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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

LOGAN/ローガン

2017-06-08 19:37:54 | 映画(ら)
評価点:63点/2017年/アメリカ/137分

監督:ジェームズ・マンゴールド

ローガンは何と闘うのか。

2029年、すでにミュータントは新たに生まれてくることがなくなり、過去の遺物となってしまった。
アメリカで運転手をしているローガン(ヒュー・ジャックマン)は、チャールズ(パトリック・スチュアート)らとともに、ひっそりと暮らしていた。
彼は体内のアダマンチウムが劣化し、死に瀕していた。
そんな中、メキシコの女性がいきなり彼を「ウルヴァリン」と呼び助けを求めてきた。
無用なトラブルに巻き込まれたくないローガンは、取り合わなかったが、チャールズはローガンにその依頼を受けるように忠告する。

様々なメディアを使って、この作品が「ローガン」を演じる最後になると、ヒュー・ジャックマンは語っている。
そして、そのためにR指定をなんとか取り付けるように、交渉したことも伝わっている。
ただならぬ覚悟で臨む、そんな作品だ。
あまり見るつもりもなく、そして「Xメン」に興味も無い私にとっては、候補に入っていなかったのだが、ヒュー・ジャックマンのそこまでの覚悟を聞けば興味がわいてきた。

他にも候補作品はあったが、今回はこの作品を優先してみようと決めていた。
平日だったが、なかなかの入りで、暇な人はどこにでもいるのものだと感心した。

▼以下はネタバレあり▼

前にも書いたが、ローガンは衰弱しきっている。
もはや、あの「ZERO」のころのかっこよさやたくましさはない。
酒に溺れ、ただ世の中から逃げることだけを考えている。
周りの目に触れない生活をしたい、と。

そんな彼に、遺伝子操作によって作られたローラという少女が現れる。
両手にはツメがあった。
そう、彼女は、ローガンの遺伝子をもつ、「娘」だったのだ。
その娘を「特許品」と呼ぶ研究者たち、それから逃げるローガンとローラ(ダフネ・キーン)という構図のロードムービーとなる。
メキシコからアメリカを縦断して、カナダへ至るという話だ。
また、「ジェーン」のシーンやセリフを引用しての、西部劇の様相も呈している。
ローガンは、娘を守るように依頼された、さながら用心棒のようなものか。

話としては非常に単純で、オーソドックスだ。
私はひそかに「ダークナイト」以来の衝撃を期待していたので、ちょっと拍子抜けだった。
だが、それ以上にこの映画が拍子抜けだったのは、物語としてもアクションとしてもカタルシスに欠けるということだった。

決定的なのは、マーヴル・コミックなのに、ヴィランがいないのだ。
もちろん、研究所たちの追っ手やローガンの影となる「X24」なる特許品は敵として登場する。
だが、それは、彼らの追っ手であるというだけで、いわゆる「ヴィラン」ではない。
Xメンと対峙するはずの、社会的記号を持った敵が居ないのだ。

たしかに追っ手たちは、多国籍企業や人を物としてしか扱わないという象徴ではある。
だが、それはヴィランではない。
だから、ローガンは何と闘えば良いのか、物語としてぼやけてしまっている。

物語のテーマはまさにそこで、「何のために闘うのか」ということがぼやけてしまったローガンが、闘いの意味を見出す物語となっている。
髭を生やしたローガンは、かつてのウルヴァリンではない。
飯のために、あるいは世間から逃げるための金を得るために生きているにすぎない。
自己防衛のためにはツメを使うことがあっても、それは闘う理由ではない。
Xメンとして、誰かのために闘うことができなくなってしまっている。

そんな彼が、子どもたちに髭を剃られて「ウルヴァリン」になる。
それがラストだ。
彼はそうされることによって、闘う意味を見出すのだ。
だから、少しずつ使うべき薬を一気に使ってしまう。
彼は誰かを背にして、闘うべき存在なのだ。

だが、それに比して、ヴィランはそのことを象徴する相手として誰もいない。
X24は彼の亡霊として、「闘う理由を見出せないロボット」として登場する。
だが、無個性で内面を描かれない者、しかもローガンと同じ武器しかもたないという「ヴィジュアルとしても弱い」敵だ。
なぜ他の遺伝子をもつ奴を出してこなかったのか。
そうすれば少しはエキサイティングになれたはずなのに。
闘いを通して対話をすれば、ローガンとの対比も明確になったのに。

ということで、物語としての盛り上がりに欠けてしまう。

そして、アクションについても同じだ。
ツメと銃しか出てこない。
だから最後の最後まで、単調で、ローガンによる非ミュータントの虐殺映画になってしまっている。
ローガンが大事に持っているアダマンチウムが奴の弱点であることは、明白なのに、なぜ使わない。
危機感が喪失したアクションなど、おもしろくない。
しかも、やたらとグロテスクなので、余計にカタルシスをそぐ。
血を見せずに、重さを出す工夫が必要だった。

R指定かどうかは問題ではないことを、ちょっと見過ごしてしまったのではないか。

ということで、ファンでもなかった私には不発に終わってしまった……。

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