子供たちは大人がつくった世界で生きている。
舞台はあのアフガニスタン。タリバンによって破壊されたバーミヤンの風景が印象的。凄いです!監督であるハナ・マフマルバフが弱冠19歳なのです。イラン、テヘラン生まれ。7歳のとき、父モフセン・マフマルバフ監督の映画「パンと植木鉢」に出演。その後小学校2年で学校教育に別れを告げ、父の設立したフィルムスクールで姉兄とともに映画の勉強始めたそうです。
彼女から、日本の皆さまへ
私は二つのグループのためにこの映画を作りました。
一つは子供たちのために。
一つは自分の子供時代を思い出し、そしてその時代はどのくらい
大切な時期だったかを実感している大人たちのために。
もしも子供時代に貧困や暴力にあえば、どのくらい将来に影響が
あるかということを理解している人のたちのために。
それはアフガンの子も、日本の子もおなじです。
物語の主人公は6歳の女の子。彼女はお母さんに留守番を頼まれ、小さな乳飲み子の妹の子守りもしている。そんな彼女があることがきっかけで小さな冒険に出ることになる。
冒険で遭遇したのは、戦争がもたらした無慈悲さ、それは同時に大人が子供に与えた重大な影響だ。
女の子の名前はバクタイ。冒険のきっかけは隣に住む男の子アッバスが読み書きの練習をしていたことからだ。学校で習った面白いお話を読むの聞いて、自分も学校に行きたいと思う。
読み書きが習いたい!という気持ちは大きく膨らむ。アッバスから「鉛筆とノートがなくては学校に行けない」といわれた彼女は町に出かけた母を探しに行くが、見つからない。
雑貨店を覗くと、店のお兄さんは鉛筆とノートで20ルピーだと教えてくれた。家に戻ると、アッバスは鶏の卵でノートを買えばいいとアドバイス。早速4個の卵持って店に行くが、お兄さんは卵は売るほどあると言う。町へ行って卵を売ってお金に換えるように言う。
ここからは、バクタイの奮闘記が始まる。そんなにうまくはいかない。そう大人は誰も卵を買ってくれないのだ。歩きまわっているうちに2個の卵が割れてしまう。それでもへこたれず四苦八苦(汗)ようやく10ルピーだけ手にする。
10ルピーだけでは、ノートと鉛筆は買えない。結局バクタイはノートだけ買うことに。鉛筆は母の口紅を代用。
心弾ませて、アッバスと一緒に学校へ向かう。
ところが、行ってみると、そこは男の子だけの学校で、女の子は勉強させてもらえない。女の子の学校は川の向こう岸だという。バクタイは何度も教師に頼むが、追い払われてしまう。
仕方なくバクタイは、女の子の学校に向かう。
しかし、その途中、バーミヤンの破壊された仏像の前で少年たちに取り囲まれた。
少年たちは、バクタイの大事なノートを奪い、破り取ったページで紙飛行機を折って飛ばす。少年たちは「女は勉強しちゃだめだ」と“戦争ごっこ”でバクタイを怖がらせ、岩山の洞窟に連れて行く。そこには、同じように捕らえられた女の子たちがいた。
武装組織タリバンだと息巻く少年たち、人質に捕らえられたバクタイに、紙袋で作った覆面を被せる。他の女の子たちも同じように被せられていた。
まるでテレビで見る光景と同じだ。少年たちの“戦争ごっこ”は単なるごっこ遊びとは思えないくらい、異様な雰囲気、そして彼の顔つきも凄いのだ。まさに本当の戦争のような気がした。バクタイたちをTERO犯に仕立て上げる。石なげの刑だと言って全員が石を投げようとするシーンは身震いする。殺すことに罪悪感もないのでは?なんて思えた。
人質を取った少年たちは敵を待ち構える。
まさに本当のタリバンのような気持ちのような?子供のような無垢な表情ではなく、血走った恐ろしいものだった。戦争がもたらした残虐さを子供にまで引き継ぐなんて・・・・・。何ということなんだ。
遊びなんかじゃないよ!
戦争は全てを破壊している。その影響は大人だけじゃなく、子供にまで・・・・・。
アッバスは泥の穴に落とされ、顔を押しこまれ泥まみれ。
ようやくバクタイは女子学校に辿りついた。席がいっぱいで座れない。運よくチョークを取りに教室を離れた子の席に座ってみた。その子が戻ってくれば、また押し合いへし合い、ノートをくれたら半分こしてあげると言われる。
やがてバクタイの口紅でお化粧ごっこが始まる。教室中の女の子のホッぺが真っ赤になったころ、ようやく先生が気づいた。またバクタイは教室を追い出される。
帰り道、バクタイは捜しに来たアッバスに出会えた。二人で帰ろうとすると、またいじめっ子の少年たちが現れ、TERO犯だから殺すと追いかけてきた。
アッバスは少年たちの木の銃に撃たれ死んだふりをする。
バクタイは必死に逃げた!アッバスが叫ぶ。
バクタイ、死んだふりをするんだ!
バクタイ、自由になりたいなら死ぬんだ!
少年たちに取り囲まれて、バクタイは、あの仏像のように倒れた。
死ぬことによって解放される・・・・。その選択でしかまさに真の解放はないのか?
抵抗することが出来ない者への攻撃なんて、卑劣だ。でもこれが現実なのだ。
バクタイが「戦争ごっこなんて嫌い!」と涙して訴えるあの表情が何とも言えなかった。
戦争のない平和を切に願う!子供たちに平和を!子供たちに教育を!
出演者とスタッフ
キャスト
バクタイ ニクバクト・ノルーズ
アッバス アッバス・アリジョメ
ハナ・マフマルバフ監督のインタビューはこちらです。
父であるイランの名匠モフセン・マフマルバフ監督の下で幼い頃より映画を学び、13歳で早くも長編デビューを果たしたハナ・マフマルバフ監督が、弱冠19歳で撮り上げた自身初の劇映画となる長編第2作。テロや戦争が絶えないアフガニスタンを舞台に、幼い子供たちの日常を通して、彼らの目の前で日夜繰り返される暴力が彼らに及ぼしている影響を寓話的かつ鮮烈に描き出す。(allcinemaより抜粋)
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