アンディ・ウォーホルのファクトリーに突然舞い降りた、飛び切りモードで華麗な堕天使 、イーディ・セジウィックの物語。
こんな女性がアンディの影にいたとはまったく知りませんでした。そしてこんなに破滅的な人生を歩んだ彼女にはどんな思いがあったのでしょうか?観終わった後、どわっと悲しみが溢れてきました
9月12日、「グーグーだって猫である」の後、この作品を鑑賞。18:45からの上映ということで、しばらく待つことになる。
ポップアート言えば、一番に思い浮かぶのがアンディ・ウォーホルですよね。キャンベルスープの缶や、コカコーラの派手なポスターは彼を知らなくてもきっと一度は見ているはず
1960年代、ウォーホルはニューヨークに“ファクトリー”と呼ばれるスタジオを構え、ポップ・アートの旗手としてカルチャーシーンに君臨していた。アーティスト、ミュージシャン、詩人、俳優たちの活気と才能で溢れていたサロンのような“ファクトリー”でアンディは、皆が知っている作品を次々と生み出した。“ファクトリー”は工場という意味、まさに工場のように作業を行い、大衆文化の壁を取り払うというポップ・アート旋風巻き起こしたのだ
ある日、ウォーホル(ガイ・ピアース)は人だかりの中心にいた一人の飛びきり魅力的な女の子に心奪われる
その女の子の名前は、イーディ・セジウィック(ジエナ・ミラー)、彼女はサンタバーバラの由緒ある名家の令嬢だ大きな瞳に印象的なメイク大きなイヤリングを揺らしながら、やせっぽっちな身体で自由きままに振舞う。たちまちウォーホルと“ファクトリー”のお気に入りとなった
ケンブリッジの美術学校を退学して、ニューヨークにやって来たイーディ、誘われるがままにウォーホルの前衛的な映画に出演。その美貌と圧倒的な存在感で瞬くまにメディアの注目を浴びるようになる
そんな彼女を“ユース・クエイカー”(意味:若者文化が起した揺さぶり)と名づける(ヴォーグ誌)破天荒な中に、優美さを持ち合わせた一挙手一動が独特なモード感溢れるファッションとともに全ての女性の憧れとなり、男たちを虜ににしたのだ
だけどその華かさの時は長く続かなかったウォーホルとカルチャーシーンを二分にする勢いのボブ・ディラン(ヘイデン・クリステンセン)との出逢いである。彼女はボブと恋仲になってしまうそしてそれは、気まぐれなポップ・アーティストとの関係に歪みが生じ、“ファクトリー・ガール”の運命は急激に転落していくことに。。。。。。
ボブ・ディラン(ここではビリーという役名) ヘイデン・クリステンセン
スター・ウォーズシリーズでは若き日のダース・ベーダー、アナキン・スカイウォーカー役を演じ、国際的映画スターとなる。最新作では「ジャンパー」で主演した。(ジャンパーは観ましたが、今ひとつでしたね)
イーディが惚れこむのも分かる。たちまち二人の熱愛は発覚。記事が大々的に掲載された。ファクトリー中に噂は広まる。ウォーホルは彼女だけが注目されることへの嫉妬か?ロック・スターへの嫉妬からか?態度が急変し、イーディとの間に歪みが生まれたわけだ。
ディランもウォーホルに対して批判的。何故スープ缶を描いただけの絵が大金で売れるのか?情熱的なディランは、イーディを取り巻いていた人々とは全く違う価値観を持っていたのだ。そんな彼にイーディの心が揺さぶられたのである。
アンディ・ウォーホル役(ガイ・ピアース)
彼の作品は初めてでした。「メメント」(2000年)クリストファー・ノーラン監督作で、記憶喪失に悩む主人公役という複雑な役を見事に演じた。他にも多くの作品に出演。多才な俳優の一人。
イーデイはウォーホルと彼を引き合わせる。ボブの登場は、ファクトリー全体に緊張を与える。イーディは二人の間で揺れ、泣き叫ぶ結局、ウォーホルにも愛想をつかれ、ディランにも去られてしまうことに・・・・。
その後のイーディは両親からの仕送りも止められ、資金は底をつく。生活が崩れ始める
ウォーホルとの関係は修復されないまま、イーディはますますドラッグにはまっていく。ついに自宅で火事を起してしまう。契約していたヴォーグ誌にも、ファクトリーにも見放される身も心もぼろぼろになった彼女に手を差し伸べたのは幼なじみのシドだった。ドラッグ漬けの生活から救おうとするシドが見せたのは一枚の写真(ニューヨークに来る前に撮影したもの)写真の中には夢と希望に溢れた画家志望の女の子、イーディがいた。イーディはニューヨークの街に飛び出しどこへともなく走り出した。
イーディ役(ジエナ・ミラー)
実は彼女の出演作も初めてです。何でも、ヒース・レジャーの「カサノバ」に出演していたそうで・・・・。プライベートではファッションアイコンとして常に注目を浴び、2007年には姉とともに共同ブランドを立ち上げ、デザイナーとしてもデビューしたそうです。まさに主人公イーディと重なるところもあるんですね。
ドラッグから立ち直ったイーディの爽やかな表情のインタビューが映画の途中に映し出され、良かったと思っていたら、病院の入退院を繰り返していたらしい。その後、体調を崩し死去。睡眠薬の過剰摂取が原因といわれている。享年28歳という若さであっけなくこの世を去ったイーディ。
60年代のファッションリーダーとして華々しくデビューしたのに、最期はあまりにも悲しすぎる。
アンディは、彼女の死後、教会で懺悔の告白。彼自身も後悔の念は大きいはずここまでなるとは思っていなかったのか?華やかな人生の裏側はあまりにも残酷すぎた
アンディ・ウォーホル 「未来には、誰もが15秒で有名になれる」
20世紀最も有名な人物となり、最も有名人に憧れた人物。歴史上、生きている間に最も商業的な成功と名声を得た芸術家。
彼女はいつも人生を追いかけていた、でも人生は思うように進んでくれない。
ーーーーーーダイアナ・ヴリーランド
イーデイの人生はある意味、女工哀史そのものだったと・・・・。アンディ・ウォーホルのファクトリーでさんざん働かされたあげく、使い捨てられたのだから。ただ貧しい農家の娘たちが工場でひどい目にあう「女工哀史」と大きく違うところは、イーディが貧しい家の出ではなかったことだ。イーデイの先祖はジョージ・ワシントンが独立宣言に署名するときに、同席した名士がいて、セジウィック家はアメリカ有数の名家だったのである。そのことが、ウォーホルにはいちばんの魅力だったのだ(青山南:翻訳家)
イーデイはそのことを、ウォーホルに利用されたんだね。でもはそんなこと関係なく、彼女自身が本当に輝いていたことには違いない。
イーディ・セジウィック 人物紹介です。