キリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500kmもの巡礼路を、仲の良くない兄弟3人が一緒に歩くことになった。
何とその巡礼は親が残した遺産相続の条件なのだ無神論者の上、歩く事なんて、大嫌いその上険悪な兄姉弟が、物欲のを燃やしながら、遥かなる旅路の第一歩を踏み出した
2ヶ月の長旅の連れとなるメンバーは、イスラムのメッカへ行くと思い込んでいるアラブ系少年わけありな女性と個性的な面々。それぞれの事情を背負って歩き始めた彼らを待っているものは????
ツアーのメンバーは、この9人です
一番手前のスカーフをした男性は、ベテランガイドのギイ
右後ろの男性は3人兄弟の長男ピエール会社経営と家庭のストレスで薬に依存
左後ろはピエールの弟、クロード漬けで一文無し、家族にも見捨てられています
その後ろに二人のハイティーンの女の子、エルザとカミーュ楽しい山歩きと勘違いしてお気楽に参加
その右後ろの頭をターバンで包んだ物静かな女性はマチルド
その後ろに若いアラブ系移民の少年サイッド、従兄弟のラムジィ、実はラムジィはイスラムのメッカに行けるとサイッドに騙され、二人分の旅費を苦しい家計から出してもらい参加サイッドはカミーュを追って来ただけ
そして一番後ろののオバサンはピエール&クロードと兄弟、教師のクララ
という9人の男女がさまざまな思いを胸に、フランスのル・ピュイから、巡礼の旅がスタート
果てしなく続く岩山の道、文句タラタラ、さらには差別的な言葉を不用意にもらすピエール。自分の荷物は持参しないのに、他人の水を遠慮なく飲んでしまう勝手なクロード。好戦的なクララはそんな2人と何かにつけていがみ合う
3人のいさかいに眉をひそめるマチルドに向かって、「お母さんを亡くしたばかりなんだよ。許してあげて」と人を悪く思うことを知らない純粋なラムジィだけが、彼らを理解しようとする。
ある日、リュックを軽くしようと荷物を投げ捨てたピエール、必要な薬まで一緒に捨ててしまい、旅が続けられないと半狂乱騒ぎ出す穏やかなギイが今まで押さえていた怒りを爆発「誰も彼も自分の事ばかりだ!きれいな景色も見てやしない。帰りたいのは俺のほうだ」ギイはわが子の病気を知りながら、ガイドの仕事を放り出すわけにはいかない苦悩をピエールにぶつける。だがピエールもまた、アルコール依存症の妻を残してきた辛さをぶちまけるのだ胸をつかれる思いで見ているみんな・・・・。それぞれ、多かれ少なかれ重荷を背負っているクララを失業中の夫のかわりに家族を養うという現実に生きている。マチルドもまた、過酷な運命のなかで絶望と希望の狭間にいた・・・・。
少年ラムジィのは、「メッカ」に行くこと、そして旅の間に失読症を直して大好きな母に喜んでもらうことだった。サイッドはラムジィに文字を教えてあげて欲しいと、クララに頼む。だがクララは断った。カミーュがめちゃくちゃなやり方で教え始めたのをみて、ついにクララは文字を教え始める。貧しいラムジィが生きてゆくのに必要な言葉や文字を、戦闘的な精神をもって教えてゆくクララ
数百キロもともに歩くうち、ピエールもまた、自身の変化に気づく。ある夜、ラムジィたちは泊められないと差別する修道院に啖呵をきり、ポケットマネーで全員をパラドールに泊めるという自分でも信じられない行動に出たいつしか薬依存症も治っていた。
爽やかな風を全身で受け、ピレネーを越えるフランスからスペインへ・・・・。残り800km地点の丘から下界を臨んだとき、皆はいつしか家族のように感じていた。
一行はまっすぐ続く一本道を、急勾配の道を、天候に関係なくひたすら歩き続ける。それはまさに人生のように長く起伏に富んだ道、今や彼らは距離的も精神的にも出発点から遥に離れた地点に立っていた。
1500kmもの徒歩の旅の先のゴールには何が待っているのだろう?そしてささやかなラムジィの願いは叶うのだろうか?
監督コリーヌ・セローは自らを“無神論者”だという。巡礼について、彼女は心と身体を変容させるものだという。この作品はすべての宗派の人々のために、そしてすべての無神論者の人々のために大きく扉を開いた作品である。そして映画のジャンルも、社会派映画でも、エコロジー映画でもない。温かい人間の絶対なる神とでも呼べる精神的な愛が溢れた映画であると・・・・。
世界中が心病んでいる時代だからこそ、もっと人とふれあうことが大事単にウォーキングするという事だけでなく、一緒に何かに向かって歩くといういう素晴らしさは心も体にもだ。曲がりくねった、山道はまさに人生そのもの。その道を助け合いながらこの9人が変わっていく姿に感動した。本当に人生って捨てたもんじゃない。また登山を再開したいと強く思いました。でも1500kmは大変かも
映画『サン・ジャックへの道』 詳細はこちらから
追記:サンティアゴ巡礼路とは?サンティアゴ・デ・コンポステーラはスペイン北西部に位置する中世の面影を残す街。9世紀にキリスト十二使徒の一人である聖ヤコブの墓がこの地で見つかったとされ、エルサレム・ローマと並ぶキリスト教三大聖地のひとつ。この巡礼路は、ヨーロッパでも一番人気が高く、宗教を超えて多くの人が歩いている。聖ヤコブはスペイン語ではサンティアゴだが、フランス語ではサン・ジャックで、巡礼路のシンボルであるホタテ貝も意味する。1993年に世界遺産に登録。紀伊半島の熊野古道とは姉妹路の関係を結んでいる。
※5月18日、京都シネマにて鑑賞、6月1日で上映終了しました。