの、そのスタンスでみると「どっちが正しいんだ」といいたくなる。
けれども、リトールド(再話)されているという認識のもの、この映画そのものを考えたい。
原作に近いのはどちらか、というよりも、どちらのほうが好きなのか、この「アメイジング」は何を描こうとしているのかということを考えたほうが気持ちがいいのではないか。

今回のピーター・パーカーは少々頭が弱いようだ。
さまざまな場面で認識不足ではないかと思える箇所が随所にみられる。
俗に言えば空気が読めていない場面が多々あるのだ。

たとえば、他人のIDで研究所に忍び込んだとき。
おとなしくしていれば良いものを、案内されたところとは違う場所へ進んでいく。
コードまで盗み見てスタッフ・オンリーもお構いなし。
そのあたりまではよくある展開かもしれないが、彼はなんとそこで研究対象のクモに触ってしまう。

またあるときは明らかに自分の責任でおじさんを死なせてしまい、悲しみにくれていたのに、すぐに立ち直ってしまう。
人助けをしたときに、いきなり自分の顔をさらしてしまう。
今回の悪役リザードの写真を撮るために自分のケータイで転送させようとして、自分の名前を知られてしまう。

いかにもオツムが悪い。
ヒーローであるという責任感よりも、自分の能力の高さに浮かれているシーンのほうが目立つ。
「スパイダーマン」のキーワードでもある「能力のある人間にはそれを使う責任が伴う」という台詞がこのシリーズでもおじさんが伝える。
しかし、それをあまり彼は理解するつもりはないらしい。
深く考えない行動が、見る人が見れば首をかしげたくなるだろう。
特に、とことん悩み抜いたトビーの前シリーズを知っている人にとっては、彼の行動には「??」がつくことだろう。

その意味で、非常に現代的だ。
彼女の父親が遺した遺言もあっさり破ってしまう彼は、見ていて腹が立つか笑えるかのどちらかだ。

そんな空気の読めない高校生がニューヨークのヒーローであることには変わりない。
この作品のテーマの一つに、ヒーローとはどういう人物であるべきか、ということが民衆の視点からも描かれている。
すなわち、助けられる民衆は、ただ助けられるという無力な人物たちとして描かれているわけではない。
リザードに対抗するスパイダーマンを助けるべく、彼に協力する。
この民衆の立ち位置が非常に現代的であり、世相を感じさせる。
「だれか助けてくれればいいのに」という受け身な「私」から、「ヒーローに自ら協力しよう」という能動的な「私」を描き出す。
それは3Dでこの作品をあえて撮ったことの意図も感じさせる。

要するに、スパイダーマンという存在をただフィクションの閉じられた世界ではなく、こちら側の見ている人間にも存在するかのようなリアリティである。
私たちもヒーローになれるのだ、もしくはヒーローに協力する人間にはなれるのだ、と当事者にさせる。
そう考えると、この映画の主人公は、どこにでもいる高校生でなければならなかったのだ。
極端な苦学生でも、極端な秀才の青年でもだめだったわけだ。
ちょっと間の抜けている、正義感を持ち合わせている「2012年のアメリカの高校生」なのだろう。

ちょっと気になる同級生が研究所の研究生だったり、その父親が警察官だったり、ご都合主義的なところはもはや愛嬌のレベルである。

僕がこの映画をそれほど批判的にはなれずに、ほほえましく見ることが出来るのも、そうした「民衆に寄り添った身近なヒーロー」だからなのだろう。

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5 コメント

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Unknown (けん)
2012-07-12 09:55:50
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
返信する
Unknown (kazuki)
2012-07-12 22:28:11
2度目のコメです!

いやぁ~自分が感じたことと一致してて、とても納得の行くレビューでした。。
今まで見たアメスパのレビューの中で一番きましたね。
僕はスパイディが大好きで、旧作も死ぬほど観てきました(笑)しかし、リブートされると聞いてマジかよ勘弁して!と初めは思ってましたが、監督がマーク・ウェブに決まってからは楽しみでなりませんでした!
アンドリューもコミュ障でオタクで、心に思ったことを口に出来ない高校生をうまく演じてて良かったですよね。

ところで”ベンおじさんが亡くなったあとのピーターはあまりにあっさりしすぎではないか”と多くのレビューで言われてますが、全編にわたって、ピーターの自分の思っている事を上手く口に出来ないという面が描かれていたので、それは必然的じゃないか??と僕は思いますね。。。(だからこそ、ラストの卵をおばさんに渡すシーンでピーターはこらえ切れず泣いていたと思います)

まぁところどころツッコミ所はありますが、良作だったと思います!
長文駄文失礼失礼しました...!
返信する
逆だったら。 (menfith)
2012-07-12 23:46:00
管理人のmenfithです。
小説のほうの「少年は残酷な弓を射る」をアップしておきました。
小説を読んだ方はぜひ読んでください。
読んでいない人は、是非小説の方を読んでください。
おもしろいと思いますよ。

>kazukiさん
コメントありがとうございます。

このシリーズ、発表されたのが逆なら、この映画ももっと愛されたでしょうけれどね。
出来じたいは悪くないと思います。
3Dは本当にうまく撮っていると思います。

日本はどうしても悩む主人公が好きですから、余計にこっちは不利かもしれませんね。
だからこそ、おじさんの死に対してもっとへこんでほしいのかもしれません。
異常に人の死に悲しみを求めるのも、日本人の特徴のようですから。

次はバットマンに期待です。
返信する
Unknown (タケヤ)
2012-07-13 19:09:26
TBさせていただきました。
宜しくお願いします。

今回のシリーズいいですね。
僕はサム・ライミ版より好きです。

menfithさんは僕より深い意味で
気に入っているようですが。
読めば読むほど・・・深いです。

返信する
TB返しました。 (menfith)
2012-07-16 22:09:36
管理人のmenfithです。
夏になって財布のひもがゆるみまくりです。
ちょっと仕事に余裕ができたので、映画館に行く時間を確保できそうです。
ぼちぼちアップしていきます。

>けんさん
TBありがとうございます。
コメント忘れていました…。
TBは返しましたのでご勘弁を。

>タケヤさん
TB、コメントありがとうございます。
好き嫌いは分かれるでしょうね。
前シリーズが売れていますし。

それでも十分楽しめるということは、きっとこの映画の完成度も相当なもののはずです。

この夏はアメコミ映画化がたくさん公開されるので、期待大ですね。
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