2007年10月19日、アメリカ中部時間20時13分。ブッシュ大統領暗殺
その時、世界は試される。
10月31日、東宝シネマ二条にて鑑賞。ブッシュ大統領は死んでいないが、もしブッシュ大統領が暗殺されたら、どうなるか?というかなり大胆な設定。
あの9・11同時多発テロ事件とそれに伴う「反テロ戦争」を推し進めてきたジョージ・W・ブッシュその人が、泥沼化するイラク情勢などへの批判や怒り高まるアメリカ国内で銃弾に倒れたとすれば?
そんな大胆な設定に基づいた映画「大統領暗殺」は極めてユニークな手法を駆使して撮影された前代見聞の衝撃作だ。昨年9月に行われたトロント国際映画祭において最も注目され、作品の賛否両論が巻き起こる中、国際評論家賞を受賞した全米では500館以上での公開が予定されていたが、圧力によって91館での限定上映となる。(内容が内容だけに、やはり・・・・)
イタリアでは、公開初日が元首相アルド・モーロが1978年に誘拐された日(後に死体で発見)だったこともあり、劇場の30%が上映を辞退するなど・・・・世界各国で物議をかもしている。
何故ブッシュ大統領が暗殺されたのか。そのときアメリカはどう動き、そして世界どう変わるのか?
野心的な問題定義と斬新なエンタティメント性を共存させる稀有な作品「大統領暗殺」から見えてくる、私たちが生きる世界の現在と未来とは???
事実とは違うのだが、まるで本当のように感じた。映像の中には本物のブッシュ大統領の姿も映し出され、物語はまるで繋がっているようかのように見える。撮影と編集のやり方が上手いのかも。
このシーンは撃たれた直前のシーンだったような?
さてどんなストーリーなのか?
2007年10月19日、アメリカ合衆国第43代目大統領ジョージ・W・ブッシュを乗せた専用機は緊迫した雰囲気に包まれたシカゴに降り立つ。その日、シカゴ経済クラブでの演説が予定されていたシェラトン・ホテルまでの沿道は一万人を超える抗議団体であふれかえっていた。デモ隊は解決の見えないイラク派兵、さらには北朝鮮やイランへと問題が波及する現状に、反ブッシュが訴えるプラカードを揚げ、シュプレヒコールや罵声を浴びせかけていた
デモ隊と警官の間では暴力的な衝突が起こる最中、大統領を乗せたリムジンは何とかホテルに到着。大統領は「今日は風の強い日だ」などとお得意のとぼけたジョーク始まる演説を快調に進める。場内で喝采
そんな一方、外ではデモ隊がさらに数を増やして、大統領を待ち受けていた演説を終えた大統領はホテルの外で人々と握手を交わす。そしてその後リムジンに乗り込もうとした瞬間、二発の銃弾が大統領に向かって放たれた
崩れ落ちる大統領に騒然とする現場合衆国大統領狙撃の一報は、瞬く間に臨時ニュースとして、TV画面などを通して全米、さらには世界各地に広がった
大統領は病院に運ばれ大動脈修復手術を受けたが、医師団の必死の努力も空しく、駆けつけた夫人と関係者に見守られながら死去する。このことは世界に衝撃を与える
本人がこの映画で、この場面を見たら、やっぱり気分よくないだろうね。
犯人探しに警察とFBIは総力をあげて捜査を開始するが、目撃証言を重視しすぎて、半日で、300人以上の人たちが拘留される始末
やがて少しずつ有力な情報が入り、容疑者は数人に絞られる。以下の人たち。それぞれ動機があり、事件当日現場付近で目撃されている。
〇過激派のデモ隊のリーダー
◎イラク戦争復員兵
〇イスラム教徒
ところが、犯人として逮捕されたのは、シリア人のコンピューター技術者だった 狙撃したと思われる部屋にかすかな指紋と容疑者の衣服の硝煙反応が・・・・・。そして決定的な証拠?となったのはアフガニスタンのタリバーンの訓練キャンプに参加したという事実だった。
規定どおり、チェイニー副大統領が大統領に就任。そして、そのチェイニーさんはこの事件をきっかけに、シリア侵攻を画策し始める
容疑者の妻の訴えや現場の鑑識官の疑念をよそに。第一審は有罪判決を下し、事件は幕が引かれようとしていた。
ところが、この判決を翻する小さな記事が新聞の片隅に・・・・・。それは新たな真犯人の存在を告げるものであった
監督・脚本・製作 ガブリエル・レンジ
イギリス、チェスター生まれ、ブリストル大学医学部で学んだ後、カーディフ大学・大学院でジャーナリズムを専攻。イギリスのテレビでドラマ・ドキュメンタリーを監督する。本作で、トロント国際映画祭で国際評論家賞を受賞
本作については、様々な人が賛否両論の意見を述べている。
卑劣で言語道断そんな恐ろしい話で利益を得ようとしている人にうんざりします。
ヒラリー・クリントン上院議員
痛烈にして鮮やか!完璧な信憑性を持っている
米タイム・アウト誌
観客にパンチを浴びせ、仰天させる。ブッシュ政権、そしてメディアの役割に対して、重大な疑問を見事に投げかけている。
英ガーディア紙
もし彼の家族だったら、非常に辛いだろう。彼がやったことが正しいか正しくないかは別として、世界で最も大変な仕事かもしれないアメリカ大統領を思いやるべきだ。
ケビン・コスナー(映画「JFK」主演)
ということで、それぞれの意見、それなりに納得できるような気もするが。監督自身、ブッシュ批判のために製作したわけではないと語る。9・11のテロ事件以降、我々全員に影響してきた厳粛な問題を扱う真剣な映画になっていると。“もし~だったら、どうなるか?”という仮説に基づき、未来のレンズを通して現実を見つめなおす手法としては非常に新鮮でパワフルだ
過去にもアメリカ大統領の何人かは、暗殺されている。その事実を考えると、決してとんでもない発想とはいえない。確かに大胆な設定かもしれないが、今後そのような事態が起こる可能性はあるかもしれない。ましてや、イラクへの派兵によってテロ戦争を起こしているわけだから、彼を恨む敵も多いはず
それにしても、レンジ監督、凄い映画を作ったと思う心の中で思っていても、なかなか行動にはうつせない。ましてや、メディアを揺るがすなんて・・・・・。やはり大胆な設定だと改めて思った。
さてブッシュ大統領の胸中は?ホワイトハウスのスポークスマンから“コメントするに値しない”と言うコメントをもらったらしい。多分本人のコメントだろう。怒っておられるようですねそりゃ気分悪いだろうね。自分を否定されたとお怒りでしょうね。
追記:何故?2007年10月19日なのか・・・・・これは勘に近いものなのだそうだ。ある未来の日付を想定しつつ、かつ自分たちが想像できる範囲の未来にしたかったという。2007年10月19日くらいであれば、イラク情勢も北朝鮮問題もあまり変わっていないと思ったから。