評価点:62点/2015年/アメリカ/126分
監督:アラン・テイラー
見所:見えそうで見えないサラのカラダ
2029年抵抗軍はスカイネットに攻勢をかけ、スカイネットの中枢部を撃破することに成功する。
しかし、スカイネットは最後の手段として時空転送装置を完成させていた。
抵抗軍の要である、ジョン・コナーを生まれる前に抹殺する計画だったのだ。
そして、それを知っていたジョンは、カイル・リース(ジェイ・コートニー)をその護衛として送り込む。
カイルは送り込まれる寸前、何者かにジョンが襲われる姿を見た。
1984年に降り立ったカイルは、いきなり見たこともないターミネーターに襲われる。
そのターミネーターは液体になる新型だった。
聞かされていた計画とはちがう展開に驚くカイルのもとに、たくましいサラ・コナーが現れた。
実質「T5」となる、「ターミネーター」シリーズの最新作。
だが、新機軸となっており、これまでのシリーズを生かしながら、無視しているところもある。
具体的には「1」「2」の設定はほぼ生かされているが、「3」「4」はあまり生かされていない。
というより、ほとんどなかったことになっている。
あってもなくても、どちらにしても影響がないような部分を描いているので、シリーズのナンバリングはされなかったのだろう。
シュワちゃんを存分に描くために、新たな設定が設けられているところもある。
ファンならある程度理解できるが、これまで見たことがない人には、ちょっと戸惑うだろうし、この作品一つでの完結性は弱い。
どういうふうにこの作品を捉えるか、私はかなり賛否が分かれるのだろうと予想する。
どちらにしても、ファンにとっては見るしかない映画であることは間違いないので、映画館に足を運ぶことになるのだろうが。
▼以下はネタバレあり▼
まだ続けるつもりなの? というのが私の意見だが、どんどん話が複雑化していくため、もはや一つの「スターウォーズ」的な一大絵巻になるつつある。
この展開だと、おそらく次回作も描けるだろう。
それがおもしろいかどうかはわからないが。
そのままストーリーを追ってもしかたがない。
少し突っ込んだ分析をしてみようと思う。
ただ、そのためにはある程度ストーリーも追わねばなるまい。
カイルが降り立った1984年はすでにターミネーターがサラを襲ったあとの世界だった。
サラは9歳の時にオールド・タイプのターミネーターに守られて生きていた。
1984年にはターミネーターは2体送られており、1体はオールド・タイプ(若いシュワ)で、もう1体は新型の液体金属のイ・ビョンホンである。
何とか液体金属も退けた二人と1体(おじさんシュワ)は、転送装置によって1997年のスカイネット起動の日への転送を目指していた。
そうすることで完全に世界を救おうとしたのだ。
この時点で過去は二重になっている。
2029年のジョンが知っていた1984年とは違い、サラはすでにターミネーターと遭遇している。
だから、カイルが生きていたはずの過去と、既に変わってしまった過去の二つを体験していることになる。
カイルのもう一つの記憶に、2017年という数字があった。
その記憶を頼りに、転送装置の年号を2017年に変える。
そして、2017年は存在し、現れたのはカイルが知るジョンの姿だった。
そのジョンは、スカイネットに浸食された姿で現れ、敵となる。
ジョンを退けスカイネットの元になるジェニシスというソフトを開発していたサイバーダイン社を爆破し、二人は完全に平和を手に入れ、新たな人生を生きることを決意する…。
だが、この話には語られなかった謎が残されている。
だから、違和感が取れないし、カタルシスよりも、どことなく物足りなさが残る。
時系列で考えてみよう。
新しい1984年にはすでにサラ・コナーは訓練された状態だった。
それは幼少期に襲われたことで自分の運命を知ったからだ。
ということは、1984年に送り込んだはずの「未来」があるということだ。
「ドラゴンボール」のセルではないが、カイルが送られた時点ですでに違う過去に送られていたということになる。
幼 少 期:ターミネーターが襲い、サラは運命を知る。
1984年:サラのもとにカイルが訪れ、サラは子を産む。それがジョンと名付けられる。
1997年:本来スカイネットが起動するはずだったが、何らかの事情で先送りされ、未然に防がれる。
※おそらくこれが、「T2」の話とつながってくる。
2017年:スカイネットが起動され、機械対人間の全面戦争が始まる。
※おそらく機械化されたジョンが数年前に送り込まれその結果開発された新ソフトによってスカイネットとされる。
