9月13日(土)の夕方、京都駅ビルシネマ・フランス映画祭へ行ってきました。9月30日より、RCSで公開される作品で先行上映となるフランス映画最新作「水の中のつぼみ」を鑑賞しました。期間中どの作品も1000円で鑑賞できます。そしてRCSの会員なら800円なので、さらにお徳です!
さて「水のつぼみ」、少女が少女に恋をするというものなのですが、何か危ない感じのありそうな映像シーンを想像しちゃう人もあったのではないでしょうか?一応PG-12ということになっていますし。男性客が意外に多かったので、きっと・・・・なんて。
私もちょっと危ないかな?という思いと何より映像美を期待していったのですが、それも的外れでした。シンクロをテーマに取り上げているし、綺麗なシーンを想像したんですよね。ところが、シンクロのシーンはこの作品の核となるものではなくて、何やとちょいと拍子ぬけです。
3人の少女がメインとなります。子供のようなマリー、女性の魅力を放つ美しい上級生 フロリアーヌ、そしてちょっとおデブで子供っぽいマリーの同級生アンヌ、この少女たちの夏の恋が描かれています。
マリー
舞台はシンクロナイズド・スイミングの競技会から始まる。マリーが恋したフロリアーヌはいつも男たちの目を惹き、チームメイトから敬遠されているシンクロクラブの華そしてマリーの同級生アンヌにとってはライバル
フロリアーヌ 確かに大人の雰囲気が漂う美人
アンヌ、男の子に見えるちょっと強面な少女です。
何故か無骨なアンヌがシンクロスイマーとは思えないのだが・・・・。シンクロチームのメンバーという設定がまた面白いそんなアンヌは初キスの相手にと狙う意中の彼はフロリアーヌに夢中なのである
シンクロのシーンは水中での動きが印象的です。綺麗というより、大変だなと思いますね。美しく見せるために皆一生懸命ってところですね。
STORY
高校1年生のマリーは親友の同級生のアンヌがシンクロナイズドスイミングの競技会に出ているので、応援にやって来た。なんだか小学生のような小さな子供たちに混じっているアンヌの姿は大きいくて太っているのでやたら目立つ。緊張するアンヌはマリーに向かって十字を切る!そんなアンヌをみて、周りの子供たちはひっそり笑みを浮かべているつたない演技のアンヌたちにうんざりしたマリーは観客席を去ろうとしたとき、上級生の華麗な演技が始まった思わず目をせて見入るマリー。ぴったりと息の合った演技の数々に立ち上がってを送る。ジュニアクラスの中でもひときわ華やかなひとりの少女に目を見張るチームのキャプテン、フロリアーヌだ。一方帰りにもたもた着替えるアンヌは、ふとした拍子に男子部員のフランソワに一糸纏わぬ姿を見られてしまう。この瞬間アンヌはフランソワに恋心を持つことに・・・・・。アンヌのリアクション、全裸状態の姿が妙に笑えてきた別にコメディじゃないんだけどね。強面タイプのアンヌの恋の芽生えこの落差が何ともいえないのだ
こうして同じ日、マリーとアンヌそれぞれの恋が始まるのだ
マリーはさっそくシンクロクラブへの入部を申し入れるが、受付はすでに終了していて、無下に断られてしまう
そんなマリーをアンヌがその夜のスイミング・クラブのパーティに誘う。もぐりこむというのだ・・・・。アンヌは踊りながら、フランソワを目で狙うマリーはフロリアーヌを追いかける「シンクロ綺麗だった。練習を見せて欲しい。」頼み込むも、冷たくかわされるだけ・・・・。何と!アンヌはフランソワとフロリアーヌのキスシーンを目撃会場を飛び出す。
その後、マリーはフロリアーヌを待ち伏せ何度も練習を見せて欲しい!何でもするから!と懇願する。「今は別に・・・・・」とつまらなそうに言いながらもマリーをプールサイドに招きいれた。初めて間近で見るシンクロの演技、水上では優雅な笑顔を見せるスイマーたち、水の中では足が激しく水を掻いている
息を切らしてシャワーを浴びるマリー。
更衣室では、男性関係が盛んだと皆から敬遠されるフロリアーヌ、バナナのまるかじりに難癖をつけられていた。
経験豊富だから平気なの、とバカにしたようにやりかえすフロリアーヌ。黙って見つめるマリー。そんなマリーの姿に目を留めたフロリアーヌは歩み寄って、自分のに来るように誘う。「頼みごとがあるの」
マリーは彼女のに行って初めて、外出の口実として利用されたことに気づく。フランソワとのデートに出かけるのをごまかすためだったのだ。
そんな彼女の行動に、胸が痛むのに、遠征の同行をさせてくれたり、優勝のメダルをくれたりする彼女に、どうしても言われたとおりに行動してしまうマリーだ。
マリーと疎遠状態になっているアンヌはそのことに腹を立てていたそんなアンヌはひとりでフランソワへの接近の機会を探っていた
ある日、またフランソワとのデートに付き合わされたマリーがついに「もう行かない」と怒って去ろうとすると、彼女は後を追ってきた。ふたりきの午後、フロリアーヌは誰にも言えない自分の秘密を打ち明ける。予想もしなかった告白に驚くマリー夜明けまで、語り合うふたり、いつのまにか手と手が重なり合っていた。
お古の水着をくれたり、親しげに水着の紐を直してくれたり、シャワー室で男の子と絡み合う彼女ーーーーそんな彼女の秘密知っているのは私だけ
押し寄せる様々な感情が溺れそうになってもがき苦しむマリーそんなマリーにフロリアーヌが切り出した驚くべき依頼とは???
少女に恋した少女の夏が残酷な結末に向けて一気に加速する
そういえば、ほとんど大人は出てこないな?と思っていたら、これは監督の意図らしい。大人を入れるとこの映画をある定まったジャンルに縛り付けてしまうからだと。感情移入するキャラクターを少女3人に限定した。要するに、思春期とは縛りのない世界。つまり大人が入れば大人目線になり、この3人の少女の行動は単に反抗的な形を取っているに過ぎないということなのだろう。そういうことになるとごく普通の作品としか見えないことになる。思春期の少女の心の内を鋭くかつこうなんだという風に描きたいということなのだと思った。
そして男性の不在・・・・・男子は出るものの、姿の登場はあまりなく、言葉も発しないという設定だ。ここでは男性はワケのわからない、異質な存在なのである。少女についての映画なので、男性目線で描かれた興味本位な幻想も避けようとした作品なのだ。
そうして観ると、この作品に映像美や変な期待感を持つことはおかしいのでしょうね?ありきたりな想像を持って観ると、えぇ~~という肩透かしをくうのかも。
フランス映画独特のどんよりした雰囲気が映画全体に匂う。少女が主体と思うと、もう少し明るい映画だと思うが、思春期の少女の心の中に潜む何か分からない闇の部分を見せられたように感じた。
監督/脚本 セリーヌ・シアマ(左) フロリアーヌ/アデル・へネル