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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ベルセルク 黄金時代篇 ドルドレイ攻略

2012-07-08 07:37:40 | 映画(は)
評価点:75点/2012年/日本/93分

監督:窪岡俊之

及第点。問題はここから「アニメの意義」を示せるかどうか。

ガッツ(声:岩永洋昭)が鷹の団に入り、鷹の団はますます勢いを増していた。
ある日の戦で、キャスカ(声:行成とあ)が体調不良のところを敵将に襲われ、ガッツはキャスカを守るため二人で崖から落ちる。
甲冑のままキャスカを抱いて泳ぎ、一命を取りとめた二人の元へ、敵百人程度が彼らを囲んだ。
ガッツは、キャスカを逃がし、一人だけで敵百人と対峙するが、彼の頭の中には以前グリフィス(声:櫻井孝宏)が言っていた言葉がよぎっていた。

「ベルセルク」のアニメ映画化、第二弾。
物語はいよいよ佳境に入り、戦の中でガッツが葛藤するという最もおもしろい部分である。
例の豪華パンフレットは依然として発売されており、僕がパンフレット(通常版ね)を買おうと思ったら、もう売り切れていた。
人気は健在のようで、この感じで行くと「蝕」以降の物語も映像化されるかもしれない。

とはいえ公開時期はそれほど長いものにはならないだろう。
やはり大画面、高音質で見るべき映画だ。
見たい人は、できるだけ早く映画館に行こう。
今回に関していえば、映画館に行く価値は十分あると思う。

▼以下はネタバレあり▼

物語がおもしろい部分だからなのか。
あるいは3DCGという技法が制作陣にこなれてきたのか。
おもしろい。
十分映画としてお金を払ってもいいレベルまできたと思う。
この前の「覇王の卵」の時には酷評したが、今回はすごくよくなっている気がする。
ちなみに、この映画を見に行った後、「覇王の卵」をBDで見直した。
見直しても、一作目の僕の評価は変わらないし、二作目のおもしろさはやはり変わらない。

まず、サウンド・エフェクトがすごくよくなった。
金属がはじき合う音が耳に響き、厭な雰囲気をよく表現していた。
だから、戦場にいるという不安感、落ち着きのなさ、のようなものが伝わってくる。
彼らがいるのは、汚い場所、不安な場所、怖い場所、命に関わる場所なのだということがよくわかる。
その点は、軽い金属音しかなかった前作と大きな違いだ。

次に、カメラワーク、カメラアングルがとてもこなれてきている。
無駄にぐるりと回すようなカメラワークは、たしかに3D化された映像の力を伝えてくれてはいた。
しかし、それは「ファンサービス」のような「おれたちこんな技術もってるんだよ」というあざとい演出に見えてしかたがなかった。
今回は必要な状況を、必要なアングルでとらえているという安定感を感じた。
だから、映画として違和感なく、「及第点」である。
これは案外すごいことで、立体的な様子をイメージしているからこそ、つまりモーションキャプチャーしているからこそ、そういった演出ができるのだ。
実際にその場にいる雰囲気、というリアリティはものすごく向上した。

声優と映像のマッチングも今回は非常にうまくいっていた。
前作がどこか違和感のあるミスマッチな印象を受けたのに対して、今回はキャラクターたちが葛藤することもあり、感情移入しやすいようになっている。
特に、キャスカ、グリフィス、ガッツの三人の心理を中心にしているため、物語の軸もぶれない。
そこにジュドーやコルカス、そして国王などの脇役が見せる行動が、彼らの心理を補完していく。
物語の前提を説明しなければならなかった前作に比べて、そのあたりは自由に、フォーカスして描けている印象がある。

映画として、楽しめる作品であることは間違いない。

ただし、これで満足できるほど、僕の「ベルセルク」に対する思い入れは弱くない。
この映画は「普通の」映画だ。
これが本当に、世界に誇るクールジャパンなのかといわれると、正直厳しいと思う。
つまり、これは国際的なレベルで評価される作品とはいえない。
なぜだろう。

一つは物語が、真ん中ということもあり、「きわめて独立性が低い」ということだ。
これは前作の時にも触れたかもしれない。
やはりこの映画は「原作ファンのための映画」にすぎない。
だから、もう少し丁寧に説明するようなシークエンスがあってもよかった。
もちろん、テロップ、なんていうしょうもない方法ではない、台詞回しや見せ方によって、説明してほしい。

もう一つは、戦場における汚さがまだまだ足りないということ。
絵をもっと残酷にしてもよい。
だってそこは戦場なのだから。
重さ、汚さが描かれることで、命のやりとりをしているという切実さがでてくる。

それだけではなく、殺される人間について、もう少し説明してもよかった。
つまり、首を切られるのは生身の人間なのだということをしっかりと描いておいてほしい。
そうでなければ、次の「蝕」につながる、グリフィスの絶望が見えてこない。
「これだけの犠牲を払ってきたのに、かなわなかった夢」への絶望感を出すためにも、殺されていったのが紛れもない人間なのだということを実感させるシークエンスがほしかった。
だからこそ、貴族までにのし上がっていく高揚感も高まるのだ。
やっと手にしたものが、どれほど「異常」なものなのか、舞い上がった団員たちの気持ちにも影響するだろう。
このあたりは次作の「降臨」への課題だろう。

そして、最後に。
これが本当に「アニメでならなければならない理由」を説明するのに足るのか、ということだ。
これをそっくりそのままたとえば実写映画にしたときに、どちらの方が感動できるだろうか、ということだ。
アニメであることの意味、それを観客にしっかりと印象づけられるだけの「衝撃度」はまだまだない。
映画としてはおもしろい。
けれども、アニメ映画を標榜するのならばそれ相応の覚悟が必要だ。
たとえば、他人の夢にぶら下がらない生き方を決意し、友人と決別するくらいの覚悟だ。

原作は文句なしにおもしろい。
これを題材にしている限り、失敗はできないし、失敗するはずがない。
次回も見に行くだろう。
今度は大きな期待を胸に。

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