2029年:スカイネットはジョンによって滅ぼされ、それを防ぐために1984年にサラ・コナー抹殺計画を実行する。
しかし、それを防がなければならないことをジョンは予測し、ジョンもまたカイルを送り込む。
さらに、「T2」以降の過去の改変によってスカイネットも過去の状況を把握しており、ジョンを襲いスカイネットの起動阻止計画を止めようとする。
機械化されたジョンは、自ら過去に戻り、2017年のスカイネット起動を実現させる。
ここからは想像するしかなくなってくる。
一つは、なぜ9歳の時点でターミネーターが送られたのかということ。
そしてそれをどのように未来で知ったのかということ。
少なくとも、そのターミネーター(おじさんシュワ)は、1984年に襲ってくるジョンは液体金属であることを知っていた。
だから酸の雨を降らせるトラップをしこむことができたのだ。
また、逆に未来から来たそのシュワちゃんは、旧型であり「アップデートされた」シュワではない。
液体金属ほど発展した時代ではなく、でもジョンによって「調教」されるほどは発展した時代から送られたことになる。
2017年の時点で防がれた「審判の日」はさらにずれ込んで実施され、2017年以降にジョンが生まれるはずである。
そうなると2029年の人間軍の勝利もさらにずれ込んで実現し、カイルはどの時点で1984年に送られることになるのだろうか。
そのあたりのタイム・パラドックスは、物理的な法則で都合良く説明しうるとしても、釈然としない部分は残る。
また、「アップデートされた」というシュワちゃんは、今後どうするつもりなのか。
「T2」ではチップを壊すために自ら溶鉱炉に飛び込んだ彼の潔さはもはやない。
エンドロール中にあった、スカイネットのカットは何を意味しているのか。
きっと「まだまだ作るよ」ということなのだろう。
この映画がカタルシスが少ないのはそうした釈然としない部分が多すぎるためだろう。
エンターテイメント作品なので、「ヱヴァ」ほど謎を多くしなくてもよいが、よくよく見れば矛盾は解決されるように描かないと自律性は低くなる。
私は正直、それほどおもしろいとは思えなかった。
努力賞はあげるが、佳作とはいかなかった、といったところか。
監督:アラン・テイラー
見所:見えそうで見えないサラのカラダ
2029年抵抗軍はスカイネットに攻勢をかけ、スカイネットの中枢部を撃破することに成功する。
しかし、スカイネットは最後の手段として時空転送装置を完成させていた。
抵抗軍の要である、ジョン・コナーを生まれる前に抹殺する計画だったのだ。
そして、それを知っていたジョンは、カイル・リース(ジェイ・コートニー)をその護衛として送り込む。
カイルは送り込まれる寸前、何者かにジョンが襲われる姿を見た。
1984年に降り立ったカイルは、いきなり見たこともないターミネーターに襲われる。
そのターミネーターは液体になる新型だった。
聞かされていた計画とはちがう展開に驚くカイルのもとに、たくましいサラ・コナーが現れた。
実質「T5」となる、「ターミネーター」シリーズの最新作。
だが、新機軸となっており、これまでのシリーズを生かしながら、無視しているところもある。
具体的には「1」「2」の設定はほぼ生かされているが、「3」「4」はあまり生かされていない。
というより、ほとんどなかったことになっている。
あってもなくても、どちらにしても影響がないような部分を描いているので、シリーズのナンバリングはされなかったのだろう。
シュワちゃんを存分に描くために、新たな設定が設けられているところもある。
ファンならある程度理解できるが、これまで見たことがない人には、ちょっと戸惑うだろうし、この作品一つでの完結性は弱い。
どういうふうにこの作品を捉えるか、私はかなり賛否が分かれるのだろうと予想する。
どちらにしても、ファンにとっては見るしかない映画であることは間違いないので、映画館に足を運ぶことになるのだろうが。
▼以下はネタバレあり▼
まだ続けるつもりなの? というのが私の意見だが、どんどん話が複雑化していくため、もはや一つの「スターウォーズ」的な一大絵巻になるつつある。
この展開だと、おそらく次回作も描けるだろう。
それがおもしろいかどうかはわからないが。
そのままストーリーを追ってもしかたがない。
少し突っ込んだ分析をしてみようと思う。
ただ、そのためにはある程度ストーリーも追わねばなるまい。
カイルが降り立った1984年はすでにターミネーターがサラを襲ったあとの世界だった。
