銅版画制作の日々

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わが教え子、ヒトラー◆about Adolf Hitler

2008-11-10 | 映画:ミニシアター

 

あのヒトラーにこんなことが出来たのは彼だけかもしれない。

10月27日、京都シネマにて鑑賞。「善き人のためのソナタ」のウルリッヒ・ミューエが主演しています。そういえば、彼は2007年、7月22日に胃がんで死去。54歳の若さでした。多分この作品出演後、亡くなったのではないでしょうか。前作ではシリアスな役だったが、今回はユーモアたっぷりのユダヤ人を好演しています。取り上げている人物はあのナチスドイツの総統ヒトラー。独裁者といわれている彼は実は孤独な人間だったと・・・。その本当の姿を見たのは、ヒトラーに演説指導をしたユダヤ人の教授でした。

これは実話だそうです。そしてちょっとユーモラスでもあります。監督はユダヤ系の方で、ダニー・レヴィ。ヒトラーを痛烈におちょくりながら、彼の人間味溢れる姿として描いています。レヴィは、ロバルト・ベニーニの“ライフ・イズ・ビューティフル”に触発され、歴史的事実を踏まえた上で、そのことに囚われることなく、自由な発想でフィクション的な手法で大戦末期のヒトラーを描いています。

そのアイデアのヒントとなったのが、ポール・デヴリエンという人物の存在でした。ヒトラーの演説は巧みな演説とアジテーションで国民を煽り立てるのが特徴でした。実はこの裏には、そばで仕えたポール・デヴリンが彼に声の使い方、イントネーション、身振りなどを教えて演説に磨きをかけのです。そんな彼はオペラ歌手であり、ボイストレーナーでもあったからなんですね。驚くべき真実です!これって・・・・。

デヴリエン著書「わが教え子アドルフ・ヒトラー」でそうした事実を明らかにしているそうです。

まあそれはそれでとして。レヴィ監督はデヴリエン像をあえて、ユダヤ人俳優という設定にします。そのことで皮肉を利かせたわけです。ユーモアに裏打ちされた、知性にあふれたブラックコメディーに作りあげたのです。

レヴィ監督のコメントは下記の言葉です。(詳しくはインタビューを→こちらから)

コメディーという形式は誇張が可能だし、辛辣に矛盾を浮かびあがらせることが出来る。

今回登場する、ヒトラーはじめ、ゲッベルス、ヒムラー、そして主人公のユダヤ人である俳優も極めて戯画化されています。大胆ですが、繊細に演出、自らを笑いつつ、取り巻く世界を辛辣に浮き彫りするーーーウディ・アレンやロベルト・ベニーニと共通するユダヤ的コメディー・センスがレヴィ監督の世界にも横溢しています。(パンフレットより抜粋)

 

冒頭とラストで主人公アドルフの映像が映し出されるのが非常に印象的でした。これがどういうことでのシーンなのかも。またこれが哀しい結末になるとは・・・・。

 

物 語

1944年12月25日、ナチス・ドイツは劣勢に陥っていた。宣伝相ゲッベルス(シルヴェスター・グロート)は、来る1月1日にヒトラー(ヘルゲ・シュナイダー)の演説を大々的に行い、それをプロパガンダ映画に仕上げて起死回生を図ることを思いつく。しかし、肝心のヒトラーがすっかり自信を失い、とてもスピーチなどできる状態ではなかった。そこでゲッベルスは、わずか5日間でヒトラーを再生させるという大役を世界的俳優アドルフ・グリュンバウム教授(ウルリッヒ・ミューエ)に託すことに。そして、すぐさま強制収容所からグリュンバウム教授が移送されてくる。グリュンバウム教授は、戦前にはユダヤ人俳優として名を馳せており、かってヒトラーに発声法と呼吸法を指導した実績があり、総統の内にくすぶる執念を甦らせるには最適の人物と見込んだのだ。

ザクセンハウゼン強制収容所からベルリンの総統官邸へと移送されたグリュンバウムはゲッベルスと対面。自らが置かれた皮肉な状況に戸惑いを隠せなかった。だが、収容所に残された妻エルザ(アドリアーナ・アルタラス)と4人の子どもたちと一緒に暮らせることを条件に、困難な任務を引き受ける。愛する家族を救うにはそれ以外の選択肢はない。しかし同胞のユダヤ人のことを思えば、これは憎きヒトラーを殺す千載一遇の機会でもある。

 

初日から、グリュンバウムはヒトラーに運動着に着替えさせ、彼の体をほぐすことから始める。

ところがハプニングが起こってしまった!ボクシングのポーズでユダヤ人に対する侮辱的発言をしたヒトラーをグリュンバウムは思わずパンチでノックアウトにしてしまう。

マジックミラーの向こうでゲッベルスら幹部が監視していたが、意識を取り戻したヒトラーからは何もお咎めもなく、ほっと胸をなでおろすグリュンバウム。次にヒトラーをソファに寝かせて、心理セラピーを開始する。ヒトラーは抑圧された幼少期を思い出し、を流す。

グリュンバウムは隙を見ては凶器を探して殺害をしようとするが、トラウマに取り乱すヒトラーの哀れな姿を目のあたりにして実行を思いとどまるのだった。

 

ヒトラーの本当の姿は孤独なひとりの人間だった。想いを寄せる恋人?もいたようだが。

グリュンバウムの指導のおかげで、ヒトラーは回復の兆しを見せ始める。 グリュンバウムはこの重責に見合う新たな報酬としてゲッベルスにザクセンハウゼン収容所の同胞たちの解放を要求!その要求に激怒したゲッベルスはグリュンバウムと家族を収容所に連行させる。しかし彼を気にいったヒトラーは断固として教師の交代を受け入れず、ゲッベルスは渋々グリュンバウムを総統官邸に呼び戻すはめになった。ヒトラーの全幅の信頼を得たグリュンバウムはまるで催眠術師のように彼を自在に操り、演説の仕上げにかかる。

 

 

自慢の髭が~~~

 

  

演説台の下にはグリュンバウムが原稿を持って待機していた。

政治家にとって言葉は命、類希なスピーチの才能によって民衆を熱狂的させ、強大な権力者としてのし上がったヒトラーにとってはなおさらである。そんなヒトラーが第二次大戦末期には病に苦しみ、精神的に不安定だったことも歴史上の事実である。

かくしてヒトラーは見違えるように最盛期の威光を取り戻したが、演説当日、思わぬトラブルが発生した!メイクの女性が誤って自慢の髭を剃り落としてしまったのだ。ヒトラーは激しい怒りと動揺で声が出なくなってしまう。頼れる存在はグリュンバウムだけだった。グリュンバウムは演説台の下で原稿を読み上げ、ヒトラーが口パクで聴衆をアピールする段取りが急遽えられる。しかし本番、グリュンバウムは誰も予想しなかった驚くべき行動にに出る・・・・・・。

それはユダヤ人としての唯一の抵抗だったのかもしれない。しかしその痛々しいラストでのグリュンバウムの表情は皮肉にも笑みを浮かべていた。笑わしかないのかも。う~ん複雑な気持ちでラストシーンを観たわけです。

監督: ダニー・レヴィ
上映時間 95分
製作国 ドイツ

 

オフィシャル・サイト
http://www.meinfuehrer-derfilm.de/ (ドイツ語)

 

 


 

 

 

Comment (1)
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