サラは9歳の時にオールド・タイプのターミネーターに守られて生きていた。
1984年にはターミネーターは2体送られており、1体はオールド・タイプ(若いシュワ)で、もう1体は新型の液体金属のイ・ビョンホンである。
何とか液体金属も退けた二人と1体(おじさんシュワ)は、転送装置によって1997年のスカイネット起動の日への転送を目指していた。
そうすることで完全に世界を救おうとしたのだ。
この時点で過去は二重になっている。
2029年のジョンが知っていた1984年とは違い、サラはすでにターミネーターと遭遇している。
だから、カイルが生きていたはずの過去と、既に変わってしまった過去の二つを体験していることになる。
カイルのもう一つの記憶に、2017年という数字があった。
その記憶を頼りに、転送装置の年号を2017年に変える。
そして、2017年は存在し、現れたのはカイルが知るジョンの姿だった。
そのジョンは、スカイネットに浸食された姿で現れ、敵となる。
ジョンを退けスカイネットの元になるジェニシスというソフトを開発していたサイバーダイン社を爆破し、二人は完全に平和を手に入れ、新たな人生を生きることを決意する…。
だが、この話には語られなかった謎が残されている。
だから、違和感が取れないし、カタルシスよりも、どことなく物足りなさが残る。
時系列で考えてみよう。
新しい1984年にはすでにサラ・コナーは訓練された状態だった。
それは幼少期に襲われたことで自分の運命を知ったからだ。
ということは、1984年に送り込んだはずの「未来」があるということだ。
「ドラゴンボール」のセルではないが、カイルが送られた時点ですでに違う過去に送られていたということになる。
幼 少 期:ターミネーターが襲い、サラは運命を知る。
1984年:サラのもとにカイルが訪れ、サラは子を産む。それがジョンと名付けられる。
1997年:本来スカイネットが起動するはずだったが、何らかの事情で先送りされ、未然に防がれる。
※おそらくこれが、「T2」の話とつながってくる。
2017年:スカイネットが起動され、機械対人間の全面戦争が始まる。
※おそらく機械化されたジョンが数年前に送り込まれその結果開発された新ソフトによってスカイネットとされる。
2029年:スカイネットはジョンによって滅ぼされ、それを防ぐために1984年にサラ・コナー抹殺計画を実行する。
しかし、それを防がなければならないことをジョンは予測し、ジョンもまたカイルを送り込む。
さらに、「T2」以降の過去の改変によってスカイネットも過去の状況を把握しており、ジョンを襲いスカイネットの起動阻止計画を止めようとする。
機械化されたジョンは、自ら過去に戻り、2017年のスカイネット起動を実現させる。
ここからは想像するしかなくなってくる。
一つは、なぜ9歳の時点でターミネーターが送られたのかということ。
そしてそれをどのように未来で知ったのかということ。
少なくとも、そのターミネーター(おじさんシュワ)は、1984年に襲ってくるジョンは液体金属であることを知っていた。
だから酸の雨を降らせるトラップをしこむことができたのだ。
また、逆に未来から来たそのシュワちゃんは、旧型であり「アップデートされた」シュワではない。
液体金属ほど発展した時代ではなく、でもジョンによって「調教」されるほどは発展した時代から送られたことになる。
2017年の時点で防がれた「審判の日」はさらにずれ込んで実施され、2017年以降にジョンが生まれるはずである。
そうなると2029年の人間軍の勝利もさらにずれ込んで実現し、カイルはどの時点で1984年に送られることになるのだろうか。
そのあたりのタイム・パラドックスは、物理的な法則で都合良く説明しうるとしても、釈然としない部分は残る。
また、「アップデートされた」というシュワちゃんは、今後どうするつもりなのか。
「T2」ではチップを壊すために自ら溶鉱炉に飛び込んだ彼の潔さはもはやない。
エンドロール中にあった、スカイネットのカットは何を意味しているのか。
きっと「まだまだ作るよ」ということなのだろう。
この映画がカタルシスが少ないのはそうした釈然としない部分が多すぎるためだろう。
エンターテイメント作品なので、「ヱヴァ」ほど謎を多くしなくてもよいが、よくよく見れば矛盾は解決されるように描かないと自律性は低くなる。
私は正直、それほどおもしろいとは思えなかった。
努力賞はあげるが、佳作とはいかなかった、といったところか。
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